モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

サルビア・リラータ‘パープルボルケーノ’と リンネの使徒

2009-05-02 08:43:36 | セージ&サルビア
(写真)  サルビア・リラータ、パープルボルケーノの立ち姿
        

花が咲いてみたら結構美人系かなと思ってしまった。

冬場は、地面にへばりつく赤紫の葉が光・重力とは無縁に秩序無く伸びていた。
それがいまは直立する茎をサポートする土台のようにバランスよく広がっている。

サルビア・リラータの園芸品種‘パープルボルケーノ’。
‘Volcano’は、噴火口とか火山という意味なので、なるほどというネーミングになっている。
親のS.リラータは、北米東部からテキサスにかけての日当たりの良い森林、野原や道端に咲いている。生命力にあふれ耐寒性・対暑性に強く半日陰でも育つというので、コンテナガーデンの寄せ植えの彩としても貴重な存在となる。緑の中に色違いがあるのは深みをつける。

4月末になると30cmくらいに直立した茎の頭部に、ピンクが少し入った白色の上品な小花が咲く。なかなかスリムでパワフルな感がある美人系と思ってしまった。これを一目ぼれというのだろうか?

(写真) サルビア・リラータ、パープルボルケーノの花
        

原種の発見者ピーター・カールと北米のプラントハンター
この植物の原種、「サルビア・リラータ」を発見し採取したのは英語表記ではカール(Kalm, Pehr 1716-1779)
スウェーデン、ウプサラ大学でリンネに学び、1748-1751年に北アメリカの植物相探検をしたリンネの偉大な使徒・弟子でもある。ツンベルクが日本に来たのは1775年なのでリンネの使徒としてはツンベルクの一世代先輩に当たる。

スウェーデン王立科学アカデミー及びリンネが派遣したカールの北米探検の目的は、スウェーデンの絹織物工業を振興するために北国でも育つ耐寒性の強い桑の木などの有用植物の採取が目的だったが、リンネの使徒として北米の植物をリサーチしてその体系を完成させることもあった。彼は、90種を採取しそのうち60種は新種であり、その中にめずらしいサルビアがあった。

1753年にリンネがこのサルビアに「サルビア・リラータ」と命名したが、この植物のコレクターがカールだとはなかなかわからなかった。
北米でカールが歩いたところは、フィラデルフィアに到着し、カナダを探索するように指示されているので、ニューフランス(現在のニューヨーク州のクラウンポイント辺り)まで移動し、この砦周辺で植物を採取した後にモントリオールに移動した。それからケベックに行き1750年3月にナイアガラ滝の周辺に探索に出かけた。

今ではナイアガラ滝は観光地として知られているが、このナイアガラの滝は彼が発見した。また、sugar maple(カエデ), walnuts(クルミ)など貴重な植物も採取した。

1750年頃のアメリカの奥地は未開拓そのもので、チェリーセージ、サルビアグレッギーの発見者グレッグが西海岸カリフォルニアに探検をし、太平洋に至るルートを開拓したのはちょうど100年後となる。

帰国後にこれらの経験を書いた旅行記「En Resa til Norra America」 (Stockholm, 1753–1761出版)は、英語・フランス語・ドイツ語・オランダ語でも訳され1770年頃に出版されて、北アメリカの地理・政治・経済・文化・風習・植物相などが広く知られるようになった。

この本は北アメリカの植民地の生活を知る重要な情報となり、特に、植民地を持つフランスを刺激し、植民地経営、植民地の資源探索などを考え直す貴重な情報になったという。

フランスのプラントハンター、アンドレー・ミッショー(Michaux, André 1746-1803)が北米探索を命じられてニューヨークに到着したのが1785年11月であり、

イギリスのプラントハンターフランシス・マッソンがニューヨークに到着したのが1797年12月で、この二つの点が線になって結びつくようになって来た。

フランス、英国のプラントハンターをつないだのは「カール、ピーター」の著作物で、フランス・イギリスの国策に則った植民地の資源探索だったということが新たに見えてきた。
いわば二人とも、国策を遂行した駒だったということが浮彫りになり、それに命をとられてしまった結果になってしまった。

しかし、リンネは植物資源小国のスウェーデンにあって、国策に乗りながら世界の植物の体系を構築するためにサイエンスを追求していった。この姿勢は駒になった使徒をも含めて驚きでもある。しかも、カール、ツンベルクともプラントハンティングの後は母国に戻り植物学の教授としてサイエンスに貢献し寿命を全うしている。

階級社会の下層から脱出する手段となったプラントハンター、誰でもがなれるわけではなく植物の知識と育成のプロでありかつ未開拓地で生きていけるタフな精神と生存のスキルを持っていないとなれそうもない。現代なら宇宙飛行士に匹敵するのだろうか?

フロンティアを求めたプラントハンターは、国策の駒であろうが無かろうがフロンティアで生涯を終え、夢を実現したことに満足したと思うがいかがだろうか?

(写真) ロゼット状の葉
          

サルビア・リラータ、パープルボルケーノ(Salvia lyrata 'Purple Volcano')
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある多年草
・学名は、Salvia lyrata 'Purple Volcano'。英名は、リラのように見える葉を持つのでリラリーフセージ(Lyreleaf sage)。
・原産地はアメリカ東部、コネチカットからミズリーそしてフロリダ東部・テキサスの開けた森林・野原・道端に自生する。
・特色のある姿であり、根元から濃い赤紫の葉が分岐するロゼット状で、この中心から30cm程度の茎が直立する。
・茎の頭部に美しい白い花をつけ、草丈全体として円錐形を形作る。
・開花期は4月末から6月。
・コンテナガーデンに適した植物。カラフルな色の組み合わせが楽しめる。
・日差しの明るいところ、半日陰でも栽培可能。
・こぼれ種で増えるほど繁殖力が強い。


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2 コメント

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やはり原種は (きよみどす)
2009-05-06 14:41:53
原種は思い切り元気ですね|。
こぼれだねで増えてくれるなんて!!
感謝ですよねぇ。
きよみさん (tetsuo)
2009-05-06 22:54:07
やはり原酒は美味しいですよ。割っても飲めますので。
原種も同じですかね?

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