明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2066)福島の今、復興の今、放射線防護の今(22日、京都市で福島訪問報告を行います。黒い雨訴訟高裁判決に関する特別報告も加えます!)

2021年07月19日 14時30分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210719 14:30)

【署名協力のお願い】
黒い雨訴訟控訴審勝利を受けて、広島市、広島県、国に上告断念を求める署名が立ちあがっています。ぜひご協力ください。
http://chng.it/fPyYRCQr


福島イノベーションコースト構想にご注目を

福島の今、復興の今、放射線防護の今、誰もが気になるところをがっつりお話しします。黒い雨訴訟に関する特別報告も加えます。
7月22日午前10時から、京都市のひとまち交流館第4会議室にて。主催は「ウチら困ってんねん@京都」です。
zoomも併設します。会場カンパは資料代500円。zoomはあらかじめアドレスを公開するので投げ銭をお願いします。

zoomアドレス https://us02web.zoom.us/j/82898339621 パスコード 772394
投げ銭先 ゆうちょ銀行 なまえ ウチラコマッテンネンアットマークキョウト 記号14440 番号14440-50025191

Facebookイベントページもご紹介します。
https://fb.me/e/1z5FIjj3E

お話したいのは、守田が5月10日から13日まで福島県を訪れて得てきたこと。被爆二世の森川聖詩さんと一緒の旅でした。
とくに伝えたいのは「福島イノベーションコースト構想」について。福島浜通りを「核との共存の町」にしていく動きです。中心にあるのは、福島原発の「廃炉作業」を軸にさまざまな核関連産業を誘致し「育成」することです。

驚いたことに、アメリカのハンフォードとの連携が進められつつあります。ワシントン州にある「核の町」で、長崎を壊滅させた原爆のプルトニウムが作られたところ。全米にある核弾頭のプルトニウムの3分の2も作らました。
そのハンフォードは核物質ですごく汚染されている。しかし中心都市のリッチランドなどで放射線防護ではなく福利厚生にお金がつぎ込まれ、核産業を誇りとする町となっている。そんな「核の町」に福島浜通りを変貌させようというのです。


実は『放射線副読本』とがっつりつながっている

この動きの一つとして、双葉町に「東日本大震災・原子力災害伝承館」が建てられ、高村昇氏が館長に就任しています。文科省発行の『放射線副読本』の執筆の中心を担い、復興庁から出された『放射線のホント』の作成にも関わっている。
高村氏はあの山下俊一氏の右腕とも言われる人物です。原発事故後に福島に入り込み、安全論を振りまき、「放射能を怖がると子どもに悪い影響を与える」などと、福島の人々を騙し、脅したあの山下俊一氏です。(裁判で認めています)

この点で『放射線副読本』『放射線のホント』にちりばめられた被曝の危険性を無視するあり方が、福島イノベーションコースト構想と一体化していることが分かりますが、高村昇氏はさらに「放射線災害復興学」を立ち上げています。
次の核災害時に、放射能の中で「前向きに」生きていく道を探るというのです。実はこうした「核との共存」を最初に言い出したのは、長崎原爆を「神が落としたもの」と語った永井隆博士でした。山下俊一氏はその永井博士の信奉者です。

さらにです。その高村昇氏とともに『放射線のホント』の構成に関わったのが、東大名誉教授の早野龍五氏。福島医大の宮崎真氏と福島県伊達市の被曝線量を過小評価した論文を作成して英学術誌に投稿し、大問題を引き起こしました。
伊達市が住民に配ったガラスバッジデータを市民に合意を得ずに使ったり、虚偽データを掲載したり、被曝線量を大幅に過小評価するなど、ひどすぎて論文撤回に追い込まれました。不正を暴いたのは伊達市のみなさんでした。


被曝影響の過小評価がものすごい勢いで強調されだしているわけ

これらを通じ、「福島の今」を形作りつつあるものが、国際的な原子力推進派の動きであることが見えてきました。被曝を限りなく過小評価し、核との「共存」を人々に強いるのです。
早野龍五氏は、放射線影響研究所の評議員も兼ねています。アメリカが原爆で広島・長崎を壊滅させたあとに作ったABCC(原爆傷害調査委員会)の後継組織です。

そこが最近「被曝二世のゲノム調査」をしたいと言い出しました。「ゲノムまで見たけれど被曝影響などなかった」と言いたいのでは?と考えていたらその通りの回答がチェルノブイリ周辺で出されました。
実は放射線被曝の遺伝的影響は、アメリカが原爆による大量虐殺を行った直後から、最も注視してきたことがらです。一番初めに原爆使用を批判したのが遺伝学者たちであり、遺伝的影響への不安が大きく広がったからです。

そしていま、この遺伝的影響の否定の動きがにわかに強まりだしています。なぜか?推進派が激しく何かを否定するときはその事実が強まっているとき。つまり被曝影響、遺伝的影響が顕在化しているからに違いありません。
実際には遺伝的影響は確かにあります。森川聖詩さんが著書『核なき未来へ~被爆二世からのメッセージ』で、自らの体験を赤裸々に書いてくださり、これを受けた京都「被爆二世三世の会」のアンケートでも同様の答えが多数集まっています。
これらをもっと明確につかむことが、核被害者を救済し、新たな被曝を避ける大きな力になる。だからこそ原子力推進派は、被曝影響隠しを強化し、これと一体のものとしてイノベーションコースト構想を進めているのです。


黒い雨訴訟控訴審での画期的勝利の意味

さて今回の報告会では、特別報告として、7月14日に勝ち取られた黒い雨訴訟控訴審の画期的勝利の意義についての特別報告も行います。
黒い雨裁判は原爆被害の中で、とくに内部被曝被害が争点となって闘われてきたもの。原告の頑張りによって、一審で黒い雨の降った地域が政府が認めてきたそれよりもずっと大きいことが認められ、原告たちの被爆被害が認められました。

その際、被爆者に対する「被爆者援護法」のもとでの「健康管理手当」で決められた11の障害を伴う疾病のどれかに罹っていることが、被爆者健康手帳交付の要件とされました。
これに対し、広島市、広島県、国が控訴し、原告の身体に起こっている11の障害を伴う疾病のいずれかと、放射線被曝の因果関係の科学的証明がなされていないから、一審を破棄せよと主張したのです。

広島高裁は国のこれを退けました。そもそも被爆者救済を目的にした「被爆者援護法」は、原爆による影響との因果関係など求めていないからです。被爆した事実だけで救済の対象としているのです。
さらに高裁はこの精神にのっとり、一審が「11の障害を伴う疾病」の発症という要件を求めることも「失当」であるとして退けました。病に罹っている、罹ってないに関わらず、被爆者健康手帳の交付を命じたのです。

これはあらゆる放射線被曝の被害者を救済する上で、大変大きな意味を持ちますし、まさに「福島イノベーションコースト構想」などと真逆の動きだと言えます。しかし細かい点を理解してないと分かりにくい面もあります。
それだけに22日は、この判決の意義をきちんとおさえるべく、できるだけ分かりやすくこの意義を解き明かす特別報告を加えます。

福島を「核との共存の町」にすることなど許さず、核被害者への医療・福祉などの「保障」、被害を与えたことへの「補償」、そしてもう二度と核被害を与えない「保証」の獲得を目指していきましょう。22日、ご参加下さい!

