人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

エルガー:オラトリオ「ゲロンティアスの夢」を聴く~ジョナサン・ノット✕マクシミリアン・シュミット✕サーシャ・クック✕クリストファー・モルトマン✕東響コーラス✕東京交響楽団

2018年07月15日 07時23分17秒 | 日記

15日(日)。わが家に来てから今日で1382日目を迎え、就任後初めて英国を訪問したトランプ米大統領は13日、ロンドン近郊ウィンザー城でエリザベス女王に面会したが、この間、ロンドン中心部では約10万人が集まる巨大デモがあった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       大英帝国よりアメリカ帝国の方が強いんだとか自慢したんじゃねーの? 酒が!

 

         

 

昨夕、サントリーホールで東京交響楽団第662回定期演奏会を聴きました プログラムはエルガーのオラトリオ「ゲロンティアスの夢」です 出演は、テノール=マクシミリアン・シュミット、メゾ・ソプラノ=サーシャ・クック、バリトン=クリストファー・モルトマン、合唱=東響コーラス、指揮=ジョナサン・ノットです

 

     

 

まず最初に東響コーラスのメンバー約140人がP席に入場し配置に着きます 向かって左が女声、右が男声ですが、女声の方が多いようです 次にオケのメンバーが配置に着きますが、弦は左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置=ノット・シフトをとります。コンマスはグレブ・二キティンです

ゲロンティアスを歌うマクシミリアン・シュミットと、司祭・苦悩の天使を歌うクリストファー・モルトマンが、ジョナサン・ノットとともに登場します シュミットはドイツ出身のテノールですが、バイエルン国立歌劇場、ミュンヘンオペラなどで活躍しています 一方、モルトマンはイギリス出身のバリトンですが、「ドン・ジョバン二」のタイトルロールなどで世界中のオペラ劇場で活躍しています

この曲はエドワード・エルガー(1857‐1934)が、1865年に出版されたカトリックの枢機卿ジョン・ヘンリー・ニューマンの長編詩「ゲロンティアスの夢」を台本に選び1900年に作曲、同年10月3日にハンス・リヒターの指揮で初演されました ニューマンの長編詩は、彼の友人の死を契機に書かれたものですが、聖書からテクストをとっているわけではなく、カトリックの信仰を基礎にニューマン独自の表現でまとめた”人間の死”に関する詩です 死後、肉体を離れた魂が、案内役の天使に導かれながら煉獄へ、さらには最後の審判へと入っていくさまが描かれています 作品は第1部〈約40分)と第2部(約60分)から構成されています。イギリスではヘンデル「メサイア」、メンデルスゾーン「エリア」と並び、3大オラトリオの一つと呼ばれているそうです

ノットのタクトでオーケストラにより第1部の前奏曲が演奏されます 友人や司祭に見守られ死の床にあるゲロンティアスの様子がワーグナー風の音楽で奏でられます そして、ゲロンティアス役のマクシミリアン・シュミットが「イエス様、マリア様、私はもうすぐ死にます。息が途切れ、胸が苦しく・・・イエス様、あわれんでください」と懇願し、友人たち(合唱)が「主よ、憐れんでください。聖母マリアよ、彼のために祈ってください」と祈ります すると、司祭役のクリストファー・モルトマンが「旅たちなさい、キリスト者の魂よ、この世から!さあ、旅立ちなさい、キリスト者の魂よ」と力強いバリトンで訴えます。この瞬間、会場の空気がピリッと引き締まります このバリトンは凄い 存在感抜群です。続けて友人たち(合唱)が司祭の言葉を反復し、ゲロンティアスを励まして第1部を閉じます

 

     

 

20分の休憩後、再びP席に東響コーラスが入場し、オケのメンバーも配置に着きます 第1部のソリスト2人に 天使役のサーシャ・クックが加わります 彼女はアメリカ出身のメゾソプラノですが、イギリスを中心に世界の歌劇場で活躍しています

第2部は死後の世界です。肉体を離れたゲロンティアスの魂は、案内役の天使に導かれ 悪魔による堕落へのいざないから守られながら最後の審判へと向かいます サーシャ・クックの深みのあるメゾソプラノを聴きながら、なぜエルガーは天使にソプラノではなくメゾソプラノを指定したのだろうか、と考えました 「天使」というと背中に羽の生えた童顔の天使を思い浮かべがちですが、エルガーの想定した天使は、むしろ包容力のある母性を感じさせる「聖母」に近い存在ではないか、と思いました それは、天使の歌う歌詞に「わが子よ、あなたは自分が何を問うているのか分かっていません。裁きの主のお姿は、あなたを喜ばせると同時に、あなたを鋭く貫き通すのです」とあるように、天使はゲロンティアスを「わが子」と呼んでいるからです 第2部は、天使の「ここでの試練の夜はすみやかに過ぎ去り、明日はわたしがあなたを迎えに来ます。さようなら」という別れの言葉で締めくくられますが、この言葉は深みのある落ち着いたメゾソプラノこそ相応しいと思いました。それはサーシャ・クックという歌手がそう思わせたと言っても良いと思います

主人公のゲロンティアスを歌ったマクシミリアン・シュミットは魅力のあるテノールでした 司祭と苦悩の天使を歌ったクリストファー・モルトマンは深みのあるバリトンで存在感抜群でした

今回、特筆すべきは東響コーラスの力強くもニュアンスに富んだ混声合唱です

日本でこの曲が演奏されるのは今回が6度目だそうですが、エルガーの故郷ウースター大聖堂聖歌隊出身というジョナサン・ノットにとって今回の公演は感慨深いものがあるでしょう その意味では、東京交響楽団はコンマスのグレブ・二キティンを中心に ノットの期待に総力を挙げて応えていたと言うべきでしょう

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