明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1274)科学の原則を無視した原子力規制(後藤政志さん談)

2016年06月21日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160621 23:30)

川口さんとの対談の最終章(質疑応答部分)がまだ残っているのですが、元格納容器設計者の後藤政志さんとのジョイント企画が迫ってきましたので今回はそのことを特集します。
まず後藤さんとご一緒させていただく企画ですが、6月24日舞鶴市、25日に向日市、26日彦根市と3日連続で行います。いずれの場でもまずは1時間、後藤さんにお話いただいて、後の1時間、僕が対談させていただきます。
それぞれの企画の案内を最後に貼りつけますので、詳細はそちらをご覧下さい。

今回は後藤さんがネットで話されている最新の見解をご紹介します。
以下のYouTubeでのお話を2回に分けてお伝えします。
なお今回も文字起こしした上で、一部、話し言葉を書き言葉に改めていますので、文責は守田にあります。この点をご注意ください。

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科学の原則を無視した原子力規制
2016年5月25日公開 後藤政志
https://www.youtube.com/watch?v=gFNmpcA3qlA&feature=youtu.be

①科学の原則を無視した原子力規制

原子力規制では常に「科学的」という言葉が使われます。しかしどうも気になるのは「科学的に最新のデータを基に」とか言ったときに本当に中身を伴っているのかです。
「科学的」と言えばすべてが客観性を帯びるかのように言われるふしがあるのですけれども、中身が伴っていない場合が多い。
科学的な言葉を使いながら、科学的な実証性や、誰しもが認める客観性を伴わないままに科学的という装いをもって、すごく主観的なことが言われている。というより規制においても使われているのではないかという危惧を持ちます。

そもそも科学と言うものは、仮説、理屈上こういうことではないかという説を建てるわけですね。それを実験やデータその他によって実質的に証明する。それが実証性です。
科学では仮説の段階は科学の入り口でありまして、実証されてない段階は、「実証されてない」と言わなくてはいけないのです。
ところが、これは地震とか津波とかを専門的にやっている方にお叱りをうけるかもしれませんけれども、あえて私なりに言わせていただくと、研究として理論的な部分はその通りで、ある面で科学的な理論を建てて、調べながらやっている。それはそう思います。

ただ内容で、土のメカニズム、壊れ方、地球のプレートがぶつかってこすれて摩擦でひずみが集中して跳ね返ってとか、その途中が壊れるとか、直下型の断層の地震とかですね。そういうものの壊れ方が絡んでいます。
そうすると理論上は分かっているけれども、データで全部カバーできるわけではないのです。
つい最近でも南海トラフの話で、全体のひずみが5センチぐらい動いていると、これは大変なことだと、今までと違った結論になると、その限りでは科学的な話をしています。
ですけどそれを原子力規制において、そのひずみからどういう地震が来ると分かるかというと実証性がないのです。それをもとにあたかも「何ガル」ということを(分かっているかのように-守田補足)出してくる。私はこれはおかしいと思います。
原子力規制の根幹の問題です。

可能性としてこれが一番高いということは言えるかもしれないけれどもそれで断定できないのは明らかです。
この科学の実証性ということでは、裁判でも課題になっていましたけれども、活断層の長さと地震のエネルギーはある相関関係にある。平均化すると活断層の長さが分かると地震の規模が分かるというのが地震学の理論なのですね。データを平均化していわれる。
ですけれどそれはばらつきがある。しかも大きなばらつきがあるというのがある種の常識なわけです。ところがそれが科学的にあたかも真の値であるかのごとく喧伝されていく。それが非常におかしいわけです。

地震のエネルギーについて分かっていることと分からないことがあって、熊本の地震を見ると分からないことだらけなのですね。
今まで余震、本震という言葉を使ってきましたけれども、今回は震度7の地震が2回もおきて、最初のは実は本震ではなくて前震だったという定義づけがされました。
ある意味では科学者が後付けて解釈したわけですが、問題なのは解釈をするのはよろしいと思いますが、予測の段階で信憑性が問われるときには、分からないことを分かっているように言うなということなのです。

こういう風に思われてこういう可能性が高い。例えばひずみがこうたまってきたからこういう可能性が高い。そこまでは言っていいと思うのですね。しかしそうだけれど、「それはどこまで言えて、ここは分からない」とはっきり言うべきなのです。
だからテレビを見ているとこういう状況になることを予知できなくてはいけない。予知できるようにやって欲しい。予知を出してくれとみなさんが言うわけですがそれは無理な面があるのです。科学的にできないことを予知できると言うのはナンセンスなのです。

