梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

女形の化粧・その弐

2005年04月04日 | 芝居
さて、その役にふさわしい顔の色を塗りますと、次は目、そして唇、最後に眉を描いてまいります。今書いた順で、どなたも描いておりますね(眉は既婚者の役の場合は描きません。結婚したら眉をそるのが、当時の風習ですね)。
目は、目尻から目の下のふちにかけてを強調するように描きます。これを「目張り」と申しますが、たいていの役では紅を、年増や婆、意地悪い役などは、紅に茶色や黒を混ぜて(茶のみ、黒のみにすることもある)、ふさわしい色みにして使います。
唇は、現代の「口紅」と同じように描きます。使う色も、「目張り」と同様です。
そして「眉」ですが、まず紅で描いてから、その上に黒で描く、ということをします。こうすると、黒の下からうっすら紅が透けて見え、色気、やわらかみが出るのです。
また眉の形も、少女だったら「笹眉」といって、眉尻を丸く終わらせてあどけなさをだしたり、色街の女だったら逆に眉尻を尖るように描いて、シャンとした大人の雰囲気を出すなど、それぞれの役に合わせて形はいろいろです。
この「目張り」「口紅」「眉」の描き方は、個人の顔つきの違い、好みによって百人百様です。ようは自分の目、口の形に合わせ、それをいかした描き方ができればよいわけで(もちろん役柄も考えなくてはいけませんが)、自分の顔にあった化粧法を見つけるまでが大変です。
私はたまにしか女形をしないものですから、毎日毎日「違う顔」です。