思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

スープからなんらかの事情を経てつむじ風食堂へ

2021-11-08 15:37:59 | 日記
『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読んで、
作者の吉田篤弘氏(クラフト・エヴィング商會)と
翻訳家の岸本佐知子さんが同郷だと知りました。
その流れで、岸本氏のエッセイ『なんらかの事情』が
そういや読み途中だったなと思い出したので、
この機会に読了。

本が本を呼ぶのは、良いことだ。

『なんらかの事情』は岸本氏の3冊目のエッセイ集。
妄想が妄想を呼ぶ、さすがとした言いようのない
クレイジーエッセイである。
ほんと、さすがと言うしかない。
塩辛レベルのクセの強さなので(おいしいですよ)、
数篇ずつ読むのがちょうど良いです。

久しぶりに通勤電車で読書したけど、
片道40分あるんですよね。
読みすぎちゃってもったいなかったな。

挿画はクラフト・エヴィング商會で、
どの回のイラストも、エッセイのヘンテコな内容にぴったりの
ヘンテコイラスト。
こちらもさすがである。

で、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』の
<月舟町>シリーズの一作目である
『つむじ風食堂の夜』も一気に読みました。

こちらは「雨降りの先生」と呼ばれている雑文書きの男性が主人公。
うだつのあがらない感じが、ちょっと、心配になる人です笑
スープの主人公の方が、肩の力が抜けていて良かったかな。
果物屋の青年や、つむじ風食堂のこだわり(クロケット定食)は
とても良い感じ。
三作目の『レインコートを着た犬』も読んでおこうと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『忘却についての一般論』星5つ!!

2021-11-05 18:03:57 | 日記
すごく良かった!星5つ!!
『忘却についての一般論』
ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ
木下眞穂:訳

アグアルーザはアフリカ・アンゴラ生まれの作家。
作品はポルトガル語で書いているそうです。

アンゴラ…。
って、アフリカにある国の名前なのね…。
ウサギの毛皮のことじゃないのね…。

(アンゴラウサギの毛を織ったり編んだりしたものを
「アンゴラ(モヘヤ)」という。毛皮ではない)

アンゴラは19世紀までポルトガルの植民地だった国。
1975年に独立宣言をしたあと
長い内乱状態になりますが、現在は共和国制。

この物語の主人公のルドは、
ポルトガルで生まれ育った内向的な女性。
姉の結婚に同行して、アンゴラの首都ルアンダに移住。
現地のアンゴラ人にとってルドは
豪奢なマンションの最上階に住む、他国者ですね。

1975年の内戦&姉夫婦の失踪をきっかけに、
マンション(屋上テラスに土と木がある)で
自主的ひきこもり生活に突入。
27年もの間、篭城したという物語。

とはいえ、ルドのマンション内サバイバルを綴る物語だけではない
(それもおもしろいのだけど)。
内乱のどさくさで災難に遭うポルトガル兵士、
革命側で汚れ仕事ばかりする悪党モンテ、
鳩からダイヤをもらい商売で成功する男、
失踪事件が大好きな記者、
首都に流れ着いた孤児の男の子。

いろんな人のユニークな掌編が、
モザイクのようにキラキラと綴られていて
ルドの住むマンションに収束する。

すごく魅力的で、不思議な印象を残す一冊。
これはすごい。
読んでいて、人物も文章も詩も良かった。
読後の余韻も良かった。

2013年度フェルナンド・ナモーラ文芸賞、
2017年度国際ダブリン文学賞受賞作。

と言われてもわからないけれど、
個人的に今年の星5つ本にカウントです。
おめでとう私!
(良い本に出会えると、やっぱりうれしい)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ガラパゴス』もっと評価されるべき!

2021-11-04 11:37:06 | 日記
相場英雄『ガラパゴス』
社会派警察小説と言えば良いのかな?
すごいよかった!!面白かった!!すごい!!

メモ魔で冴えない外見の田川刑事が主人公で、
地道に捜査をするのですが。
彼が聞き役というか学び役というかになって、
色々な知識を集約していくのが、すごくおもしろい。

作者が元々記者さんだそうで、
めちゃくちゃ取材もしているのでしょう、
現代日本(舞台は90年代から0年代ですが)の
様々な現象や社会問題がわかりやすく描かれています。

日本のエコカーは全然エコじゃないとか。
ハイブリッド=エコというのも間違い(知らなかった!!!)とか。
派遣業界のドブラックな仕組みや現場の悲惨な状況とか。
なんとな〜くニュースや新聞で齧って知った気になっていたけれど
まったく分かってなかったということがよく分かりました。

ルポや新書ではなく小説だということを差っ引いても、
ものすごく勉強になったし、何よりも理解しやすかった!それ大事!

