すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1021号 ローマでスリに遭う

2011-12-30 14:22:25 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】結論から言うと被害はなかったのだけれど、あのとき私はスリ集団に囲まれていたらしい。お腹のあたりに押さえていた(つもりの)ショルダーバッグは、気がつくとフックがはずれ、ファスナーも開いていた。ローマの地下鉄での、クリスマスイブのことだ。

ローマに行くならくれぐれもスリには気をつけるようにと、たくさんの注意を受けた。スリはイタリアに限らずスペインでも横行しているらしく、ローマ入りする前のバルセロナでは、地下鉄の車内放送が日本語でも警戒を呼びかけていた。

だから私もそれなりに気を張って、パスポートやカード類はコートの内ポケットに分散して携帯するようにしていた。しかしスリが狙うのは、それでも旅の刺激に浮かれ、緊張がほどけた瞬間の旅行者なのだろう。

        

イルミネーションに飾られたコルソ通りを歩き、スペイン広場の楽団演奏を楽しんで最寄りの地下鉄駅に着いた。ホームは人でいっぱいで、隅田川花火大会の浅草雷門駅のようだった。私はイブの賑わいが心地よく、浮かれた間抜け面を晒していたに違いない。スリたちにとって格好のカモがやって来たわけである。

間もなく電車が入って来た。私も乗り込もうと人混みを離れようとするのだが、どうしたことか私の回りの人だかりが解けない。それどころか四方から異様な圧迫を感じる。おしくらまんじゅうをしたまま車内に入り、押し返しているうちにドアが閉まりかけた。

すると圧迫感はスッとほどけて、数人の男たちが閉まるドアを懸命にこじ開け、ホームを走り去って行った。ヘンな男たちだなと見送っていて、私ははっと気が付き、ショルダーを確認した。

        

外側のフックがはずれ、内部をガードするファスナーも全開状態になっていた。ただ内部の小ポケットのファスナーは閉じており、そこに入れておいた現金はそのままだった。バッグの中はカメラの交換レンズや手袋などしかなく、もしスリがまさぐったとしても、彼らにとって金目のものはなかったのだろう。私にとって現金より大切なカメラは、たまたま手に持っていた。

フックやファスナーがスリによって開けられたものか、あるいは私が閉じ忘れていただけのことなのかは判然としない。しかし周囲の乗客の視線が「あなた、あれはスリよ。やられたわね」と語っていた。自己管理のできていない他所者を観るような、同情心のない冷ややかな視線ばかりだった。

        

ローマは素晴らしく魅力的な、興味の尽きない街ではあったけれど、地下鉄の駅をはじめ街路のゴミが酷い。例えばコロッセオが、全ヨーロッパの施設で年間入場者数第1位を続けているように、ローマの観光収入は莫大な額にのぼると見受けたが、財政状態はその恩恵を吹き飛ばすほどの危機的な状況なのだろう。街の美観を維持し、犯罪を減少させて行く行政余力は失われているのかもしれない。

それと同時にイタリア人は、自己責任で生きるという気風が日本人などより遥かに強いのかもしれない。スリは犯罪であるけれど、スリに遭う者にも反省すべきところはある、ということだろうか。

        

それでは読者のみなさま、それぞれの自己責任で良い年をお迎えください。








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