思惟石

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深緑野分『ベルリンは晴れているか』

2021-02-14 11:55:10 | 日記
深緑野分は『戦場のコックたち』がすごく良かったので
注目していたのでした。
ようやく読めた!

前作はアメリカの若者が主人公で、
合衆国兵士として終戦間際のヨーロッパ戦線が舞台。

今作『ベルリンは晴れているか』は、
敗戦直後のベルリン。
主人公は、ナチス政権下に共産党民の父のもとで育った
17歳の少女アウグステ。

ベルリンは、ソヴィエト赤軍・アメリカ軍・イギリス軍が
それぞれ占領地域を分割して常駐している状況下。
ドイツ政府というものは存在しないなかで
ベルリン市民としては毎日が不透明というか頼りないというか、
なかなか明日が見えない状況だったと思います。

帯には「歴史ミステリー」とか書いてあるけれど、
ミステリーとしてよりも、
その歴史的状況下でのベルリン市民の暮らしが読みどころかと。

さくさく読めるストーリーでも描写でもないのだけれど
歴史的ファクトは凄くよく書き込まれていて、
読み応えがある一冊とも言える。
ものすごくたくさん取材して時間をかけて書いたのだろうと思います。

このミスで1位になるミステリかというと、そういうことじゃないし、
本屋大賞で1位になるようなエンタメかというと、
そういうことでもない。
一言で表しにくい魅力をたくさん持っているので、
これぞという賞はとっていないものの、
各所で話題にせずにはいられない作品なのかもしれません。
個人的には運営スタッフのクセが強そうな
Twitter文学賞を受賞しているところを評価したい笑

とはいえ、
ストーリー部分の進行や会話は
もっとレベル上げできるんじゃないかとは思ってしまった。
これからにさらに期待。

参考文献に佐藤亜紀『スウィングしなけりゃ意味がない』と
皆川博子『双頭のバビロン』があがっていたのは、
私的に100万点です。
とはいえ皆川博子作品で挙げるなら『死の泉』じゃないかな。
コメント
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