#福島の今 #復興の今 #放射線防護の今 #福島イノベーションコースト構想 #放射線副読本 #放射線のホント #山下俊一 #高村昇 #早野龍五 #黒い雨訴訟

*****

原発や放射線被曝の危険性の暴露など、取材・執筆活動のためのカンパを訴えます。以下からお願いします。
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Paypalの場合:https://www.paypal.me/toshikyoto/500(金額は自由に設定できます)

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明日に向けて(2065)国と広島県・広島市は上告せずにただちに被爆者健康手帳を交付せよ!動画ご覧になり署名にご協力を!(黒い雨訴訟高裁判決の意義ー3)

2021年07月18日 20時30分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210718 20:30)

原告団のこの声に耳を傾けてください!

7月14日に高裁で画期的な勝訴判決が出された黒い雨裁判、広島市と広島県、国が上告をするのかのかどうかが焦点になっています。
上告期限は7月28日。ただち上告断念を求める声を高める必要があります。すでに原告団が7月15日に広島市と広島県に要請行動を行い、16日に上京して国にも上告断念を求めています。

なんとしてもこの声に応えましょう。そのために14日の判決後の報告集会のエンディングの動画をご紹介します。
原告の方たちが会場の前に出て勢ぞろいし、原告団事務局次長の高東征二さん(80)の声明のあとにみんなで「がんばろう」をされました。弁護団や矢ヶ崎克馬さんも一緒です。ぜひご覧下さい。

原告団のアピールと”頑張ろう”



この一年はとても長かった(原告団アピール文字起こし)

この一年はとても長かった。
一審に続き、控訴審でも、黒い雨被爆者を被爆者援護法の「被爆者」と認める判決が出されました。
広島市、広島県はこの判決を受け入れ、上告せずに、私たち原告にただちに被爆者健康手帳を交付してください。
そして国も判決を受け入れて、これまでの被爆者行政のあり方を根本的に見直し、すべての黒い雨被爆者を「被爆者」として救済してください。
子どもや孫のために、どうしても生きて、生きて内部被曝を認めさせ、次の世代に命かけて闘ったと、胸を張って言おうではありませんか。

最後に「頑張ろう」をやりましょう。
長生きして黒い雨を見届けるぞ。
頑張ろう。
頑張ろう。
頑張ろう。


原告団が会場の前に出て弁護団と共に「頑張ろう」と声を上げた 守田撮影(2枚の写真を合成)


上告の期限は7月28日。原告団に応え「上告断念するな」の声の集中を。署名と拡散にご協力を!

原告の方たちは高齢です。もともとの原告88名のうちすでに18名が亡くなられています。
(死亡した4名が裁判を取り下げたため現在原告は84名でうち14名が亡くなられ、家族が裁判を継承している。一審判決から高裁判決の間にも2名が亡くなられたそうです。)

原告の平均年齢は84歳弱。もう一刻の猶予もありません。それに被爆から76年も待たせてきたのだから一刻の間もおくことなく被爆者健康手帳を交付すべきです。
このことを求める署名運動が起ちあがりました!ぜひご協力ください。

広島市長・広島県知事及び厚生労働大臣は、 広島高裁の「黒い雨」判決を受け入れ、上告しないでください
http://chng.it/fPyYRCQr

#黒い雨訴訟控訴審勝利 #黒い雨 #内部被曝 #被爆者健康手帳 #黒い雨訴訟原告団 #高東征二 #広島原爆 #矢ヶ崎克馬

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明日に向けて(2064)黒い雨訴訟控訴審判決は一審を越えた!ただ被爆の事実が確認されれば救済されるべきことを明記(黒い雨訴訟高裁判決の意義―2)

2021年07月18日 00時30分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210718 00:30)

今宵は黒い雨訴訟に関する連載記事をさらに投稿させていただきます!


黒い雨訴訟高裁判決公判に向けて更新する原告団 矢ヶ崎克馬さんの姿もあります。 守田撮影

広島高裁判決で進んだ点

黒い雨訴訟の高裁判決が画期的だったのは、判決内容が一審を超えたことです。というのは一審は、黒い雨が降った範囲を、従来の認定より大幅に広げた点でとても優れていましたが、しかし限界も残していたのでした。
というのは今回も原告に交付が命じられた被爆者健康手帳は、もともと被爆影響を受けたと考えられる人々であれば、病を発症していようとしてなかろうと交付されるものなのに、一審では病の発症が交付の要件とされたからです。
この点の理解を深めるためには、歴史的経緯への一定の理解が必要です。このためまずは国が、被爆者健康手帳の交付対象である「被爆者」をどう定義しているかから見ておきましょう。

被爆者とは(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku09/01.html

法律の条文も確認しましょう。(法令リード)
大事なのは「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(被爆者援護法)第1条です。
https://hourei.net/law/406AC0000000117

実際には、黒い雨にあたるなど、被曝影響を受けた人々はもっとたくさんいることが明白なので、この定義で「被爆者」全体がカバーされているとは言えません。その上で、厚労省のHPで次のように続けて論じられていることをおさえておきましょう。
「被爆者が病気やけがなどで医者にかかりたいとき、この手帳を健康保険の被保険者証とともに、都道府県知事が指定した医療機関等にもっていけば、無料で診察、治療、投薬、入院等がうけられます。」

