すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第9号 長嶋ジャパン

2004-08-06 11:45:05 | Tokyo-k Report
 アテネ五輪へ、日本代表の選手たちが次々と出発している。みんな頑張って、これまで積んだ練習の結果を思い切り発揮して欲しいと応援する気持ちでいっぱいだが、どうも違和感が生じるのは野球だ。ワイドショー的には野球日本代表とは呼ばず、長嶋ジャパンというらしいが、選手たちは「監督のために」とか「監督のユニホームをベンチに掲げて」とか言って、悲壮感漂う硬い表情で出発して行った。そんな場面を繰り返し見せられて、なんだか背中がモゾモゾするような、ああ、また日本の嫌らしいところが露出した――と、ザラザラした感情になってしまうのは、私だけだろうか。

 長嶋監督が不運にも病に倒れ、懸命にリハビリを続けていること、また長嶋氏の存在感がなければ、これだけのプロ選手を集めた全日本チームの結成は難しかったであろうことなど、状況は一応理解しているつもりだし、長嶋監督には一日も早く回復していただきたい。しかしそれにしても、この「お涙ちょうだい仕立て」は何だろう。震える手なのか、筆跡の乱れた「3」と書かれた旗を麗々しく息子が掲げ、コーチ以下選手たちは最敬礼して忠誠を誓う部下たちのようだ。

 卑しくもスポーツの世界だ、チームは全力を出してプレーし、勝利を目指す、それだけのことだ。そこに変な情緒を持ち込まないで欲しい。選手たち自身、きっと違和感を感じていることだろう。「頑張ってきます。楽しんできます。長嶋さん? 早く元気になって欲しいですね」というくらいが本音ではないか。しかしそれを外には現しにくい空気が出来上がっているのだろう。

 スポーツというより、体育会系といった方がこの際はふさわしいかもしれないが、日本のこの世界にはどうも湿った感情を好む気風が吹っ切れないで残っているようだ。あたかもそうした「思い」がチームの団結心を強め、最後まで根性を振り絞ることにつながる――と信じているような。そしてスポーツジャーナリズム、この際は野球ジャーナリズムがその風潮に無批判に乗っかり、煽ぐ(その方が売れるからか)。

 特に、野球にこの傾向が顕著なように思う。元凶は「汗と涙の甲子園」というアレだろう。アレも新聞社が新聞を売るために作ったコピーだった。プロ野球の球団合併やリーグ統合話も、根っこは日本野球のこうした湿った風土から来ているのではないだろうか。技のぶつかり合いを見せる乾いた世界であるはずのスポーツを、情緒という湿ったトッピングでくるんでしまい、奇妙な感情の海に溺れる。ああ、気持ち悪い。

 それにしてもオリンピックは、プロ選手の参加を認めて堕落したね。選手に責任があるわけではない。オリンピックを頂点にしたスポーツ産業人たちの、ぼろ儲けの場なんだものね。「オリンピック? あんなアマのお祭り、私は関係ないね」と、プロにはこんな言葉を吐いて欲しいものだ。
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