将棋 この大ポカがすごい! 佐藤康光会長でも飛車をタダで取られます 

2018年08月07日 | 将棋・ポカ ウッカリ トン死

 人の指す将棋のおもしろさは「悪手」や「フルえ」にこそある。

 前回(→こちら)の森内俊之九段に続き、今回はそのライバルである佐藤康光会長となるのが流れであろう。

 と思ったのだが、ここでしばし考えこむことになった。

 はて会長って、大舞台でなんか、やらかしたことあったかしらん。

 いやまあ、佐藤康光九段も人間だから、ウッカリポカもそれなりにあるだろうけど、これがにわかには思いつかない。

 特にタイトル戦などでは、あっただろうか。

 今回のネタは、ほとんど私の記憶だよりだから、思い出せないだけでたぶんあるんあろうけど、出てこない。困った。

 そこで今回のポカは、歴史的というほどではない一品をチョイス。

 ただし、ポカの中身自体は、なかなかに味わい深いですが。

 

 舞台は、2011年棋王戦、対畠山鎮戦。

 後手番佐藤のゴキゲン中飛車から、激しい戦いになったが、畠山有利で最終盤に突入。




 

 クライマックスがこの局面。

 ▲75桂と打って、後手の受けがむずかしそうだが、ここで佐藤が指したのが驚愕の一手。

 

 

 




 

 

 △25飛成

 働きの弱い飛車を成って、▲75プレッシャーをかけたが、これがもう信じられないボーンヘッドだった。

 そう、なんと△25の地点にはが利いているのだ。

 ▲同角成と、タダで飛車を取られてゲームセット。

 まさに、初心者のようなウッカリというか、前回までの羽生や谷川、森内のポカは、手順にちょっとしたひねりがあったり。

 あるいは駒の配置が、錯覚を呼びやすかったりしたゆえのものだが、ここまでストレートなミスは逆にいっそさわやかである。

 畠山鎮も、あまりにあからさまなタダ取りを前に、

 

 「竜を取らないで勝つ手順はないか」

 

 を一応探したそうで、その気持ちもわからなくもないところもある。

 強豪相手に激戦を戦って、勝てそうなところから

 「大暴投でサヨナラ勝ち」

 みたいなことになっては、拍子抜けもはなはだしいだろう。

 特に畠山鎮の場合、性格的にも「わーい、ラッキー」とよろこぶタイプでもなさそう。

 むしろ、最後までやりたかったと、悔しがったのではあるまいか。

 一方、佐藤康光は、もちろん「待った」などできるはずもなく、そのまま投了するしかなかった。

 ポカがなくても、順当に行けば先手が勝ちそうだったことが、せめてものなぐさめであろう。

 昔、芹沢博文九段だったか昭和のベテラン棋士が、



 「矢倉の序盤で、後手が△64角と飛車取りに出る手があるだろ。あのとき、《飛車を逃げないでくれたらな》って真剣に思うことがあるんだ」



 なんて、冗談とも本気ともつかぬ口調で後輩に語ったことがあるとか、本で読んだ記憶があるけど、まさにそんなことが起こったわけだ。

 会長も、笑うしかなかったろうが、ポカに気づいた佐藤の表情も見てみたかった気がする。

 申し訳ないけど、いいリアクションしてそうなんですよね(笑)。


 
 (郷田真隆編に続く→こちら
 


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