彦四郎の中国生活

中国滞在記

習近平・中国国家主席と閩江大学

2017-08-28 10:18:31 | 滞在記

 今年の五月中旬のころ、閩江大学の第三食堂から研究室のある福万楼の建物に戻る途中、たまたまある建物に立ち寄ってみた。その建物の一階エントランスには、閩江大学に関する歴史的紹介とともに、習近平国家主席と閩江大学との関連のことが紹介された展示があったて。習近平国家主席は、1990年代に この大学の学長(※中国では「校長」という)をしていた時期があったからだ。そこに掲示されている当時の習氏の写真は40代半ばくらいである。そのころ習氏は「福建省福州市の党委員会書記(福州市長より上位)―福州市のトップ」の職務にあり、大学の学長を兼務していたこととになっていた。

 閩江大学は、1958年創立の「福州師範大学」と1984年創立の「閩江職業大学」が合併して、2002年に「閩江大学」となった大学である。そして1990年代の数年間、習氏が大学の前身である「閩江職業大学」の学長をしていた時期があったと記されている。

 当時の学生の大学卒業の証明書には習氏の直筆のサインなども記されている。また、大学創立50周年の2008年には、「祝賀メッセージ」なども習氏から送られているので、これらのものが展示されていた。この閩江大学は、来年の2018年9月には、福建省内にある92の大学中、10番目の「省重点大学」となる可能性が現在のところ高い。これにともなう大学の新学部増設や大学院教育の拡充などが急ピッチで進められている。

 さて、現在の世界情勢のなか、各国リーダーの中で 将来にわたり最も影響力が大きいと思われる習近平氏。「中国の夢」を国家スローガンとして「一帯一路」政策など、世界の頂点に立つ人といっても過言ではない地位と実力をもっている。今年の秋(11月ころ)に控えた「中国共産党第19回党大会」で、新しいチャイナセブン(最高指導部の政治局常務委員7名)が選出される予定だが、その動向に世界中の関心が高まってきている。

  習近平国家主席は、1953年6月生まれで、現在満64才。父は習仲勲(元・国務院副総理)。中国共産党の大物政治家でもあった人だ。父は文化大革命時期に紅衛兵などから批判を受け、このためもあり、息子の習近平氏も1969年の15才から22才までの7年間あまり、陝西省延安の山村で「下放」生活を送ることとなった。兄弟姉妹は3人で、姉が2人と弟が1人。1974年に共産党に入党が認められ、文革がほぼ終息を迎えた時期の1975年に名門「清華大学」の化学工程学部に入学、79年に卒業している。その後、国務院弁公室庁及び中央軍事委員会弁公庁の秘書という地位の仕事についた。その頃(1980年代初頭)、一度目の結婚をしている。しかし、この最初の結婚相手の「柯(か)霊霊(玲玲とも)」(習氏のおさななじみで、3才年上)さんとの結婚生活は、将来生活に対する意見の食い違いから3年余りで離婚に至ったようだ。

 その後、習氏は中国福建省厦門(アモイ)市の副市長となる。この頃、友人の紹介で知り合ったのが現在の夫人となる「彭麗媛(ほう・れいえん)」さんだった。彭さんは「軍営の歌姫」として全国的に有名になりかけたころだった。そして、習氏の家族などの反対はあったが、1988年に結婚。彼女は初婚であった。この彭麗媛さんは、中国山東省の農家の娘さんで、15才の時に「山東芸術学校」に入学、20才の時に「山東テレビ局」の推薦で「全国歌謡曲コンクール」に出場し入選。その後、中国人民解放軍に所属しながら「中国音楽学院(大学)」に入学し歌謡の才を磨いた。中国の歌姫と呼ばれた人気絶大な歌手となっていく。軍総政治部の「歌舞団」に属し、後に 女性では唯一の「少将」の位も持つ女性ともなった。日本でいうところの歌姫「美空ひばり」と「島倉千代子」を足して2倍以上にしたよりも もっと大きいような存在感を中国ではもつ女性であり、現在では「中国の母」とも呼称される。

 習氏はその後、2000年に「福建省省長」、2002年に浙江省党委員会書記(浙江省トップ)、2007年に上海市党委員会書記(上海市トップ)、2008年にチャイナナイン(常務委員会常任委員)となり、2012年に中国のトップ(中国共産党総書記・国家主席)に選出され現在に至っている。また、1998年から2002年に「清華大学大学院の人文社会科学院」に籍をおき法学博士号を取得してもいる。習近平氏の趣味は、サッカーと囲碁であり、酒に強い酒豪ともされている。サッカーは実際にプレーするのも好きなようだ。

 習近平氏が国家主席となった2012年秋の翌年以降、中国のカレンダーには「習近平国家主席と夫人」が並んだものがいろいろと販売されている。2人の間には1992年に娘(習明澤)さんが誕生した。彼女はその後、浙江外国語大学卒業後にアメリカのハーバード大学に留学し卒業している。現在は中国に在住していて25才くらいかと思う。ハーバート大学の卒業式の時の写真があるが、父親の習氏によく似た顔立ちである。習近平氏の兄弟姉妹は、二人の姉と一人の弟があるが、三人ともに現在では外国(カナダ・オーストラリアなど)の国籍をとり中国では生活をしていないようだ。このため、いろいな憶測が飛び交ってもいる。最初の結婚相手である柯さんは、イギリスのロンドンにて生活をしているといわれている。

 中国における政権の交代ということは、すざましいまでの権力闘争があり、日本で考える以上に粛清や失脚といったことに伴う一族郎党・家族の生存にまで及ぶ影響は計り知れない大きいものがあるといわれている。このためもあってか、中国の今日までの指導層の親族が、外国籍をとって外国で生活している例は少なくないようだ。2017年秋、どのようなメンバーが新指導部ら選出されるのか、世界中が注目している。今後の日本の政治・経済・外交などにも とても大きな影響がある。

 今秋にせまった「中国共産党第19回大会」で、習近平氏が「党総書記・国家主席」に選出されるのは確実だ。主席としての2期目に入り、中国という国のリーダーとしてはとても優れた能力をもつ習氏だが、この国のトップをはるというのは、日本の首相などと違って 数倍もの かなり総合的に突出した「優れた処世・対人能力」「課題追行能力」「分析能力」などが必要ともされるようだ。「14億分の1の男」というより「14億人のトップ能力の男」というほうが当てはまるだろう。その存在は、中国国民にとっても、中国に住む私にとっても「驚異」の存在でもあり、違う意味での「きょうい」の存在でもある。(※「習大大(シーダーダー)」とは、習近平氏に対して中国国民が親しみをこめて言う時の呼び方で、「中国のお父さん」というような意味がある。)

 

 

 

 

 

 

 


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