思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『震える牛』社会派警察小説、良い!

2021-11-16 18:22:07 | 日記
『ガラパゴス』がおもしろかったので、
さっそく前作を読みましたよ。
『震える牛』相場英雄。

警視庁捜査一課継続捜査班の自称窓際刑事・田川のオジサンが
がんばるシリーズの第1作です。

結論から言うと『ガラパゴス』の方が良かったけれど、
シリーズとして続けて読む価値ありです。
『震える牛』で「学習するメモ魔」田川刑事が誕生したからこその
進化した2作目だなって思える。

お題は、継続捜査班ということで、お宮入り直前の事件の再捜査。
今回は2年前に起きた外国人が犯人だと思われる居酒屋強盗殺人事件。

と思いきや、背景には社会的な問題が潜んでいて…。
という。おもしろいよね!

日本経済のあれこれも、わかりやすくモリモリです。
ありがたいです。
日本人のグルメ大好き!な一方での、デフレへの鈍感さ
(安い=嬉しい!で、裏を考えずに享受しちゃう感じ。
指摘されて、私も他人事じゃないなとなった)。
ガソリン高騰からのロードサイド大型SC不調という流れは、
考えたこともなかった。なるほどな〜。

第二作に比べると、ちょっとリアリティよりお話し優先かなと
思う部分もあったけれど
(加工肉会社の犯罪っぷりや“大手流通=悪”の描写が極端というか)、
やっぱりおもしろいし、ふむふむと思ってしまう。

捜査の過程でひとつひとつおもしろい事実が明かされていく感じも
テンポ良いし、社会派警察小説としてとても良い。
と私は思ったのだけど、アマゾンのレビューは全体的に厳しいな笑
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【読書メモ】2015年10月①北方謙三のハードボイルド

2021-11-15 15:17:23 | 日記
<読書メモ 2015年10月>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『擬態』北方謙三
良く考えたら御大の小説は水滸伝しか読んでなかった。
というわけで現代ハードボイルドもの。
多用される短い文で「、」でさらに短くリズムを切るのが印象的。
ウイスキーを、飲むことにした。
とかね。なんとなくハードボイルドっぽいね!
おもしろかった。

(北方謙三は『北方謙三 水滸伝』全17巻(!)を
 2008年10月から2009年始めにかけて読破。
 結構、楽しく読みました。
 というか、当時の読書量がすごいんだけど。
 しかも確実に現在の倍は働いていた。実務量も、残業量も。
 若さ、かな…。

 あ、『擬態』はね、平凡なサラリーマン40歳が
 中年特有の「なんとなく虚無感」から肉体の鍛錬を始めて
 気付いたらハードボイルドに暴力団と戦っちゃう
 北方謙三らしい「男が憧れる男の小説」です。
 いいんじゃないでしょうか。
 私的には、他の北方作品を読む前に北方水滸伝の続編である
 『楊令伝』を消化したいところです)
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『エンド・オブ・ライフ』良い本。でもギュってなる、心が。

2021-11-11 16:21:34 | 日記
『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子

<Yahoo!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞>
受賞作(2020)。
ん?
Yahoo!ニュースなの?本屋大賞じゃないの?
なにそれ?
と、まず思いましたが。
本屋大賞がノンフィクション部門を設立した際に
Yahoo!と組んだということです。

それよりはこっちの方が良いのかな?
<第52回大宅壮一ノンフィクション賞>
ノミネート作。

まあ、いずれにせよ、
ノンフィクションの話題作なのであります。

タイトル通り、命の終末期を取材した作品。
京都の在宅医療センターを基点にした
在宅での終末医療現場の取材と、
看護師であり作者の友人でありガン末期患者となってしまった
森山さんの物語でもある。

在宅医療の現場ルポ部分は、本当に様々。
それぞれの暮らしも事情も全然違うし、
誰が末期癌に襲われるかなんて全くわからない。
この事例たちからは、学ぶというよりも、知る&考えるしかない、というか。
心の柔らかい部分が、ざわつく。
身近な人の死について向き合い考えるのは、やっぱり怖い。

著者のお母さまの在宅看護事情も、色々と考えさせられる。
末期癌の「残り時間の無さ」に対して、
全身が動かせずコミュニケーションが取れないけれど
何年も生きている状態の「無期限」感。
患者である母も、介護を一手に担う父も、それぞれに辛いと思うし
著者は否定も肯定もせずにフラットに描いているけれど、
これも、学ぶことはできない。
ただ、知ってしまった以上、そういうことについて
ちゃんと考えることは必要だと思う。

心がギュってなる。
良くも悪くも。
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【読書メモ】2015年9月 ② 『判決破棄』

2021-11-10 17:40:17 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年9月 ②>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『判決破棄』マイクル・コナリー
<リンカーン弁護士>シリーズ3作目。
おもしろい。
初の検察側へ。
基本的に弁護士は有罪側の人間の弁護をするので
描ける幅が狭くなるという作者の思惑から、検察に行ってみたらしい。
そういうご都合は抜きで、リーガルサスペンスとして面白かった。
しかし訳者のセンスが微妙なのかなんなのか…
マディ「もっとるわい!」とか、ハラー「すげーーーーっ」など
セリフのチョイスが残念な感じである。
あと、ボッシュがマギーに手を出すんじゃないかとハラハラしたよ。
セーフで良かったよ。

(文句言ってんだかなんだかよくわからないメモですが
 <リンカーン弁護士>シリーズは法廷物として、
 どれもおもしろいし一気読みできる内容です。
 3冊しか読んでないけど。
 『リンカーン弁護士』
 『真鍮の評決』
 『判決破棄』
 『証言拒否』
 『罪責の神々』
 以上の5冊が邦訳されているみたいです。
 4作目5作目も読んでおこうかな…)
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【読書メモ】2015年9月 ① 『嗤う伊右衛門』

2021-11-09 17:32:05 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年9月 ①>

『嗤う伊右衛門』京極夏彦
第25回泉鏡花文学賞受賞(1997)。
京極版「四谷怪談」とのこと。
という予備知識抜きで読んだけど、
お岩さんが疱瘡で顔がただれて…あたりで、
さすがに「四谷怪談がちょっと入ってる?」とは思った。
がっつり四谷怪談だった。

又市の若かりし頃でもあるようですが、全然活躍できてないのな。
お前はなんでここにいるの?というレベルで
狂言回しになっているのかいないのか。
『巷説百物語』(西と続だけど)を先に読んでしまっていたので、
又さんに期待しすぎたのだと思う。

それはさておき、面白かった。
怪談ではなく、まことに怖いのは人の想いである、という話しですね。
文章もリズミカルで読みやすいし、厚さの割にすぐ読める。
お岩さんがさいごに伊右衛門のとこに来たときは、
どのような邂逅だったのかな、と想像すると切ない。
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