聖ヨゼフと太祖ヨゼフについての説教
ドモルネ神父 2023年3月19日
はじめに
今日は四旬節第4主日で、聖ヨゼフの祝日は明日の月曜日に延期されました。それでも、今日は聖ヨゼフについてお話ししようと思います。聖ヨゼフは、とても控えめな人物です。聖ヨゼフの尊厳と、世界の歴史と私たちの人生において果たす大きな役割を、さらによく理解するためには、聖ヨゼフの予告となった、かたどりの人々のことを考察するのが、大変役に立ちます。聖ヨゼフの予告となった人々のうちで、今日は、旧約聖書に登場する、ヤコブの子である太祖ヨゼフのことを考察してみましょう。太祖ヨゼフがどういう人物で何をしたのかを見れば、聖ヨゼフがどういう人物で何をするのかということが、部分的に明らかになるのです。
1.ヨゼフの美しさ
ヤコブの子であるヨゼフは、肉体的にも精神的にも非常に美しい人物でした(創世記49章22節を参照)。彼は、父から特に愛されました。そして、その愛のしるしとして、父はヨゼフに、兄弟たちと見分けるための「そでの長い服」【創世記37章3節】を与えました。
ダヴィド王の血を引く聖ヨゼフは、肉体的にも精神的にも非常に美しい人物でした。童貞聖マリアと結婚したとき、彼は老人ではなく、美男で高貴な若者でした。年老いた聖ヨゼフが聖母と結婚するというイメージは、霊感のほとんどない芸術家たちが創作したものです。聖ヨゼフは、あらゆる女性の中で最も美しい、童貞聖マリアにふさわしい夫となることが予定されていました。ですから、マリアの肉体的、道徳的な美しさは、ヨゼフの肉体的、道徳的な美しさにぴったりでした。天主は、聖ヨゼフを特別に愛されたため、他のすべての聖人と見分ける恩寵、他のすべての聖人より高く上げるという恩寵を与えられました。聖書では啓示されていませんが、おそらく聖ヨゼフも、洗者聖ヨハネや預言者エレミアのように、母親の胎内にいるときに原罪から清められていたのでしょう。
2.ヨゼフの貞潔
ヤコブの子であるヨゼフは、英雄的な貞潔の徳で卓越していました。実際、エジプトで奴隷だったとき、彼は主人の妻と姦淫を犯すよりも、偽りの告発を受けて一生の間牢に入れられる方を選びました。
ダヴィドの子である聖ヨゼフは、さらに完全に貞潔でした。彼自身、生涯童貞の誓いを立てており、聖霊の浄配であるマリアの童貞性を、完全に尊重しました。若くて美男の聖ヨゼフが、生涯にわたって悪しき望みを持つことなく、最も美しい女性である童貞聖マリアと同居することが、果たして可能だったのでしょうか? そうです、可能だったのです。そのわけは、天主の恩寵は他の何よりも力あるものであり、聖ヨゼフが天主の恩寵に満ちていたからです。また、マリアの美しさは、男性の心に抑えきれない愛を起こさせますが、それは完全に純粋な愛だからです。
3.天主の神秘の確信者であるヨゼフ
ヤコブの子であるヨゼフは、天主の神秘についての知識の中に招き入れられるという特権を得ました。天主は彼に、ファラオの夢を理解する力を与えられました。天主はヨゼフに、将来のこと、つまり、7年間の豊作と7年間のひどい飢饉が到来することをお見せになりました。
ダヴィドの子である聖ヨゼフは、さらに偉大な天主の神秘についての知識の中に招き入れられました。聖ヨゼフは、ご托身の神秘の啓示、すなわち、聖霊の御働きによって童貞聖マリアのご胎内で人となられた御子なる天主の神秘の啓示を、真っ先に受けた人でした。マリアを除けば誰よりも、彼はこの神秘を深く理解する力を与えられました。そして、聖三位一体の神秘、ご托身の神秘、贖いの神秘は密接に関連しているため、聖ヨゼフは、聖三位一体の神秘と贖いの神秘についての知識に深く招き入れられました。