つまり「被爆者」には無料で医療を受けられる権利があるわけですが、これに対し「健康管理手当」とは、被爆者健康手帳を持っている方が11疾病のどれかに罹っていたら月額33,670円(2011年4月現在)の手当てを受けられる制度です。
ところが1974年7月22日、「原爆医療法」などの改訂を示した「402号通達」が出される中で、国が黒い雨が降ったと認めていた地域などを「健康診断特例地域」と規定したのでした。
そしてこの地域の人々が、この健康診断で11種類の疾病の一つが見つかれば「被爆者健康手帳」を受け取れるとされたのですが、一審判決がこの「402号通達」を拠り所としたことを、高裁判決は「失当」と退けたのです。


病になる可能性があるからこそ救済が必要

つまり病の発症は被爆者健康手帳交付の要件ではないと指摘したのです。ここが極めて画期的ですが、本来、これでそ真っ当であることも強調したいです。
被爆し、黒い雨の影響を受けるなどすれば、何らかの病を発症する可能性があるのだから、健康維持のためにいつでも無料で診察、治療、投薬、入院等が受けられて当たり前なのです。

これは国が「発症した症状と被爆の因果関係を科学的に証明せよ」と主張したことを土台から覆すものでもあります。
現に発症した病との因果関係どころか、被爆をしたことが確認できれば、それでもう救済しなければならないのです。
そもそも疾病が確認されるまで保障されないなんておかしい。多くの被爆者がリスクがあるからこそ、健康を維持しようと努力しているのです。また被爆影響のあらわれは何も11種類の疾病に限らず、もっと多様にあります。

この点はすべての放射線被曝被害を訴える際の大きな灯ともなります。
被害が出ないと訴えられないなんておかしい。さらにそもそも被害の科学的証明など、政府はなかなか認めようとしません。だからそれが争点である限り、被曝被害者の救済はどんどん延ばされる。
そうではないのです。必要なのはただ被曝がありえた事実を示すことだけなのです。この被害者にとってとても大事な観点が高裁判決で強調されました。だからこそみんなで上告を断念させ、この判決を確定させる必要があります。


判決を受けて、国や広島県、市は上告を断念し、ただちに被爆者健康手帳を交付すべきだと訴える高野正明原告団長 守田撮影

続く

#黒い雨訴訟 #広島高裁判決 #控訴審勝利 #健康管理手当 #健康診断特別地域 #11種類の障害を伴う疾病 #被爆者 #広島原爆 #402号通達

*****

原発や放射線被曝の危険性の暴露など、取材・執筆活動のためのカンパを訴えます。
どうか支えてください。よろしくお願いします。

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Paypalからもカンパができます。自由に金額設定できます。
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明日に向けて(2063)黒い雨訴訟控訴審でも勝利!「科学的証明」を求める国の見解が退けられた(連載 黒い雨訴訟高裁判決の意義―1)

2021年07月17日 21時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210717 21:00)

黒い雨訴訟高裁判決を取材するために広島市に行って、素晴らしい場を共有してきました。
お伝えしたいことがたくさんあります。記事を連投します!

黒い雨訴訟、控訴審も勝利!

7月14日、広島高裁において黒い雨訴訟控訴審判決が言い渡されました。
国および広島県、広島市による一審判決の取り消しを求める控訴を棄却。原告84人(うち14人はすでに死去、家族が訴訟を引き継いでいる)の被爆を再び認め、被爆者健康手帳の交付を命じるものでした。
再び黒い雨が降った地域が、従来の国の認識よりも大幅に広かったこと、そこにいた人々が内部被曝の被害を受けたことが認められました。


15時の判決言い渡しの直後に「全面勝訴」の旗が。真ん中は喜んで手を上げられた原告団事務局次長の高東征二さん。広島高裁前にて 守田撮影

しかも高裁判決は、一審より大きく前進したものでした。というのは一審で黒い雨降雨地域にいた人が、「健康管理手当」の支給対象となる「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者と認める要件としていた点を退けたのです。
黒い雨が降った地域にいた人々は、ただそれだけで原爆の放射能の影響を受ける事情の下にあったのだから、被爆者健康手帳が出されるべきだとしたのです。画期的です。

この勝利は原告の方たちの積年の頑張りを中心に、弁護団や支援者のみなさんの奮闘によって勝ち取られたものです。素晴らしい。心から拍手を送ります。
またこの勝利は、すべての放射線被曝被害者に灯をもたらすものでもあります。この点も素晴らしい。心からの感謝を届けたいです。




報告集会の場で「頑張って長生きして黒い雨を見届けるぞ」とこぶしをあげられた原告団・弁護団のみなさん。守田撮影

以下、少々、ややこしくもある高裁判決の画期的内容について、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。そのために幾つかの言葉の意味するものもご紹介します。


健康被害に対する「科学的証明の必要性」を主張してきた国の見解が退けられた

控訴審のポイントは、一審で「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者として認め、被爆者健康手帳を交付する要件とされたことに対し、国が「科学的根拠に欠けている」と主張した点にありました。
11種類の疾病とは「造血機能障害を伴う疾病」「肝臓機能障害を伴う疾病」などを指します。国はそれらに罹ったことと、放射線被曝の因果関係の科学的な証明が必要だと主張したのです。この11の疾病ついての国の説明を見ておきましょう。

健康管理手当 (厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku06/02.html


健康管理手当の支給対象となる11の「障害を伴う疾病」 厚労省HPより

このように、病との因果関係の「科学的証明」を求める国に対して、実は高裁は、裁判の過程で次のように国に迫っていたのでした。
「この裁判は原告たちが『原子爆弾が投下された歳又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者』に該当するかどうかが争点である」「このことが分かっているのか?」と。
つまり一つ一つの病の科学的証明など争点ではないと指摘していたのです。しかも「それを分かった上でなおこの主張を押し通すつもりなのか?」とも厳しく追究していたのですが、判決でもこの姿勢が貫かれました。

そもそも「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」をも、援護対象にせよと規定しているのが被爆者援護法1条3号であって、国の主張は、この点をもまったく理解しないものでした。
繰り返しますが「放射能の影響を受けるような事情の下にあった」ら、ただそれだけで援護されるべきで、一つひとつの疾病の、被爆との因果関係の「科学的証明」など必要ないのです。

続く

#黒い雨訴訟 #広島高裁判決 #控訴審勝利 #健康管理手帳 #11種類の障害を伴う疾病 #被爆者 #広島原爆

*****

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明日に向けて(2063)黒い雨訴訟控訴審でも勝利!「科学的証明」を求める国の見解が退けられた(連載 黒い雨訴訟高裁判決の意義―1)

2021年07月17日 21時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210717 21:00)

黒い雨訴訟高裁判決を取材するために広島市に行って、素晴らしい場を共有してきました。
お伝えしたいことがたくさんあります。記事を連投します!

