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みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

実際に単行本『事故のてんまつ』を読んでみると

2021-02-24 16:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
〈『事故のてんまつ』(臼井吉見著、筑摩選書、昭和52年)〉

 さて、永江氏は、
 この筑摩書房の「初めての絶版回収事件」に関しては二つの問題点があり、それらは、「ひとつは、故人のプライバシー権に関する問題であり、出版差し止め要求で全面に出たのはこれだった。もうひとつは、差別に関わる問題だった」
            〈『筑摩書房 それからの四十年』(永江朗著、筑摩選書)同110p〉
述べていたことを先に紹介した。そこで、『事故のてんまつ』をめぐっての報告と御挨拶を読み直してみると、やはり気になるものの一つがその中の、「その内容が故川端康成氏およびその御遺族の名誉を傷つけ、プライバシーを害するもの」という言及である。
 次に、単行本『事故のてんまつ』の方を実際に読んで見ると、結構あちこちにセンセーショナルな書き方が為されていると私には思えたから、まるでこれじゃゴシップ記事ではないかという個所も少なくなかった。よって、「その内容が……その御遺族の名誉を傷つけ、プライバシーを害するもの」であると私には思えた個所も少なくなかったから、当然、「ひとりの高名な作家の内的真実とその文学の本質に迫ろうとする真摯な文学的創作である」と言われても納得できないのであった。かりに、ここは百歩譲ったとしても、川端康成本人以外の遺族や関係者のプライバシーは少なくとも尊重されねばならないはずだ。がしかし、実際に同書を読んでみた限りにおいては、残念ならそのことが十分に為されてはいないのである。
 そしてそのことは、下掲のように、「和解条項」の中に、


一、債務者臼井吉見は、その著作「事故のてんまつ」において、専ら文学的観点から孤独の作家川端康成像を描くことを意図したものであるが、右作品中の登場人物である「鹿沢縫子」の創作などについて慎重さを欠いたため、すべてが真実であるかの如き印象を与え、債権者側及びモデル側にご迷惑をお掛けしたことをお詫び致します。
            〈『筑摩書房 それからの四十年』(永江朗著、筑摩選書)同110p〉
とあるくらいだから、何をか言わんやだ。尊重するどころか、極めて残念なことになるのだが臼井はまさに「創作」した個所もあったのであった、ということをはしなくも示唆していることになる。しかも、川端康成本はさておき、臼井吉見著『事故のてんまつ』は、少なくとも遺族や関係者の名誉を傷つけ、プライバシーを害したということになる。
 返す返すも残念なことだが、こんなことが昭和52年頃に筑摩書房で起こっていたのだ。となれば、人によっては、臼井は古田晁と共に立ち上げた筑摩書房が経営危機に陥ったので、売らんがためにこんな問題作『事故のてんまつ』を書いたのではないですか、と批判したり、揶揄したりする人だって現れるかもしれないということを私は心配してしまうし、実際にそのような人たちがいたという。

 のみならず、否が応でも、あの場合にも似たようなことが起こっていたのではなかろうか、という不安に私は襲われる。

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