明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(717)福島3号機の「湯気」は格納容器内部から・・・避難準備と警戒を!

2013年07月28日 17時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20130729 17:00)

昨日(27日)、茨城県の笠間市でお話し、今日は東京で再び不穏当な状態が続いている福島3号機関連の情報を分析していますが、情報の少なさに驚いています。今のところつかめているもので続報をお送りします。

まず最も重要な情報から載せます。26日に東京電力が、「湯気」の正体について、雨水が格納容疑上にたまり、加熱されて湯気となったという「推測」に依拠していた従来の立場を変更し、新たに格納容器内部からの漏れもある可能性に言及し始めました。この内容は報道関係向けにあてた以下のメールで発表されました。

福島第一原子力発電所3号機原子炉建屋5階中央部近傍(機器貯蔵プール側)で湯気の確認について(続報14)

http://www.tepco.co.jp/cc/press/2013/1229242_5117.html

この中で〈湯気の発生メカニズム〉が以下のように解説されています。そのまま引用します。

***

  シールドプラグの隙間から流れ落ちた雨水が原子炉格納容器ヘッドに加温されたことによるもののほか、原子炉圧力容器、原子炉格納容器への窒素封入量(16m3/h)と抽出量(約13m3/h)に差が確認されていることから、この差分(約3m3/h)の水蒸気を十分含んだ気体が原子炉格納容器ヘッド等から漏れている可能性が考えられ、これらの蒸気がシールドプラグの隙間を通して原子炉建屋5階上に放出した際、周りの空気が相対的に冷たかったため蒸気が冷やされ、湯気として可視化されたものと推定されます。

***

東電はまだ雨水が格納容器ヘッドに加温されたという見解を捨てていませんが、しかしこの部分の温度は30数度と伝えられており、とても湯気を発生させる温度ではありません。とすれば湯気の正体は、もっぱら格納容器内部からのものであると推測されます。

これは非常に重要な問題です。考えられるのは格納容器のおそらくは底部にある核燃料の塊=デブリの温度が上がり、冷却水がこれまで以上に蒸気を発生させて格納容器内の圧力を高め、それが格納容器のヘッドと容器の接合部分の劣化箇所から漏れ出してきているということです。

福島原発事故発生時も、炉内の冷却ができずに加熱が進んで水素と蒸気が大量に発生し、ヘッドと容器の接合部分のシール剤が熱によって劣化することで漏れを作り出し、やがて水素爆発を引き起こしたわけですが、今回もおそらくは同じ経路から内部の気体が漏れ出し、急激に冷やされて湯気となったのだと思われます。なお東電はこの気体の中身が窒素であると推測しています。窒素は格納容器内で繰り返し発生する水素が、一定濃度になると再び爆発を起こしかねないために、封入され続けているものです。

ここから推論できることは、明らかに格納容器内部ないし下部にある燃料体でこれまでになかった異変が生じ、温度上昇が起こっているということです。ただしそれがどれほどに深刻な事態であるのかは予想がつきません。おそらくは東電も十分には把握できていおらず、また事実を正確に伝えているとは思えません。そもそも「湯気」の発生が確認されたのは18日です。もう10日近くが経っている。東電はそれほど経ってようやく格納容器内部からの漏れの可能性を認めたのであり、その間、10日間近くも現実を的確に発表できずにきているわけです。

また湯気が窒素であるとするならば、水素爆発を防ぐために封入を続けているものが漏れ出してきてしまっているのですから、当然にも水素爆発の危険性も高まってしまうことになるのであって、この点で、格納容器内部のものが漏れ出してきているのは大変な問題です。もちろん、格納容器内部には大変な量の放射能があるわけですから、大気汚染を再び三度、汚染している問題もあります。

非常に悩ましいのは、こうした東電の発表から、現状がどれほど危険なのか。またどのような状態になったときに避難を決断すべきなのかを判断するのは難しいということです。これまで東電は繰り返し、事故を小さく見せる発表を繰り返してきました。虚偽のものも多くありましたが、東電自身が、事故が小さいものであって欲しいと願うあまりに過小評価に至っているものも多くありました。要するに虚偽体質の上に、正常性バイアス=事態の深刻化を認めず、「正常」に戻っていくバイアス(偏見)を事態に被せてしまうことが重なっているのです。

こうした東電の発表に事故当初、著しい追随を行ったマスコミもまた、こうした東電の体質に影響され、事態を厳しく見る観点を失っています。今回も、格納容器の漏れの可能性を指摘した東電のリリースを、多くの新聞社がそのまま流しているだけで、格納容器内の何らかの変化を示すこの重大事態への考察はほどんとありません。

それゆえにこそ、私たちは「危機を強く感じたら」、即刻、危険地帯を離脱できる準備を固めておく必要があります。この場合の何をもって「危機を強く」感じるのか。目安の提示ができないのが本当にもどかしいです。急激に周囲の放射線値があがることなどがひとつの目安になるとは思いますが何度も言いますが、今の段階では、まずはいつでも実行できるように、避難準備を進めてください。