黒い雨訴訟、控訴審も勝利!

7月14日、広島高裁において黒い雨訴訟控訴審判決が言い渡されました。
国および広島県、広島市による一審判決の取り消しを求める控訴を棄却。原告84人(うち14人はすでに死去、家族が訴訟を引き継いでいる)の被爆を再び認め、被爆者健康手帳の交付を命じるものでした。
再び黒い雨が降った地域が、従来の国の認識よりも大幅に広かったこと、そこにいた人々が内部被曝の被害を受けたことが認められました。


15時の判決言い渡しの直後に「全面勝訴」の旗が。真ん中は喜んで手を上げられた原告団事務局次長の高東征二さん。広島高裁前にて 守田撮影

しかも高裁判決は、一審より大きく前進したものでした。というのは一審で黒い雨降雨地域にいた人が、「健康管理手当」の支給対象となる「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者と認める要件としていた点を退けたのです。
黒い雨が降った地域にいた人々は、ただそれだけで原爆の放射能の影響を受ける事情の下にあったのだから、被爆者健康手帳が出されるべきだとしたのです。画期的です。

この勝利は原告の方たちの積年の頑張りを中心に、弁護団や支援者のみなさんの奮闘によって勝ち取られたものです。素晴らしい。心から拍手を送ります。
またこの勝利は、すべての放射線被曝被害者に灯をもたらすものでもあります。この点も素晴らしい。心からの感謝を届けたいです。




報告集会の場で「頑張って長生きして黒い雨を見届けるぞ」とこぶしをあげられた原告団・弁護団のみなさん。守田撮影

以下、少々、ややこしくもある高裁判決の画期的内容について、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。そのために幾つかの言葉の意味するものもご紹介します。


健康被害に対する「科学的証明の必要性」を主張してきた国の見解が退けられた

控訴審のポイントは、一審で「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者として認め、被爆者健康手帳を交付する要件とされたことに対し、国が「科学的根拠に欠けている」と主張した点にありました。
11種類の疾病とは「造血機能障害を伴う疾病」「肝臓機能障害を伴う疾病」などを指します。国はそれらに罹ったことと、放射線被曝の因果関係の科学的な証明が必要だと主張したのです。この11の疾病ついての国の説明を見ておきましょう。

健康管理手当 (厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku06/02.html


健康管理手当の支給対象となる11の「障害を伴う疾病」 厚労省HPより

このように、病との因果関係の「科学的証明」を求める国に対して、実は高裁は、裁判の過程で次のように国に迫っていたのでした。
「この裁判は原告たちが『原子爆弾が投下された歳又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者』に該当するかどうかが争点である」「このことが分かっているのか?」と。
つまり一つ一つの病の科学的証明など争点ではないと指摘していたのです。しかも「それを分かった上でなおこの主張を押し通すつもりなのか?」とも厳しく追究していたのですが、判決でもこの姿勢が貫かれました。

そもそも「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」をも、援護対象にせよと規定しているのが被爆者援護法1条3号であって、国の主張は、この点をもまったく理解しないものでした。
繰り返しますが「放射能の影響を受けるような事情の下にあった」ら、ただそれだけで援護されるべきで、一つひとつの疾病の、被爆との因果関係の「科学的証明」など必要ないのです。

続く

#黒い雨訴訟 #広島高裁判決 #控訴審勝利 #健康管理手当 #11種類の障害を伴う疾病 #被爆者 #広島原爆

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明日に向けて(2062)にょきプロ新BOOK『命を守り育み伝えるために~AFTER TEN YEARS~』完成しました!

2021年07月12日 12時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210712 12:00)

蝦名宇摩さんの熱い思いから始まった

『放射線副読本すっきり読み解きBOOK』を作成した「にょきにょきプロジェクト」の新BOOK、『命を守り育み伝えるために~AFTER TEN YEARS~』が完成しました!
ネットでの公開を準備中。製本版の申し込みフォームも作成中です。

新BOOKは、岡山県瀬戸内市で保養キャンプを続けてきた「瀬戸内交流プロジェクト」の蝦名宇摩さんの依頼から始まったもの。
「瀬戸内交流プロジェクト」、毎年7月下旬にキャンプを行ってきたものの、昨年、今年はコロナ禍で断念。保養を楽しみにしてきた方たちにとっても、受け入れてきた方たちに残念な事態です。

これに代わる何かができないかと考えた蝦名さん、『すっきり読み解きBOOK』を大量注文して配って下さり、さらに何かをみんなで共にしようと考えて、新BOOKの作成を僕に依頼してくださいました。
それなら原発事故からの10年をしっかり振り返るものを作りたいと思い、「にょき」メンバーに相談。蝦名さんにも参加してもらって冊子作りを始めました。



無料ダウンロードは以下から
https://nyoki2pj.com/lp/after10/

冊子ご注文は以下から
https://forms.gle/TqJ6AnTGYTMfXZUr6


福島原発事故からの10年間で進んだもの

新BOOKは、「あのとき日本はー東日本壊滅になるかもしれなかった」ということから説き起こしています。
福島原発2号機格納容器爆発の危機、4号機燃料プールの干上がりの危機、どちらが現実化しても被害は壊滅的でした。

この時、一部の人々が懸命に逃げ出しましたが、社会全体には「正常性バイアス」がかかり、深刻な被曝に多くの人が襲われてしまいました。
しかしその後、人々の目覚めが始まり、原発はとても危ない!という感覚が急速に広がり、国会前行動など、各地で原発に反対する精力的な行動が取り組まれました。

そんな中で原発のレギュレーションが少し強められると、電力会社各社が採算がとれなくなり、多くの原発を廃炉に。「もんじゅ」も廃止になり核燃料サイクルの展望が閉ざされました。
この「苦境」をしのごうとした原発輸出も次々と破たんし、すべての計画が水に流れました。民衆の力が「原子力の未来」に大きくストップをかけてきたのです。


民衆の頑張りの肯定面を取り上げることの大事さ

新BOOKでは、このように、10年間で大きな成果が積み上げられたことを強調しています。
しかしもっと悲観的な見方も多い。民衆運動の限界を指摘する声もたくさんあります。確かにそう言える面もありますが、否定面ばかり見て、肯定面を見逃している場合が多いのでは?

