すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第880号 ポナペの青い海

2011-04-17 11:47:38 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】琵琶湖畔の街から便りが届いた。教会牧師を退任したとの挨拶状だった。古希を過ぎて体調異変に襲われたとある。そうしたことで一線を退かれたのだろう。健康状態が気がかりだが、新しい住所は湖西の県営住宅のようである。奥様と二人、静かな湖西の地で、静かな余生をお過ごしになることだろう。

およそ宗教とは無縁の私が牧師さんと知り合うことになったのは、ミクロネシア連邦のポナペ(現ポンペイ島)を訪れた25年ほど昔のこと。島を一周(琵琶湖の半分程度の面積だから、2時間ほどで1周できたのではなかったか)しようとレンタカーを走らせていて、木造2階建ての学校を見つけて停まったところ、出会った方が日本人牧師さんだったのだ。

小柄な、静かな雰囲気の方で、島の子供たちのために教団から派遣され、高校を建設しているということだった。全寮制の学校運営費の足しにするためだと、限られた土地を切り拓いて作付けしたショウガ畑を案内して下さった。熱帯で作物を育てる難しさを、淡々と話しておられた。

日本での勤務になって、大阪の福祉施設で働いておられる際に再会することができた。牧師さんの出身は大阪で、戦災孤児だった幼いころの大阪の様子を興味深く聞いた。その施設では奥様と二人、後輩となる子供たちを大勢見守っておられるようだった。

その後、琵琶湖畔の町の教会に赴任され、長く布教に努められたが、その間もポナペに渡り、学校の拡充にあたっておられたようだ。ポナペのワークキャンプは39回に及んだという。いずれポナペでお会いする機会を持ちたいと考えていたのだけれど、それは叶わず、今度は湖西を訪ねることになりそうだ。

全国を、くまなくとはいかないまでも結構歩いて来た私の印象では、高齢者にとって暮らしよさそうな土地の筆頭は琵琶湖畔だと思った。なかでも湖西地域は、いささか日本海側に似た気候地帯のようで、そのことが「ことのほか静寂な土地だ」と感じられたのだった。

そうしたことを土地の人に話していたら、「そういえば先だって、外国生活から帰られたご夫婦が、老後をどこで暮らそうかとあちらこちらを見て回って、湖西の高島市に落ち着いた、という方がおられました」という話になったことがあった。湖西の魅力を感じ取るのは、私だけではないということだ。

牧師さんご夫妻も、そうした理由で湖西を選ばれたのかどうかは知らないが、信仰に生きた人が老いて過ごす場所として、実にふさわしい土地を選ばれたと、勝手に考えた。そして長く人々のために尽くし、県営住宅で安息の時を迎えておられる一生が、いい人生だなあと胸にしみた。

老夫婦にはつましくとも満ち足りた、心静かな日々が続くのだろう。便りを読み終えると、ポナペの広くて青い海が思い浮かんだ。

(写真は湖北から湖西方面を望む)



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