モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

サルビア・ムエレリ(Royal purple sage)の花 と 出自の疑問

2009-05-13 07:30:01 | セージ&サルビア
(写真)サルビアムエレリの花


「ムエレリ」は、朝陽・夕陽に映え、その名のごとく“ロイヤルパープル”に輝く。
陽に当たると赤味が入ったパープルとなり、かげると青が強まるパープルとなる。

花のサイズは小さく1.5㎝程度でチェリーセージの小型版のようでもあり、明るい緑色の小さな葉とついになり、夏場は一休みするが5月から秋まで楽しめる。 変色した枯れ葉をつまんでやるとセージ特有の薬臭いにおいが手にうつり、ちょっとした気分転換をしてくれる。

この「サルビア・ムエレリ」は、「ロイヤルパープル・セージ」「ムエレリ・セージ」「ロイヤルパープル・オウタムセージ」そして「パープルサルビア・グレッギー」などと呼ばれていて、おやと思わざるを得ない。とくに、最後の二つは三種あるチェリーセージの呼び方に近い。

           

サルビア・ムエレリの歴史とその出自の疑問
メキシコ原産のサルビア・ムエレリ。
米国との国境近くにあるメキシコ・ヌエボ・リオン(Nuevo Leon)の山中で1938年に発見され、学名にSalvia muelleri Eplingというように、この時代のアメリカ大陸でのサルビア属の権威でUCLAの植物学教授 エプリング(Epling, Carl Clawson 1894-1968)が命名する。
発見し採取した人物は確認することが出来なかった。

さらに不思議なことがおきている。ムエレリの発見以降、その後誰も見たものがいないし生息地の報告もないという。
『The New Book of SALVIA』の著者Betsy Clebschによれば、「1987年以前には育苗園や植物園でも見かけたことがない。しかし、ロイヤルパープル・セージは良く知られている。サルビア・ムエレリは本当にあるのだろうか?」と疑問を提示していたが、出版直前であり締め切りまでにわからなかったようだ。

確かに、サルビア・ムエレリという学名は、世界の主要な品種データベースに詳しい情報が載っていない。

推測ではいくつかの説がある。
1.S.ムエレリは、S.グレッギー(Salvia greggii)とS.セルピリフォリア(Salvia serpyllifolia)の交雑種という説
・ムエレリの新種として登録されているのはこの1品種だけで、S.セルピリフォリアは、1878年にメキシコ、サン・ルイス・ポトシ(San Luis Potosí)の1850-2460 mの山中でS.ミクロフィラを発見したパリーとパルマによって同じ時期場所で発見採取された。
・当初は「パープルのミクロフィラ」と思われていたが、1900年に別種として米国の植物学者フェルナルド(Fernald, Merritt Lyndon 1873-1950)によってクリーピングタイム(Thymus serpyllum)に似た葉をしているのでserpyllifoliaと命名された。
・そして育苗園では1990年頃に種から栽培されるようになったというが、パリー達に発見されてから大分時間がたっている
(このタネを採取したのは、Southwestern Nativ SeedsのSallyとTim Walkerといわれている。)

2.S.ムエレリは、S.グレッギー(Salvia greggii)とジャーマンダーセージとして知られているS.カマエドリオイデス(Salvia chamaedryoides)の交雑種という説
・ムエレリの命名者Eplingの説といわれる。
・ジャーマンダーセージ(Salvia chamaedryoides)も、1878年にメキシコ、サン・ルイス・ポトシ(San Luis Potosí)の山中でパリーとパルマによって発見採取された。

3.S.マセラリア(Salvia macellaria)と同じという説
・さらにS.マセラリアはS.ミクロフィラと同じという可能性もある。

以上三つの説の共通していることは、米国に接するメキシコ北東部のあたりで、S.ミクロフィラ、S.セルピリフォリア、ジャーマンダーセージ(後日掲載予定)が自生し、S.グレッギーとS.ミクロフィラの交雑からS.ヤメンシスが誕生したように交雑していたのかもわからない。しかもこれらを発見採取したのはパリーとパルマだった。

まだムエレリとの関係は良くわからないが、「パープルのミクロフィラ」といってもおかしくないほどいわゆるチェリーセージの仲間というスタイルを持っている。

      サルビアの宝庫メキシコ、その北東部San Luis Potosí(緑の部分)
          

学名にこだわるわけ
ちょっと前までは学名などどうでも良く、現実に美しい花を咲かせ元気でいるので問題はないと思っていた。しかし、一つの品種に一つの名前があるメリットは、共通に話せる前提であり、トラブル、カッティングなど未体験のことをする場合に間違いを防げる。日向で育てるのがいいか、水をやってはいけないのか、肥料は、病害虫はなど品種が異なると対応も異なる。
ということで学名は重要な世界での共通語となる。それに、種を発見したドラマが付きまとうので歴史ロマンが楽しめる。

命名者エプリング(Epling, Carl Clawson 1894-1968)
エプリングも、UCLAの准教授の時に1933年、1035年とメキシコで植物探索の旅行をしていて、いくつか新発見もある。

彼は、100以上の科学的な業績を残しているが、その中で著名なのは、覚醒効果があるサルビア・ディビィノラム(Salvia Divinorum)の研究である。
メキシコの原住民が神との交信でタバコを使っていたが、サルビア・ディビィノラムの葉もシャーマンによって使われていたという。

古来より薬草として珍重されてきたハーブだが、シャーマンのような薬草使用に関する専門家が存在しなくなったこともあり、注意しなければならないものがある。

(写真)サルビア・ムエレリの立ち姿
      

サルビア・ムエレリ(Salvia muelleri)
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある多年草。
・学名はSalvia muelleri Epling。英名はロイヤルパープルセージ(Royal purple sage),ムエレリセージ( Mueller's sage)。
・他には、purple Salvia greggii(パープル色のグレッギー)、Royal Purple Autumn Sage(ロイヤルパープル色のオウタムセージ(=チェリーセージ))。
・原産地はメキシコ、ヌエボ・リオン(Nuevo Leon,)
・半日陰でも育つ
・花の時期は長く、5月~11月。
・鮮やかな紫色の花で、チェリーセージに形態が似る。
・草丈は30~70㎝程度で横に広がる。

1938年 Epling, Carl Clawson (1894-1968)が命名。

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2 コメント

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学名も美しさを思うのも共通語 (花ひとひら)
2009-05-14 15:52:27
綺麗な色ですね。サルビアの数々の色を教えてもらい、サルビアの不思議さに入っています。絵の具箱の色、すべてがあるのでしょうか。
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花ひとひらさん (tetsuo)
2009-05-15 19:23:08
このパープルはロイヤルがつくだけあってなかなかいいですよね。
さすがに緑、黒はありませんが後はほぼあるかと思います。
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