私は地震学者ではありません。工学者ですが、物が壊れる破壊現象は扱ってきています。破壊現象というのは非常に不確定なもので、断定しがたい。不確定性がいろいろある。ある場合には確率がからんでくることになります。
たかだか人工物でもそうですから地球規模ではより大きな不確定性があるのは明らかなのですね。その不確定性をなぜに科学者が明確に言わないのか。それは科学者としての怠慢であり、科学者として許されないことだと思います。
とくに社会的に影響のあることについてはまずいと思います。

もちろんきちんと話されている方も存じ上げています。しかしそうでない方も結構いる。それが問題だと思います。それにのっかって規制が動いている。この間代表的だったのは地震もそうですけれども火山ですね。
川内原発の火山の話を観ますと火山学者がとても(噴火を-守田補足)予測できないと言っているのに、原子力規制委員会の方は、火山が動くのは何万年とか十万年とかの単位なので、十分にその前に予知をして使用済み燃料を取り出せるのだと言っています。
それは何に基づいているのかというと「科学的」という「科学に基づいている」という嘘っぱちです。科学的に分かりもしないことを科学と称して勝手に引用している。

日本はとくに「科学」に対しての幻想が大きすぎます。「科学的」ということをもってものを考えていますけれども、実は非科学的です。科学的ではまったくない。単なる推測の域を出ない。占いの域を出ません。
そんなものをもとに原子力規制をやるというのは根幹が間違っているということになるのです。

それに関連して申し上げたいのはリスクについてです。リスクをテイクするという場合、どういうリスクがあるか。例えばどういう地震でどのようにプラントが壊れるか、それによってどこの人たちが被害を受けるかということになります。
そのリスクを背負う、被害を受ける人たちがどういう人たちなのかということと、もともとになる原発の有用性とリスクを比較します。
そのときに有用性を理由にリスクを押し付けているわけです。これは大都市と現地の人たちの問題です。原発のリスクを一番抱えているのは、原発の地元、近くが多いです。

それに対して原発の利益を受けるのは電力会社が一番ですが、大都市の人たちなわけですね。つまりリスクと有用性、メリットが明確にならなければいけないわけですが、リスクのすり替えと押しつけが行われている。最悪です。
こういうことを止めようというのが私の意見です。それが科学的な装いのもとになされていることが非常に気になることです。

もう一つ付け加えると、原子力規制では完全な安全はできないのです。本質的安全はできない。フェールセーフといって、何があっても安全側に落とすということができない。
だから「多層防護」といって、安全対策を5段階に分けて、第一が突破されたら第二、第二が突破されたら第三と考えている。
もともとは軍事用語なのですが、これでもって多層防護でやるからいいのだと言っているわけですけれども、多層防護というのは突破されてやむを得ないからやるのであって、そもそも突破されるなどということがあってはいけないのですね。
働かない安全装置は安全装置ではないのです。安全学の中で一番大事にするのですけれども、何かが壊れて使い物にならなくなるならそれは安全装置ではない。それが安全学の常識なのです。

例えば火災報知器だって火災でケーブルが焼けてしまうのならそれは火災報知器ではないのです。火災で情報が出ませんから。本来では火災で断線したら火災報知器がなるようなシステムになっていなくてはならない。
しかしそうなってないものがいっぱいある。原発はその典型です。これが「科学を無視した原子力規制」ということについての私の意見です。

(後半に続く)

以下、後藤さんの講演会と守田との対談連続企画をお知らせします。

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ほんとに大丈夫?私たちのまち(舞鶴)
https://www.facebook.com/events/2046900525535211/

6月24日 19:00
舞鶴市政記念館

講師 後藤 政志さん
コーディネーター 守田 敏也さん

主催 子どもの未来を考える舞鶴ママの会

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原発をなくす向日市民の会 第5回
記念講演会・総会のお知らせ

日時 6月25日(土) 1時30分開場 2~4時
第1部  記念講演 講師 後藤政志さん
     後藤政志さんと守田敏也さんのトーク
第2部 第5回総会
場所 慶昌院 (寺戸町西野2)
*年会費を集めます。講演は無料ですが、会場でカンパを募ります

お問い合わせは TEL/FAX(事務局 筒井) 075-931-3788
メールアドレス genpatsu.zero.20120714@gmail.com

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原発学習会「原発のほんまのこと」
https://www.facebook.com/events/1613695418958424/

2016年6月26日 13:30 - 17:00
滋賀大学経済学部 第6講義室(校舎棟1階)
〒522-8522 滋賀県 彦根市馬場1-1-1

原発技術者の後藤政志さんと、ジャーナリストの守田敏也さんに原発の実態について詳しくお伺いします。

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守田敏也 MORITA Toshiya
[blog] http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011
[website] http://toshikyoto.com/
[twitter] https://twitter.com/toshikyoto
[facebook] https://www.facebook.com/toshiya.morita.90

[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4

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