浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

サンサーンスが弾く自作「アフリカ幻想曲」作品89

2007年11月09日 | 自作自演
サンサーンスがワーグナーの楽劇の総譜を初見で洋琴で弾き、リストや作者自身を大変驚かせたといふ逸話は有名であるが、自作の「アフリカ幻想曲」のこの演奏でも、洋琴をオルガンかオーケストラのやうに鳴り響かせてゐる様子が聴き取れる。

僅か2分強のレコヲドだが、クロマティックな冒頭部の怪しげな雰囲気に始まり、超絶技巧の連続とスケールの大きな管弦楽的な演奏が続く。このレコヲドの2分だけ聴いても、サンサーンスの洋琴弾きとしての実力や彼の作曲の工程などがなんとなく理解できるやうな気がする。

アルフレッド・コルトーに向かって、「その程度の技術でピアニストになれるのか」と酷評した話も有名で、レオポルド・ゴドフスキのレベルで初めて「完璧」といふ評価になる。これは、サンサーンスの洋琴演奏を聴けば納得がいく。

この天才の頭脳から次々にメロディーが浮かび、それがこの達者な指から洋琴といふ媒体を通してあふれ出る様子が記録されてゐる。この作品を発表してから30年後、アフリカ好きだったサンサーンスは80歳を越えてもアフリカ大陸に旅に出て、そしてアルジェリアで最期を迎えたのだった。

盤は、英國Appian P&R社によるG&T盤の復刻CD APR5533。


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