この点も掘り下げました。多くの人のメンタリティとして、自分や他者に厳しすぎやしないか?もっと褒め合って成果を誇ってもいいのでは?という点です。
私たちは「減点法」教育を受けています。私たちの採点はいつも100点からどれだけ足りないかという評価。そのため「ダメな面」ばかりを探し過ぎる傾向があるのでは?

でもそれって実は支配層に都合の良いことです。「おまえたちは無能だ。おまえたちが抵抗しても無駄だ」と思わせることこそ支配の要だからです。
そんなことはない。民衆の力はすごいのです。そうは思いませんか?ぜひ私たちの新BOOKを手にとってこの点を一緒に考えて下さい。


被曝を受け止め心身を癒すことが大事

この10年間、まだ進んでないことも。とくに放射線被曝の影響に対し、十分な把握が進んでいません。
それで新BOOKでは、2016年3月にテレビで放映されたNNNドキュメントを取り上げました。
2011年3月15日に、東京の世田谷でも多くの放射性物質の飛来が計測されていたことが克明に描かれていたからです。

番組では福島と青森のサルが比較され、被曝したサルの白血球数が減っていることが示されましたが、これを受けて、瀬戸内交流キャンプでも講演してくれた岡山在住の三田茂医師の話を取り上げました。
三田医師は、東京の子どもたち、約4000人の血液検査を行い、白血球の中の好中球が如実に減っている事実を示しています。

三田さんはさらに、福島原発事故によって被曝した「新ヒバクシャ」に、「能力減退症」が起きていることを論文で発表されています。
これらの事実があるからこそ、被曝被害をそのままに受け止め、対応していく必要があります。保養キャンプも避難も大事なのです。

被曝被害はまだまだ隠されている

新BOOKでは被曝被害が隠されているのかも検討しています。
一つに原子力体系が原爆製造・投下による広島・長崎での大量虐殺から進められ、被曝被害が隠され続けてきた点が重要です。

しかも核開発は東西冷戦の中で行われました。社会主義陣営と資本主義陣営が核開発競争をし、人々を被曝させ続けたのです。
どちらの陣営も被曝被害を明らかにせず、被害隠しを続けたのでした。ごく少数の心ある科学者のみが、原爆と原発、被曝の危険性を訴え続けただけでした。

同時に被曝被害を受け止めることの辛さも、被害隠しに利用されてきました。被爆者差別の中で、被害者が被害を隠さざるをえなかったり、被害者が辛くて被害を認められないことも往々にして起こってきました。
原子力推進派は、この辛さに便乗し、「被曝しても大した影響はない」とうそぶいてきました。この点をきちんと知ることが大事です。



以上、新BOOKでは、こんな点繰り返し討論し、原稿を何度も練り上げて編み上げました。ぜひみなさんに読んでいただきたいです。まずは手に取ってください。

ネットからのダウンロードや製本版お申し込みができるようにしますが、それまでは僕に連絡をいただければお届けします。
(製本版は1冊500円のカンパでお分けします。送料は何冊でも200円です。morita_sccrc@yahoo.co.jpにご連絡を)

#命を守り育み伝えるために #AFTERTENYEARS #瀬戸内交流プロジェクト #にょきにょきプロジェクト #福島原発事故から10年 #新ヒバクシャ #能力減退症

*****

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どうか支えてください。よろしくお願いします。

振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
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明日に向けて(2061)九州南部で一時「大雨特別警報」「緊急安全確保」が発令も、毎年の発令はおかしい・・・災害対策の抜本的転換を求めよう!

2021年07月10日 21時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20210710 21:00)

九州・四国・本州全体で11日まで大雨の可能性が

梅雨前線の影響で、西日本から東日本全体にかけて雨が強まっています。とくに九州南部では「記録的大雨」のため、一時期、鹿児島県、宮崎県、熊本県に「大雨特別警報」や「緊急安全確保」が発令されました。
10日17:00の時点で、大雨特別警報はすべて警報に代わり、緊急安全確保も避難指示に代わりました。しかし土砂災害の危険性は高まるばかりです。まだまだ警戒が必要です。

大気は不安定で11日にかけて、西日本から北日本にかけても雷を伴う激しい雨、川の増水、土砂災害、低い地域の浸水などの可能性があります。
ここ数年の豪雨では、河川の堤防決壊による甚大な被害も多発しています。どうかそれぞれで十分に警戒されてください。


「数十年に一度の災害時に発令」のはずが毎年なのはおかしい


「緊急安全確保」とは?

ところで今回、「大雨特別警報」とともに出された「緊急安全確保」という言葉をご存じでしたでしょうか?これは本年5月20日に改訂された「災害対策基本法」に基づくもの。警戒レベル4「避難指示」を越えた警戒レベル5に相当するもの。
「災害の発生が切迫、または現に起こっているときに、命を守る最善の行動を求めるもの」です。避難はそれ以前のレベル4、「避難指示」の段階までに済ますようにとアナウンスされています。

はじめて発令されたのは7月3日神奈川県平塚市と熱海市において降雨が激しくなったときでした。熱海市では大きな土砂災害が起きた1時間後に発令されました。
災害対策基本法の改訂は、従来、使われてきた「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化することともになされたもので、各地で災害に対し避難の遅れが多発している現状を克服しようとの意図が込められています。


緊急安全確保を説明する内閣府のポスター


警報の発令の仕方ではなく、災害対策を抜本的にあらためることが必要

しかしこうした改訂は大きな限界のもとにあります。例えば2013年からそれまでの「警報」「注意」に「特別警報」が加わり、「ただちに命を守る行動をとる」ことが呼び掛けられるようになりました。
その際、「特別警報」は「数十年に一度の、これまでに経験したことのないような、重大な危険が差し迫った異常な状況」 (気象庁HP)で発令されるとされましたが、ご存じのように九州などではほぼ毎年発令されています。

「数十年に一度」ではまったくない。にもかかわらず根本的な認識が改められていませんが、ここには重大な問題が横たわっているのです。災害対策のフォーマットが従来のものからほとんど変えられていないのです。
実際には気候変動などのため、雨の降り方が激変している。このため例えば従来の「計画降雨」=どの程度の水位まで川の堤防が耐えられるかを示すものが、次々と突破され、堤防決壊に至っているのに抜本的な対策がとられていないのです。


2019年の台風19号の際、各地で計画降雨が突破された 


原発のため災害の危機が過小評価されている

実は気候変動による雨の降り方の激変に対応していないだけではありません。地震もかつて予想された揺れを大きく越えるものが頻発しているのに対応していない。なぜか。まともに対応したら、全ての原発を廃炉にしなければならなくなるからです。
原発を次々と作ったころにはできなかった精度の高い揺れの観測ができるようになったら、「基準地震動」=どの規模の揺れまで原発が耐えられるかを示す数値が、実際に起きている地震の数値よりも一桁も少ないことが明らかになってしまった。

それだけではありません。川内原発などは、火山噴火で火砕流に襲われる可能性があるのですが、運転を認めさせるために、九州電力は「巨大噴火は10年ぐらい前に分かるので対処可能」と言い出し、原子力規制委員会が認めてしまいました。
実際には噴火を予知する確かな方法などなく、だからいつも備えなくてはならないのに、「10年前から分かる」=「いまは備えなくていい」という大嘘がまかり通ってしまった。これらが、災害への認識を変えることを大きく阻んでいるのです。


元福井地裁裁判長樋口さん宅と大飯原発の耐震性の違い


乱開発で危機が拡大されている

さらに今回、熱海市で起こった事態は、乱暴な開発優先のこの国のあり方が、あらたな危機を作りだしていることをも明確にしました。
人々の住宅を襲った山津波ともいえる土石流が、違法に積み上げられた盛り土を起点としていたからです。もはや雨の降り方が根本的に変わった日本列島の中では、盛り土を厳しく制限しなければならないのです。

そうなれば真っ先にやめるべきはリニア・北陸新幹線のためのトンネル掘削です。どちらも膨大な掘削土を作りだし、どこかに盛り土しなければならなくなるし、渇水や陥没など、他の被害もたくさん生み出します。
いやそれだけでなく、河川の「計画降雨」が各地で突破され、深刻な堤防決壊が起こっているのですから、国土計画をあらため、災害対策にこそ資源をつぎ込んでいく必要がある。大深度トンネル工事からの撤退は必須です。


熱海の土石流と盛り土の関係を報じる朝日新聞 20210710


いまそこにある危険と向き合いつつ災害対策の転換を

すでに日本列島を襲ってきている豪雨に対しては、とにかく早めの避難などで対応していくことが必要ですが、それだけを繰り返していてもダメです。
認識をあらため、災害対策を抜本的に変えることこそが必要です。

そのためには自衛隊を災害救助隊に変えることも必要。また災害対策の観点からも、地域の自治を抜本的に強化していかなくては。
けっきょくそれは国のあり方を大きく変えていくことにもつながります。このことも考えながら、災害に向き合っていきましょう!


東日本大震災の時に派遣された陸上自衛隊八戸駐屯地の部隊。迷彩服のため隠れてしまっている。これで災害救助をするのは不合理 八戸市HPより

#大雨特別警報 #緊急安全確保 #災害対策 #梅雨前線 #集中豪雨 #計画高水 #基準地震動 #盛り土規制 #リニア新幹線やめよ #北陸新幹線やめよ

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明日に向けて(2060)福島の今、復興の今、放射線防護の今について考えよう(22日、京都市で福島訪問報告を行います)

2021年07月07日 12時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20210707 12:00)

福島イノベーションコースト構想にご注目を

福島の今、復興の今、放射線防護の今、誰もが気になるところをがっつりお話したいと思います。
7月22日午前10時から、京都市のひとまち交流館第4会議室にて。主催は「ウチら困ってんねん@京都」です。
より多くの方が視聴できるようにzoomも併設します。会場カンパは資料代500円。zoomはあらかじめアドレスを公開します。投げ銭をお願いできればありがたいです。
(zoomアドレスと投げ銭先は、右記のアドレスにお申し込みいただけたらお送りします。morita_sccrc@yahoo.co.jp)

Facebookのイベントページもご紹介します。
https://fb.me/e/1z5FIjj3E

お話したいのは、守田が5月10日から13日まで福島県を訪れ、あちこちでいろいろな方とお会いして得てきたことです。被爆二世の森川聖詩さんと一緒の旅でした。
得たことはたくさんありますが、一番にお伝えしたいのは「福島イノベーションコースト構想」についてです。従来の「復興」のあり方とはまったく違い、福島の浜通りを「核との共存の町」にしていくことが目指され出しています。
中心にあるのは、福島第一原発の「廃炉作業」を軸にさまざまな核関連産業を誘致し「育成」すること。福島浜通りの「核開発の町」化です。

驚いたことに、アメリカのハンフォードとの連携が進められつつあります。ワシントン州にある「核の町」で、長崎を壊滅させた原爆のプルトニウムが作られたところ。全米にある核弾頭のプルトニウムの三分の二も作らました。
そのハンフォードに2019年に訪れましたが、核物質ですごく汚染されている。核廃棄物がポイポイと捨てられてきたからですが、中心都市のリッチランドなどは放射線防護ではなく福利厚生にお金がつぎ込まれ、核産業を誇りとする町となっている。
そのハンフォードとの連携が示すものは、福島を第二のハンフォードにすること。核を誇り、核と共存し、被曝実態を隠す町にすることです。この実態をぜひ多くの方に知っていただきたい。


実は『放射線副読本』とがっつりつながっている

福島のハンフォード化の動きの一つとして、双葉町に「東日本大震災・原子力災害伝承館」が建てられており、館長に高村昇氏が就任しています。
文科省発行の『放射線副読本』の執筆の中心を担った人物です。しかも『副読本』以前に復興庁から出された『放射線のホント』の作成にも関わっている。
高村氏は、あの山下俊一氏の右腕とも言われる人物です。原発事故後に福島に入り込み、安全論を振りまき、「放射能を怖がると子どもに悪い影響を与える」などと、福島の人々を騙したあの山下俊一氏です。(裁判で認めています)

この点で『放射線副読本』にちりばめられたテクニック、放射線被曝の危険性を無視するあり方が、福島イノベーションコースト構想と一体化していることが分かります。
しかも高村昇氏はヒロシマとナガサキで「放射線災害復興学」を立ち上げています。次の核災害時に、放射能の中で人々が「前向きに」生きていく道を探るというのです。核との共存=被曝の強制です。
実は核との共存を一番最初に言い出したのは、長崎原爆を「神が落としたもの」と語ったナガサキの「聖人」、永井隆博士でした。山下俊一氏はその永井博士の信奉者。永井ー山下ー高村とつながっているものがあります。

