18日(木)。14日、15日に聴いた東京交響楽団によるまったく同じ演奏家・同じプログラムのコンサートの模様を翌15日、16日に書きましたが、アクセス数(閲覧した人の数)が両日とも344で同じでしたもっとも何ページ見たかというページビューは15日が1069、16日が1176で異なりましたが、こんな偶然もあるものか、と少しました。
閑話休題
昨夕、上野の東京藝術大学奏楽堂で東京藝大管打楽器シリーズ2013演奏会を聴きました この演奏会にはゲストとしてベルリン・フィルの首席クラリネット奏者ヴェンツェル・フックスを迎えています。プログラムは①ブラームス「クラリネット五重奏曲ロ短調」、②ベートーヴェン「七重奏曲変ホ長調」です
フックスはウィーン・フォルクス・オーパーとORF交響楽団の首席奏者を経て、1993年よりベルリン・フィルの首席クラリネット奏者を務めています
全自由席のため早めに会場に向かいました 雨の中を列に並び、幸い1階15列13番、センターブロック左通路側席を確保できました 会場は現役のベルリン・フィル首席奏者の出演とあってほぼ満席状態です
1曲目のブラームス「クラリネット五重奏曲ロ短調」は、作曲者が58歳の時に出会ったクラリネットの名手ミュールフェルトのために作曲した名曲です ブラームスの意図をくみ取っての演奏が絶賛されたといいますから、どんな演奏だったのでしょうか?
演奏は向かって左から第1ヴァイオリン=松原勝也、第2ヴァイオリン=對馬哲男、ヴィオラ=市坪俊彦、チェロ=山崎伸子、クラリネット=フックスという態勢です
第1楽章「アレグロ」が、弦楽器による哀愁をさそう序奏によって始まり、クラリネットに引き継がれます何とも言えない晩年のブラームスの諦観の境地というか、人生を達観したようなメロディーが切々と続きます 一言でいえば「たそがれ」の音楽です。それは第2楽章以下も同様で、フックスは柔らかで深い音楽を奏でていきます さすが!と思うのは弱音部でも音が良く通り、音楽が明確に伝わってくることです ブラームスのほの暗く控えめな人生を映し出しているかのような演奏です
一方、2曲目のベートーヴェン「七重奏曲変ホ長調」は、作曲者が29歳の時に作曲した明るく溌剌とした作品です 1曲目のブラームスの半分の年齢の時に作曲した計算になります
演奏は向かって左からヴァイオリン=松原勝也、ヴィオラ=市坪俊彦、チェロ=山崎伸子、センターにコントラバス=永島義男、右にホルン=日高剛、ファゴット=岡崎耕治、クラリネット=フックスという態勢を採ります
全員が揃ったところで、いきなりフックスが立ち上がり、何やら忘れ物をしたらしく舞台袖に引っ込んでいきました 会場のあちこちで「いったい何を忘れたんだろう?」と囁き声が聞こえます。しばらくして、拍手に迎えられて何も持たずにフックスが再登場して着席しました。忘れ物をポケットに入れて出てきたのか、忘れたと思ったけれど元々ポケットに入っていたのに気が付いたのか、よくわかりません 隣に座っているファゴット奏者の岡崎氏が忘れ物をするのなら分かるのですが・・・・fagottですから・・・・
短いチューニングの後、第1楽章「アダージョ~アレグロ・コン・ブリオ」が、ゆったりした序奏から始まります 次いで躍動感溢れるアレグロ・コン・ブリオのメロディーがヴァイオリンで演奏されます。それがクラリネットに引き継がれていきます ここまでの一連の音楽はたまらないですね ベートーヴェンってなんて素晴らしいんだろうと思います。もっともこの曲は初演当初から人気があったようです
第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット」はピアノ・ソナタ第20番の第2楽章から転用したメロディーです。軽快な音楽が続きます
第5楽章「スケルツォ」はホルンの勇壮なメロディーで開始されます。ここでは、弦楽器と木管楽器、とくに第1ヴァイオリンとクラリネットの掛け合いが何とも言えず素晴らしく、思わず身を乗り出して聴きそうになります
そして最後の第6楽章では、冒頭重々しい音楽が流れますが、第1楽章と同じように、一転して軽やかなプレストに突入します この部分もたまらない魅力です。若き日のベートーヴェンの金字塔と言えるでしょう
ブラームスを演奏した對馬哲男が加わって、全員でシューベルトの「八重奏曲」の「スケルツォ」をアンコールに演奏しました これほど素晴らしいプログラム・演奏で2,000円は安いです。このブログでは、これからも、こういう超コスト・パフォーマンスのコンサート情報を事前にお伝えしていきます