4.賢明な管理者である聖ヨゼフ
ヤコブの子であるヨゼフは、非常に賢明な管理者でした。彼がエジプト人ポティフアルの家と財産を管理していたとき、その家に繁栄と豊かさが流れ込みました。彼がファラオの国を管理していて、ひどい飢饉のときに、「彼は、エジプト人とその隣人たちの必需品を非常に賢明に提供したため、王は、彼を世界の救い主と呼ぶようにと定めた」(レオ十三世)。ですから、王は民に対して、必要とするものを受け取るために「ヨゼフのところに行け」と言いました。
聖ヨゼフは、ヤコブの子であるヨゼフよりもさらに賢明で、さらに力ある管理者でした。教皇レオ十三世の言葉に耳を傾けてみましょう。「聖ヨゼフは聖家族の守護者であり、管理者であり、正当で自然な擁護者であった…。彼は、自分の浄配と天主なる御子を、家長としての愛と日々の配慮をもって、保護することに専念した。彼は、二人の衣食に必要なものを、きちんと自分の仕事によって得た。王のねたみで脅かされる幼子を、避難所を提供することで死から守った。旅のときの不便さや、エジプトに逃れた際の苦しみの中でも、彼は常に、聖母とイエズスの伴侶であり、助け手であり、支え手であった」。聖ヨゼフは、キリストの神秘体、すなわちカトリック教会に対して、同じ父としての配慮をもって、非常に賢明な管理をし続けています。また、天主は私たちに対しても、エジプト人に対するファラオのように、私たちが必要とするものをヨゼフから受け取るために、「ヨゼフのところに行け」と言っておられるのです。
5.パンを与える者である聖ヨゼフ
ヤコブの子であるヨゼフは、エジプト人にパンを与える者でした。大飢饉の時代に、飢えたエジプト人が食べ物を求めて彼のところに来たとき、彼は、賢明にも自分の倉庫に蓄えておいた小麦を、彼らに与えました。しかし、それだけではありませんでした。ヨゼフは、彼らにパンを与える際、その引き換えに、彼らの土地をすべて王に明け渡させたのです。こうして、ヨゼフのおかげで、ファラオはエジプト全土の所有者となり、エジプト人はすべてファラオのしもべとなりました。
ダヴィドの子である聖ヨゼフは、それ以上のことをしています。聖ヨゼフは30年の間、天から下ったパンである私たちの主イエズス・キリストの守護者でした。彼は、永遠の救いのためにイエズスを人間に与える時まで、イエズスを大切に守り、保護しました。聖ヨゼフの栄光は、私たちにイエズスを与え、私たちに、自分自身と持っているすべてのものを、イエズスのために捧げるようにさせることです。しかし、イエズスは、マリアを通してのみ私たちのところに来られ、マリアを通してでなければ、私たちから何も受けようとはされませんから、聖ヨゼフの栄光は、私たちをマリアに導くことなのです。皆さんはイエズスをお愛ししたいですか? では、マリアのところへ行ってください。マリアをお愛ししたいですか? では、ヨゼフのところへ行ってください。イエズス・マリア・ヨゼフ、このお三方を切り離すことはできないのです。
結論
親愛なる信者の皆さん、最後に、フランシスコ会士、カザーレのウベルティーノの、素朴で美しい祈りを引用します。彼は14世紀の初めの、聖ヨゼフの最初の偉大な信奉者の一人でした。
「幸いなるヨゼフよ、われらを思い出し給え、また、御身の祈りの取りなしによりて、天のパンを常にわれらに与え給え。かたじけなくも、御身の浄配なる童貞聖マリアをして、われらを好ましく思わしめ給い、われらふさわしくなき者なれど、聖母がわれらを最愛の子として養子とされんことを、聖母に取りなし給え」。アーメン。