梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

大丈夫でしたか?

2005年04月11日 | 芝居
今朝がたの地震、関東では久しぶりに規模の大きいものでしたね。朝の本震はともかく、三時半頃の余震は、ちょうど「与話情浮名横櫛」の「源氏店の場」の最中。演技している俳優さんは案外気がつかないもの、気がついても動揺してはいられませんから何食わぬ顔で芝居を続けますが、客席にじっとしているお客様の方が敏感で、ザワザワとひそやかな声がおこってしまいます。
舞台にいるときに地震がおこると、何が怖いといって、天井に吊されている書割り、照明機具などが落ちてきはしないか、そればかりが気になってしまいます。頭の上でそれらの物がガチャガチャ音を立てて揺れているのを見てしまうと、早く引っ込んでしまいたい衝動にかられてしまいます。
地震といえば、私には忘れられない思い出があります。平成七年一月十七日、阪神淡路大震災です。私、中学二年生でしたが、当時は家族と共に兵庫県三田(さんだ)市に住んでおり、この地震を体験しているのです。三田市は、神戸からは離れておりましたから、震度は四か五だったのですが、未明の激震、食器が割れたり、本やビデオテープが倒れてきたり、本当にビックリしました。
偶然にも、その前日十六日が、大阪の中座(今はもうありませんね)での初春大歌舞伎で、中村鴈治郎さんの「曾根崎心中」お初役上演一千回目となる記念の日。一日地震が早かったら、公演そのものがなくなっていたかもしれません。さらに偶然ですが、私はその一千回目の舞台を観に行っていたのです!記念のカーテンコール、表彰式を拝見して、タイミングの良い観劇に、大満足に帰宅しての大地震……。
不思議な巡り合わせに、今でも感慨深いものがあります。