浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ジャック・ティボー HMVレコーディング

2006年08月31日 | 提琴弾き
ジャック・ティーボーは電気吹き込み前に多くの録音を残しているが、バッハの協奏曲を聴くと悲しくなる。いくら録音の技術的な問題で少人数での伴奏を強いられたにせよ、オルトマン指揮によるスタジオオケの演奏はひどすぎる。

おかげで、ティボーが理性的に聴こえてしまう。洋琴伴奏の方がよほどましだったろう。よくぞ、こんなひどいレコヲドを世に出したものだ。ここまで伴奏に邪魔をされれば、我慢の限界を超えてしまう。この苦痛を乗り越えるとあとの曲は洋琴伴奏なので、ゆっくりとティボーの美しい音色を楽しめる。ベートーヴェンのロマンスは洋琴伴奏で大正解だ。

何と言っても極めつけはクライスラー編曲によるリムスキー=コルサコフだ。ゴリウォークのケークウォークでのトリスタンのパロディはなんとも卑猥だし、亜麻色の髪の乙女は、どうしたことか興奮気味である。グラナドスも細かいことを気にせずに聴けばムードは満点だ。

ティボーは大曲よりは、こういったアレンジものの小品の方が相性がいいやうに思はれる。他の大提琴家も洋琴家も使ったことのない不思議で魅力的な表現を用いるティボーの演奏は、気分の荒れた日に聴くと何故か落ち着きを取り戻すことができる。ただし、こればかりを聴こうとは思はないが・・・。

盤は、英國Biddulph社のSP復刻CD LAB024。


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