繰り返しますが今すぐ避難しなければならないという情報を僕が持っているわけではないです。僕が理解しているのは、今、格納容器内で何らかの異常事態が発生しているという事実と、にもかかわらず東電はその把握、ないし発表までに10日間近くもかかってしまっているという事実、マスコミもまったくあてにならないという事実です。だからこそ、先々のことも踏まえて、すぐに逃げられるようにしておくことが大事なのです。

前回も掲載しましたが、さしあたって以下の記事をご覧になり、正常性バイアスにかからないようにすることの重要性をつかんでください。その上で具体的に避難のシミュレーションを行ってください。

明日に向けて(703)原発事故に備えて避難の準備を進めよう!http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/afc8cc8dbdd1b15aa9071bb5273771d1

またこれを機に、ぜひ遠く離れた友人・知人と個人間で防災協定を結んでください。どちらかが災害に襲われた場合に、他方が避難を受け入れる協定です。これを結んでおけばいざというときに目指すところが鮮明なのですぐに行動に移れます。家族がバラバラになり、連絡が取れなくなった際の集合場所にもなります。反対に相手側に災害が発生した場合は、すぐに避難の受け入れ準備を開始できます。可能なら個人間防災協定は複数結ぶと良いです。

また物資の備蓄も進めてください。私たちの国の政府は、東南海トラフ地震にそなえて1週間分の水と食料の備蓄を訴えています。最低限、この準備をしておきましょう。災害時にコンビニの食料は半日で売り切れて供給が途絶えます。ぜひそれぞれで備蓄を行ってください。これはさまざまな事情で避難に踏み切れず、やむを得ず自宅避難を選ぶことになったときにも非常に重要な助けになります。

あと、前号にヨウ素剤のことを書きましたが、その後に昆布をそのまま食べても良いのかという質問が寄せられましたので回答します。昆布をそのまま食べてもヨウ素を摂取できますが、緊急時に必要な量のヨウ素を摂取するためにはかなりの量を食べる必要があります。その場合、昆布は消化がよくないので、胃腸にかなりの負担がかかってしまいます。緊急時にストレスがかかっている状態での胃腸への負担はリスキーです。

なお、ヨウ素剤はこれまで40歳以上は服用の必要がないとされてきましたが、僕は従来からそんなことはないと考えてきました。これに対して原子力規制庁がつい最近、発表したヨウ素剤服用の指針でも、従来の見解に変えて、40歳以上も服用するように指示しています。このため年齢に関係なく服用してください。その場合、昆布でとる場合は、とくに高齢者の場合、胃腸の働きが弱く、昆布が腸に詰まって深刻な状態に陥ることもありうるので、だし汁で採るようにしてください。

「原発災害に対する心得」を3回にわたって特集した記事も紹介しておきます。必要に応じてご参照ください。

明日に向けて(556)原発災害に対する心得(上)http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a276d3555af84468c1db19966b59cf16

明日に向けて(569)原発災害に対する心得(中)http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0fd8fbc4681c2a073c73e4a0f95896bf

明日に向けて(571)原発災害に対する心得(下)http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/ed69f6466c0d72c16f70a371e599df31

 

続いて7月12日に北茨城で7マイクロシーベルトの放射線が観測されたことについての追加情報です。まずは以下の記事をご覧ください。

北茨城市でホットスポット? 工業団地で高放射線量 工場の非破壊検査が原因かhttp://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130725/dst13072522050008-n1.htm

記事内容が真実であるとすれば、この北茨城の高線量は3号機とは無関係であることになります。この点では少しホッとさせてくれる情報です。しかしここには他の重大な問題があります。ひとつにはそんな高線量を道路を通行中の車に浴びせたことは大変なことであり、一体誰が、なぜそのようなことをしてしまったのかを明らかにし、再発防止の手段をとらねばならないということです。この点がどうなっているのかまったくわからない。

二つには、これほど重大な事態がありながら、発表が二週間以上も遅れたことです。記事では北茨城市が計測し、24日に原子力機構に分析が依頼され、25日に規制庁が発表したとなっていますが、なんとも怪しい。北茨城市がこれほどの重大なことを同時に2週間も留め置くことなどあるのでしょうか。その辺の事実関係も徹底的に明らかにされなければなりません。そうでなければ、危機がただちに伝えられないあやまったあり方が広がるばかりです。それこそが危機をより深刻なものにします。

北茨城の事態に関しては以上ですが、3号機の問題の情報の少なさと言い、北茨城の件といい、この国が、ないし私たちが「危機慣れ」してしまっていることを象徴しているようにも思えます。もし3号機が最悪の状態に立ち入るならば、他の原子炉も手当てができなくなりますから、東日本壊滅の恐れもあるし、事態がどこまで広がるかもわかりません。だからこそ、それらを想定して対策を立てるべきなのです。東日本では広域の避難訓練が絶対に必要です。

にもかかわらず、危機が注視されなくなっている。繰り返しますが、そのこと自身が危機を深めてしまいます。このことをしっかりと見据え、それぞれの場所、地域等々で原発災害対策を進めてください。可能な限り行政を巻き込んだ原子力防災体制を作り出してください。私たちの命を、未来の命を、私たちの手で守りましょう。 

 

 

 

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