モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

No3:マヤ・アステカ文明をささえたトウモロコシ、その1

2011-10-04 17:31:40 | 栽培植物の起源と伝播
栽培植物の起源と伝播 No3

アステカの四大食糧
スペイン人が侵略する以前のアステカには、食糧となる重要な栽培植物があった。
スペイン人が記述していた重要な食物として、トウモロコシ(maize or corn)豆(beans)チア(Chia)アマランス(amaranth)をアステカの四大食糧としてあげている。
これらは何れもメキシコ及びその周辺が原産地で、アマランスを除き世界に普及した植物だ。そのほかにも、唐辛子、カボチャ、トマト、カカオ、ピーマン、ズッキーニそしてタバコなど我々の食卓・嗜好に欠かせないものが多い。

ここにあげたものは、コロンブス以降にメキシコ・中南米からヨーロッパへ、そして日本へと伝播・普及していくことになる。
いまでは、あまりにも身近になりすぎ気にも留めない存在となっているが、美味しくいただくために遠い昔に戻ってみることにする。

世界の三大穀物
ちなみに、世界の三大穀物はすべてイネ科の植物で、小麦・米・トウモロコシが世界の三大穀物といわれている。トウモロコシもイネ科だったのですね。

この三大穀物の原産地を見ると、まるで神の見えざる手による配置がなされたかのように見事に分布している。
小麦は、中央アジアのコーカサス地方から西アジアのイラン周辺が原産地と考えられていて、1 粒系コムギの栽培は1万5千年前頃に始まりヨーロッパに入ってきた。
一方、米つまりイネは、中国・雲南省から、ラオス、ミャンマーと国境を接する亜熱帯気候のかなり広範囲な地域が原産地と言われ、その栽培は1万年前頃に始まりアジアに広まる。
トウモロコシについてはこれから検証していくが、原産地はメキシコ周辺といわれ、ベーリング海峡を渡って南下してきたモンゴロイドのために用意されていたのだろうか?
紀元前5000年頃には南北アメリカで栽培され、マヤ文明、アステカ文明を支えた食糧となったが、トウモロコシだけはその祖先がよくわからない。
この謎を解こうとしたのが米国の考古学者マクネイシ(MacNeish, Richard Stockton 1918 – 2001)だった。

メキシコの古代遺跡発掘のリーダー、マクネイシ
マクネイシ(MacNeish, Richard Stockton 1918 – 2001)は、ニューヨークで生まれ12歳のとき学校の授業でのマヤ人のことをレポートしたときから考古学に興味を持ったというから若くして将来なすべきことを見つけた。

1949年、彼が31歳の時にシカゴ大学から博士号を取得し、この年にメキシコ北東部のSierra de Tamaulipasの洞窟で相当に古い原始的なトウモロコシの穂軸を発見した。これが彼の生涯の研究テーマを決めることになり、アメリカ大陸での農耕の起源と栽培植物としてのトウモロコシの原種探索を追い求めることになった。

ところで、Sierra de Tamaulipas洞窟で発見したトウモロコシは、紀元前2500年頃のものであり、同じ頃にニューメキシコのBat 洞窟で発見されたトウモロコシと同じ年代だった。
マクネイシは、トウモロコシの祖先はもっと南から来たのではないかと推理し、メキシコとペルーの間にあるのではないかと思った。
乾燥した洞窟をホンジュラス、グアテマラで探したが見つからなかったので、Tamaulipas洞窟より南にあるメキシコに絞り込んで洞窟を探した。

(写真)テワカンバレー

(出典)Flickriver

1961年夏からはメキシコシティの南東部にあるテワカンバレーの発掘に集中し、この一帯で人間が住んでいた500の洞穴と屋外の居住区を確認し、植物の痕跡と生活に使った道具など100,000点以上も発掘した。
その中には、「最も古いトウモロコシ、最も古いスカッシュとヒョウタン、最も古いトウガラシと豆、最も古いトマトとアボカド、最も古いコットン、最も古い飼いならされた犬と七面鳥、最も古いメキシコのミツバチ」の証拠を見つけた。

数多くの洞窟の中でも重要な発見がされたコスカトラン洞窟(Coxcatlan Cave)は、240㎡の広さに1万年前の人間の居住した炉の痕跡があり、堆積した土壌から8千年前(紀元前5960年頃)の栽培された植物(トウモロコシ、ヒョウタン、スカッシュ、豆)の痕跡が見つけられた。

(写真)Coxcatlan Cave

(出典)University of Michigan

トウモロコシは紀元前5960年頃コスカトラン洞窟付近で栽培が始っていたことになり、
マクネイシは、メキシコからペルーの間にトウモロコシの起源があるという彼の仮説の立証に近づいていたことになる。

トウモロコシの祖先とその原産地は依然として諸説がありよくわかっていないところがあるので、次回その謎解きをしてみよう。

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