ちなみにストーリーのメインは、
身元不明ファイルに紛れていた他殺事件。
被害者の「903」こと仲野くんの人柄も良くて、
読みながら「がんばれ田川のおっさん!事件を解決するんだ!」と
応援したくなる。

敵役のひとりである鳥居刑事も、良いと思う。
徳の分け方が間違っていたけれど、がんばって生きてほしい。

とにかくおもしろかった!
もっと評価されても良くないか?
山本周五郎賞の候補作って。
湊かなえとダブル受賞でいいじゃないか!

とはいえアマゾンよりも評価が厳しいブクログで
4.0超えなのは、さすがだと思う。

(余談ですけど、アマゾンの「美本でした」評価って、
 内容の評価と別枠にならないもんですかね)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【読書メモ】2015年8月 ③コナリー3冊

2021-11-02 18:18:53 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年8月 ③コナリー3冊>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。
マイクル・コナリー月間、まだ続いてたんか…!


『エコー・パーク』マイクル・コナリー
<ハリー・ボッシュ>シリーズの12作目。
あまりにも覚えてないので買って読んだ。
再読した結果、初読のときにぴんとこなかった諸々が楽しめた!
訳者は、ボッシュシリーズは単品で読んでもおもしろいと言うが、
やはりすべて通しで読んでこその面白さはある。
ボッシュの短気っぷりとか、パートナー怒らせる感じとか、
すぐ間違った人間疑って爆発するところとか笑

(13作目の『死角』を先に読んだものの
 意味わからなかったので、大人しく買って読みました)


『スケアクロウ』マイクル・コナリー
ジャック・マカヴォイが主人公の第二弾。
相変わらず暗くて女々しくてやだこの人!
この作者は悪党シリアルキラーを描写するのは向いてないんじゃないか。
ちょっとしたはずみの犯罪で、いろいろな事情が絡まって
二転三転というプロットのが面白いと思う。
あと作者によるレイチェル推し、やめてほしい。

(新聞記者ジャック・マカヴォイが主人公のシリーズ
 第一作『ザ・ポエット』はこちら
 ジャックが安定して暗くて女々しい性格です笑)


『ナイン・ドラゴンズ』マイクル・コナリー
<ハリー・ボッシュ>シリーズの14作目。
衝撃作w
ボッシュの老害っぷりが酷くなっている!
というか、周囲の人物への当たりがキツすぎない?
イグナシオは暴走するほどの性格ではなかったし、
死ななきゃならんほどでもなかったと思うけど。
あとクイック一家を喉かっさばいて殺すほどのギャングが
ボッシュの娘には何もしないのな。
ちょっとした登場人物の行動や扱いの差が気になる。
作者の性格なのか、都合なのか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【読書メモ】2015年8月 ②

2021-11-01 17:54:15 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年8月 ②>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『川の深さは』福井晴敏
江戸川乱歩賞の最終選考で落選した作品。
大沢在昌が推しまくったというのでも有名。
処女作だけど、デビュー後の作品のすべての要素が
良くも悪くも凝縮されている。
国家にもはやなんの希望も抱けない、と言いつつ
正義とはなんぞやと考える感じが、初期だからかな、
ちょっと右っぽいしくどかったかも。
でも面白かったです。
一作目でここまで書くってすごいな!!と思う。
爆発が多すぎる気がしたけど…。

(第43回江戸川乱歩賞(1997)で惜しくも落選し、
 翌年の再チャレンジで見事に江戸川乱歩賞を受賞。
受賞作の『Twelve Y. O.』が出版デビュー作となりました。
 で、『川の深さは』も2000年に遅ればせながら刊行。
 よかったね!)


『グレイヴディッガー』高野和明
12時間ほどの逃走劇なのだけど、疾走感が半端ない。
おもしろかった!
脚本家出身とのことで、映画的なシーン転換や多彩な登場人物も良かった。
八神の人物造形がとてもいいね!
最後に女神にお金借りるオチもすごくいい。
動機から犯行への飛躍はちょっと腑に落ちなかったけど、
そんなことまあいいか、と思えるエンタメ性。
墓堀人グレイヴディッガーの伝説は創作とのこと。
ちょっと信じた。良い仕掛け!

(読んだ当時のブログもあります。
 読み比べると、読書メモは読後にガーっと書いているのがわかるなあ)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする