▼9月24日月曜の夜になって、右足はさらに腫れ、痛みもいくぶん強まった。
終日、氷を代えて、代えて、冷やしていたのに、これはおかしいなと、患部を指で、痛んでも丁寧に確認しているうち、こりゃ骨折だと確信した。
大学時代にアルペン競技スキーに打ち込んで、骨折を4回経験しているけど、こんな足の甲の部分は、固い競技用スキー靴に完全に護られているから、折れるという発想がなかった。
まいったな。
25日は、朝9時に自宅を出て、大阪へ向かい、敬愛するフェアな財界人と久しぶりにお会いして昼食をともにし、そこから近畿大学へ向かって、経済学部で2コマ、3時間の講義、夜に関西テレビの報道局と打ち合わせをして、大阪に泊まり、26日の水曜に、関西テレビの報道番組「アンカー」に生出演の予定になっている。
しかし、さすがに骨折となると、受傷から3日も4日も放っておけば、足が変形することにもなりかねない。
すぐに独立総合研究所(独研)の秘書室に連絡をとって、事態を把握してもらい、25日火曜の夜明けを迎えた。
夜明けとともに、『昼食会だけは延期せざるを得ないな。近大の講義とアンカーはそのまま遂行するぞ』と、こころに決め、朝7時を回るのを待って、秘書室に連絡、病院の手配をお願いした。
▼25日午前に、病院で診察を受けると、やはり骨折、それもレントゲン写真をみると、なんともはや、右足の指の1本がバックリというほかないほど、甲の下で、大きく折れている。
せいぜい、亀裂骨折、つまり骨にひびが入る骨折だろうと思っていたから、すこし驚いた。
これは、痛いわけだなぁ。
ドクターは、「足の甲は、5本の指から、そのまま細い骨が甲の下に伸びていますから、折れやすいんですよ」。
なるほどなぁ。…感心してる場合じゃない。
ドクターがまず、足の甲に麻酔の注射を打つのだが、これが、ずいぶんと痛い。しかも、けっこう長く針を刺して、かなり大量の麻酔薬を入れているから時間がかかる。
ぼくは、かなり我慢強いほうではあるのだけれど、思わず声が出そうになって、歯を食いしばった。
やがて麻酔が効いてきて、久しぶりに足の痛みから解放されて、いい気分になっていたら、療法士が2人やってきて、足を固定具で締めるまえに、折れた骨を伸ばす作業に入った。
「麻酔はしてあっても、痛みますから、我慢してください」と、しきりに言う。
大学時代の記憶から、覚悟はしていたけど、療法士の1人が右足にのしかかるようにして押さえているし、もう1人は、しきりに自分自身に気合いを入れている気配だ。
うーむ、これは来そうだなと思ったら、たしかに、凄かったです。
情報源を吐けと、拷問されるなら、こんな感じでしょう。もっとも吐きませんが。
ふひ。
若い療法士は、「すみません、時間がかかるんです、まだ我慢してください」と力んだ声で言いながら、折れて、割れて、下へさがってしまった骨を持ち上げて、元の位置に戻そうと苦心している気配だ。
目がくらむように痛いが、なんとなく信頼できる感じで、声は低いうなり声ぐらいで止められた。
そして、ようやく固定具を包帯で巻きあげる作業に移って、やれやれ。拷問、終了。
▼しかし終わると、次の深刻な問題が出てきた。
ドクターも療法士も、「明日の朝に、もう一度レントゲンを撮って、正しく固定されつつあるかどうかを、確かめなきゃいけない」と言う。
今夜は、大阪に泊まりなんです。
それをやめて、きょう日帰りで講義をして、東京に帰り、明日また日帰りで関テレに出て、東京に帰るぅ?
