梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

『野田歌舞伎』に参加して

2005年04月20日 | 芝居
さて、いよいよ再演となる『野田版・研辰の討たれ』。その初演(平成十二年八月)にメンバーとして加わることができたことは大変有り難いことでした。
というのも、実は私は野田さんのお芝居(夢の遊眠社やNODA・MAP)の大ファンなのです。そのことを知っていらっしゃったとある幹部俳優さんに、「今度の八月は野田さんが書くよ」と教えて頂いたときは、何がなんでも出演させて頂きたいと思いましたが、ちょうど八月は師匠梅玉のお休みの月。スケジュール的にも無理がないので、師匠にお願いして、「主なし」として八月大歌舞伎に出られることになったのです。
『研辰』の稽古は、普段の稽古場ではなく、歌舞伎座の舞台と同じ広さをもったスタジオで行われました。すでにおおまかな舞台装置も出来ており、実際の舞台を想定しながら、ほぼ本番通りの演技ができました。ここのところなど、いかにも新劇のお稽古ですね。
稽古は実に熱気を帯びた、刺激的な、そして楽しいものでした。野田さんの演出は、大勢の群集を使ってダイナミックな動きと盛り上がりを作る大胆さ、そして反対に、セリフの細かいニュアンスや、間、気持ちの動きにもこだわる繊細さがあわさっており、主役も脇役もない、役者全員が作品を輝かすために一生懸命になれる、そういう雰囲気に満ちておりました。
役者の方でもどんどんアイディアを出してゆきます。野田さんを唸らせる名案から、稽古場中の笑いをとったものの、「テーマに合わない」から切り捨てられた迷案まで。主役の方々だけではありません、我々も、どんどん提案してゆけるのです。
演技、音楽、衣裳等、すべてが一から作られてゆくという体験は、本当に面白く、得難いものでした。
結果として大好評となり、それが今回の再演につながったわけですが、今度の『研辰』も、四年前の稽古場での熱気、感動を思い出し、舞台を勤めたいと思います。