さらにです。その高村昇氏とともに『放射線副読本』の前の『放射線のホント』の構成に関わったのが、東大名誉教授の早野龍五氏でした。
早野氏は福島医大の宮崎真氏と福島県伊達市の被曝線量を過小評価した論文を作成して英学術誌に投稿し、大問題を引き起こした方でもあります。伊達市が住民に配ったガラスバッジデータを使ったのですが、市民に合意を得ませんでした。
その上、虚偽データを掲載したり、被曝線量を大幅に過小評価するなど、あまりにひどくて論文撤回に追い込まれました。不正を暴いたのは伊達市のみなさんでした。(今回お会いして詳しい話を聞けました)。


被曝影響の過小評価がものすごい勢いで強調されだしているわけ

これらを通じ、「福島の今」を形作りつつあるものが、国際的な原子力推進派の動きであることが見えてきました。被曝を限りなく過小評価し、核との「共存」を人々に強いるのです。
例えば早野龍五氏は、放射線影響研究所の評議員も兼ねています。アメリカが原爆で広島・長崎を壊滅させたあとに作ったABCC(原爆傷害調査委員会)の後継組織です。
そこが最近「被曝二世のゲノム調査」をしたいと言い出しました。なんのため?「ゲノムまで見たけれど被曝影響などなかった」と言いたいのでは?と考えていたらその通りの回答がチェルノブイリ周辺で出されました。


実は放射線被曝の遺伝的影響は、アメリカが原爆による大量虐殺を行った直後から、最も注視してきたことがらなのです。

一番初めに原爆使用を批判したのが遺伝学者たちであり、遺伝的影響への不安が大きく広がったからです。当初よりこれを抑えこまないと核戦略は前に進まなかった。それでABCCも遺伝的影響を否定することを最も重視して出発しました。
そしていま、この遺伝的影響の否定の動きがにわかに強まりだしています。どうしてか?推進派が激しく何かを否定するときはその事実が強まっているとき。つまり被曝影響、遺伝的影響が顕在化しているからに違いありません。

実際には遺伝的影響は確かにあります。被爆二世の森川聖詩さんが著書『核なき未来へ~被爆二世からのメッセージ』で、自らの身体に起こったことを赤裸々に書いてくださっています。
これを受けた京都「被爆二世三世の会」の第二回目の健康調査アンケートでも、森川さんと同じような体験を克明に記した多数の回答が寄せられています。
これらをもっと明確につかむことが、被曝被害を受けた人々を救済し、新たな被曝を避ける大きな力になります。しかしだからこそ原子力推進派は、被曝影響隠しを強化し、これと一体のものとしてあるイノベーションコースト構想を進めているのです。



こうした流れをきちんとつかんで、私たちと未来の命を守っていきましょう。福島を核開発の町、核との共存の町にするなど許さない。22日の企画にぜひご参加下さい。

#福島の今 #復興の今 #放射線防護の今 #福島イノベーションコースト構想 #放射線副読本 #放射線のホント #山下俊一 #高村昇 #早野龍五

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明日に向けて(2059)原発事故から10年、「命を守り伝える」をテーマに放射能について、福島の今について、とことんお話します(13日岡山県瀬戸内市)

2021年07月06日 17時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210706 17:00)

福島原発事故から10年を振り返って

7月13日(火)、午後5時30分から7時30分まで、岡山県瀬戸内市長船の「カフェひなたん」でお話します。
タイトルに示したように、福島原発事故の10年を振り返りながら、放射能について、被曝からの命の守り方について、そしてまた福島の今についてなど、とことんお話します。
主催は「瀬戸内交流プロジェクト」。連絡先は蝦名宇摩さん(090-4964-4147)です。

お話したいのは、この10年で何がとう変わったのかです。みなさんはどう思われますか?
僕は激変したと感じています。何より原発は激減したし、原発の危険性について、ものすごく多くの人々が知るにいたりました。
でも原発はまだ再稼働されている。また各地の選挙の投票率も高くないし、いまだに原発にしがみつく自公政権が続いてる。・・・どこが変わったの?と思われる方もいるかと思います。

この点をどう考えるのか。この10年で積み上げてきたものは何なのか。
同時に、いまもっと進めなければならないものは何なのか。何が足りてないのか。これらについて「とことん」お話します。

Facebookのイベントページをご紹介しておきます。
https://www.facebook.com/events/130578939148968


新BOOKのお披露目を兼ねます!

実は今回の会、「にょきにょきプロジェクト」で作成した新BOOKのお披露目も兼ねています。
新BOOKのタイトルは「命を守り、育み、伝えるために AFTER TEN YEARS」。なぜ瀬戸内市でお披露目会なのかというと、今回の冊子、瀬戸内交流プロジェクトを主宰してきた蝦名宇摩さんのお願いから生まれたものだからです。

お願いとは、このコロナ禍の中、昨年も今年も交流キャンプができない。全国の多くの保養団体もおなじ。
それならキャンプに向けて集まったカンパを使って、福島原発事故からの10年を振り返り、保養などで頑張ってきた成果を感じれる何かをしたい。そのために僕にBOOKを作成してくれないかというものでした。

それで僕が「にょきにょきプロジェクト」に、「それならにょきの新BOOKを作ろう。蝦名さんにも参加してもらおう」ということで、新BOOKプロジェクトが始動。
原発事故から10年、「命の守り伝える」をテーマに、10年間で積み上げられたもの、放射能のこと、保養を続ける意義(被曝の事実を受け入れる大切さ)など、討論を重ね、BOOKを編み上げました。いまプリントの仕上がりを待つばかり。

13日は新BOOKを使った初めてのイベントになります!その後、「瀬戸内交流プロジェクト」関係者、支援者にはすぐに発送されるとのこと! 期待してお待ちください。
「にょきにょきプロジェクト」からも公開します。プリント版はすぐにお渡しできますが、ネットでどう公開するか思案中。これもすぐに追ってお知らせします。


福島の今、そして広島の今についてもお話します

13日はこの新BOOKを中心にお話しますが、BOOKに盛り込まれてない話として、福島の今についても語ります。
実は今年の5月10日から13日から、福島県内各地を訪問させていただきました。被爆二世の森川聖詩さんと一緒の旅でした。
いろいろな方にお会いしてお話を聞きましたが、その中で「福島イノベーションコースト構想」なるものが進みつつあり、アメリカのハンフォードとの連携がされつつあることなど、しっかり取材してきました。

さらに実は翌日14日には広島市に行きます!なぜかというと「黒い雨裁判」の控訴審の判決公判が広島高裁で行われるからです。
いま得ている情報では、高裁でも黒い雨を浴びた方たちの訴えが認められ、画期的な一審勝利を受け継いだ判決が出る可能性が高い。
それでその前夜に、福島の今、広島の今についてお話します。

みなさま。ぜひ瀬戸内市長内、「カフェひなたん」にお越しください!