明日の朝の診察を受けるためには、それしかないけど、そもそも疲労で身体が凍りつくように体温が下がって、慌てて走って帰ろうとして、段差で転倒したんだから、そりゃ、きついよ。
それに、この足で移動の時間と回数が倍になるのも、きつい。
近大の講義さえ休講にすれば、楽になる。
その誘惑が、ぼくにも、ぼくを囲む秘書ふたりにも、浮かぶ。
しかし、楽しみにしてくれる学生もいることを考えるし、それに、1年分の講義を後期だけに詰め込んでいるから、休講すると、あとに響く。
よし、日帰り。行ったり来たりの人間シャトル、と決めて、タクシーで空港へ向かう。
▼羽田空港に着いて、タクシーから松葉杖で歩き出したら、もう好奇の眼がどっと集まる。
これなんだよねぇ、いちばん嫌なのは。、
アメリカとヨーロッパ諸国だと、松葉杖や車いすのひとの周りには、むしろ暖かい空気が流れて、みんなが、さぁ助けようとスタンバイする感じなのだが、日本では、間違いなく好奇の眼が圧倒的に多い。
ぼくの学生時代も、そうだった。スキーの試合で怪我をして、松葉杖で帰京しようとすると、急に、ありありと好奇の眼でみられる。
きょう実感したのは、それが変わらないだけではなく、松葉杖で歩いている人間に対しても、多くの人が道を譲らず、ほとんど平気でぶつかってくる。
いじわるな国だなぁ、日本は。
かつて特派員としてペルーにいたとき、首都リマのオープン・カフェで、中南米が専門の先輩記者と気持ちのよい風に吹かれていると、先輩が「青ちゃん、要は日本はいじわるな国なんだよ。ちょっと頭を出すと、すぐ嫉妬するし、弱い者にはエバって、強い者にはヘコヘコするよね。いくらペルーが貧しくて、いまテロ事件の真っ最中でもさ、ラテン世界にいるとホッとするんだよ」と言った。
その先輩記者の顔を、こうしたことがあるたび、思い出す。
ぼくは、しっかりと愛国者だけれど、ときどき、どこを愛そうか迷うことがある。
▼それでも、何とか機中のひととなり、さぁ、いざ大阪へ。
学生諸君に、先週の第1回講義で、いっしょに頑張ろう、頑張って根っこから考えよう、この祖国に国際社会のなかでフェアな主権を回復するために、と言った以上、いきなり第2週が休講ではね、みんなの志気に影響する。
だから、いくぞ、松葉杖で身体を前へ、前へ飛ぶように、送り出して。
(伊丹空港からのタクシー車内から、発信)
スキーで骨折経験がある云々と書かれてますが、若い頃と今では、治癒能力が違います。
とにかく、無理せず治療に専念して下さい。
明日のアンカーは楽しみにしてますが、その結果怪我が悪化するような事になったらと思うと・・・心配です。
東京から中継と言う方法もあると思いますので、その辺を関西テレビと相談されたらどうでしょうか?
(僭越ながら)人生にはそんな時も在るんですね…。
私もバイクレースでの骨折の経験が何度かありますが、不自由で辛いお気持ち、良く分かります。
フレーー!
フレーー!
ア・オ・ヤ・マ!
私も、先日虫歯治療で神経を抜き、かなり苦しかったですが似たような事を考えました。痛みならなんとかなるものです。
>ぼくは、しっかりと愛国者だけれど、ときどき、どこを愛そうか迷うことがある。
その気持ちたまにあります。何度日本を捨てて海外に行こうと思ったことか。働く(私の場合研究)環境で考えれば、必ずしも日本は良いとは言えません。それだけでなく、日本、さらには人類ですら、本当に愛すべき存在なのか、人間は生きるべき存在なのかを疑うときすらあります。
でも今は、信じています。私の大好きな家族や友人、仲間、先輩、後輩、文化・・・、それらみんなを自分が本気で大切にしようとしている気持ちを。
今日の講義、行けたら行こうと思っていましたが、多忙につき断念。後期中に覗けたらいいなと思っています。
また怪我をなさらないように気をつけて下さいね。
聞ける方がうらやましいです。
私も大阪に住んでいるので行きたいのですが仕事があるのでいく訳にはいきません。
とても残念です。
とこかく、無事に終わることを祈っております。
以前青山さんの硫黄島のレポートを見て、青山さんを、尊敬するようになりました。
本も一冊拝見させていただきました。
骨折ですか^^;
僕も右腕を一度に2本とも折ったことがあります^^;
戻すときがとても痛いですよね。
近大で講演ですか。
僕は目と鼻の先の近大附属高校に通っているのでぜひ行きたいです。
明日にでも高校の先生に訊いてみることにします。
お怪我おだいじになさって下さい。
>きょう実感したのは、それが変わらないだけではなく、松葉杖で歩いている人間に対しても、多くの人が道を譲らず、ほとんど平気でぶつかってくる
状況を想像するととても悲しくなります。
私は、自分が虚弱体質なので、どんな時もお互い様だと思って生活していますが、そうではない人もいるのでしょうね。自分の子どもには、小さい時からいろいろな人と交わる機会を作ってあげたいと思っています。明日の放送も楽しみにしています。
どうぞ暮れ々々もご自愛ください。
ちなみに私も十代の頃、バイク事故で腕を骨折してことがありました。傷みに耐えきれず、一睡もできなかったのを憶えています。
完治する迄で結構ですのでサプリメントのカルシウムをお使い下さい。
↓
政界人だか財界人だか
連投失礼しました。
骨が折れようが拷問されようが
口を割らない・・じゃない
根をあげない強さに魂消ます。
きっと悪鬼も、おそらくは神様さえも
たまげていらっしゃると思います。