人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

凄い!ダムラウの「ルチア」~メトロポリタン・オペラ日本公演から

2011年06月19日 17時35分01秒 | 日記
19日(日).午後,東京文化会館でメトロポリタン・オペラ=ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」を観ました.出演者はルチア=ディアナ・ダムラウ(ソプラノ),ルチアの恋人エドガルド=べチャワ(テノール),ルチアの兄エンリーコ=ルチッチ(バリトン),牧師ライモンド=アブドラザコフ(バス)ほか.指揮はジャナンドレア・ノセダ.演出=ジマーマン.座席は前方真ん中といっていい1階4列10番.世界的なオペラをこれほど舞台に近い席で聴いたのは初めてのことです.歌手陣の顔の表情がよく見えます

来日公演のうちプッチーニ「ラ・ボエーム」とベルディ「ドン・カルロ」が東日本大震災の影響で出演者変更が相次いだ中,この「ルチア」は予定通りのキャスト.われわれ日本人にとっては嬉しい限りです

ポーランド生まれのべチャワは「ラ・ボエーム」でロドルフォを歌っていたので,その声の素晴らしさは認識していましたが,このルチアのエドガルド役でもその実力を如何なく発揮していました.この人は無理なく余裕で歌っているという印象があります

今回のメインはドイツ出身ダムラウの歌う「ルチア」です.彼女はMETオペラビューイングのロッシーニ「オリー伯爵」でアデル伯爵夫人を歌っていたので,その美しいソプラノは知っていました.彼女は最近お子さんが生まれたばかりだと思いますが,今回の来日公演には予定通り参加しました.根性があります

第1幕第1場でハープの前奏に続きルチアが歌うアリア「あたりは沈黙に閉ざされ」はしみじみと心に沁みます.同じ第1場でエドガルドと共に愛を歌う「そよ風に乗って届くでしょう」は情熱的です.

何といっても,このオペラの白眉は第3幕第2場.ルチアが新郎アルトゥーロを刺し殺し,発狂して歌う”狂乱の場”です.重々しいオーケストラの伴奏に乗ってルチアが登場し「あの方の優しい声が」と恋人エドガルドとの幻想を歌い続けます.このシーンはコロラトゥーラの技巧とともに迫真の演技力が求められる過酷な場面です.演技をしながら20分以上も歌い続けなければなりません

ダムラウの歌唱力,演技力を何と表現したらいいのでしょうか ルチアが彼女に乗り移ったかのような狂気に満ちた迫真の演技,素晴らしい歌唱です.観客はただシーンとして彼女の姿を追い,その声に耳を傾けるばかりです.”狂乱の場”が終わって照明が落ちた後もしばらくが鳴り止みませんでした.すごいとしか言いようがありません

今回のメトロポリタン・オペラの来日公演を3つとも観に行ったわけですが,最も印象に残ったのは何と言っても今日の「ルチア」です 最後に一発逆転でした

 
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