#福島原発事故から10年 #命を守り伝える #瀬戸内交流プロジェクト #蝦名宇摩 #放射線防護 #保養キャンプ #にょきにょきプロジェクト #福島イノベーションコースト構想 #黒い雨

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明日に向けて(2058)美浜3号機不具合発生、しかもポンプフィルター目詰まりは非常時を想定した試験への不合格を意味している

2021年07月05日 12時30分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210705 12:30)

再稼働後すぐに不具合が発生、関電は問題は解決したとしているが・・・

6月23日に関西電力によって再稼働が強行された美浜原発3号機、29日に送電を開始し、3日にフル稼働の試験を行う予定でしたが、2日に不具合が発生し、フル稼働が1日延期されました。
問題が起こったのは、非常時に蒸気発生器に注水するためのポンプ。正確には「タービン動補助給水ポンプ」といいます。この配管の圧力が低下したのでした。

点検を行ったところ、ポンプのフィルター(ストレーナー)に鉄くずが詰まっていたそうです。関西電力はこれを配管内で発生したサビとしつつ除去し、問題は解決したとして、予定より1日遅れの4日午後に3号機をフル稼働させました。
今後、7月27日に営業運転を開始する予定と発表していますが、いろいろな疑問が沸きました。

とくに大事なのは、そもそもなんで非常用の注水ポンプが動いたのか。かつまたそのポンプのフィルターにつまっていた鉄くずを除去したら、問題解決となるかです。
この点を精査していて、重要な点が見えてきました。


美浜3号機での不具合の発生を報じる毎日新聞


問題は非常用ポンプの試験過程で起きた

調べてみて分かったのは、この不具合が非常用設備の試験過程で起きたことです。
以下のNHKの報道(5月13日)から分かりました。

40年超の美浜原発 事故想定し非常用ポンプ動かす試験行う方針
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210513/k10013028321000.html

NHKはこう説明しています。「福島第一原発の事故では、1号機に原子炉を冷却する「非常用復水器」と呼ばれる設備がありましたが、事故が起きた条件で試験をすると、万一の故障で放射性物質が漏れるリスクがあるため長期間、本格的な動作試験がされず、これが現場の理解不足につながり事故が拡大したとの指摘があります。このため、原子力規制委員会は事故を想定して、安全系の設備が実際に動くかどうかの試験を電力各社に求めていました。」


非常用ポンプの試験予定を報じるNHK

関電などの発表の鵜呑みの報道ですが、これでは正しくないし、事態の本質に迫れていない。なぜならこの設備は過去に稼働し、途中で止まった経歴があるものだからです。


美浜3号機配管破断事故(2004年)の時にこのポンプに不具合

美浜3号機は2004年に二次系配管断裂という深刻な事故を起こしています。定期点検を急ぐため、まだタービンが回っているのに建屋内に入った下請け会社の方たちに、140度の蒸気が降り注ぎ、5名が亡くなり、6名が重傷を負いました。
同時に二次系冷却水が大量に漏れ出したために一次冷却水が冷やせず炉心が高温化、メルトダウンに向かってしまいました。

これへの対応は蒸気発生器に注水して一次冷却水の熱をとることにつきるのですが、配管破断で水がこなくなり給水ポンプはうまく動かず。
このとき「復水タンク」につながった電動の補助給水ポンプと、このタービン動補助給水ポンプが稼働しました。後者は電源が喪失してもタービンの動きで回り続けるように設定されたものです。


2004年の配管破断事故の説明図 ただしここには補助給水ポンプは図示されていない

この電動とタービン動の補助給水ポンプが動いたことで、美浜3号機は炉心の冷却が可能となり過酷事故を免れたのでした。
しかしその後、電動補助ポンプの注水量が十分だとしてタービン動補助給水ポンプはバルブが閉じられたのですが、続けて待機状態に移行しようとしたものの、3台のうちの2台のバルブが開かず給水可能にできませんでした。重大な不具合でした。


同ポンプは2004年1月に伊方原発1号機でも白煙をあげる故障事故を起こた。図は四電が釈明に使ったもの


今回もいざとなった時にきちんと動かない可能性こそが示された!

これに対して関電はバルブのバネを強いものに替えることで対処しました。しかしその後、この設備は稼働したことがありません。恐らくはテストもされず、約17年ぐらいが経っているのだと思われます。
今回の試験は、この2004年の悲惨な経験や、タービン動補助給水ポンプの重大な不具合を踏まえ、いざとなった時に、きちんと動くのかどうかを確認するためのものでした。

結果はどうだったか。今度は違う要因で不具合を起こし、想定通りに動かなかったのです。その原因がフィルターの目詰まりとされていますが、大事なのは美浜3号機が非常事態を想定しての試験に合格できていないことです。
この場合、目詰まりしたものを除いたら解決でしょうか?断じて否。そもそも関電はこれを配管内でできたサビだとしていますが、もしそうなら、今回の試験ですべてのサビがはがれたとはとても考えられない。

サビがまだ残っていれば、本当の非常時にも再び目詰まりしてポンプ圧力が低下し、必要な給水ができなくなってしまう可能性が高い。そうしたら今度こそ、メルトダウンに至ってしまう。
美浜3号機は、これを見ただけでも深刻な問題だらけ。運転を継続してはなりません。営業運転への移行などもっての他です。直ちに停めよ!の声を上げ続けましょう。


二度と深刻な事故を起こさせないために(2004年の事故を報じるテレビニュース)

#美浜原発3号機 #老朽原発 #蒸気発生器 #タービン動補助給水ポンプ #配管破断事故 #一次冷却水 #二次冷却水

*****

原発や放射線被曝の危険性の暴露など、取材・執筆活動のためのカンパを訴えます。
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