「ゆるす」という言葉でマウントを取りにいった、あわれな男の話

2023年07月12日 | コラム
 「こないだ言うてた《かわいそうマウント》いうやつ、あれ耳が痛かったなあ」
 
 
 先日、一緒に昼飯を食べているときに、そう苦笑いしたのは友人ニシワキ君であった。
 
 唐突に出てきた《かわいそうマウント》とはなにかとここに問うならば、具体的には先日紹介した、
 
 
 
 
 などがある。
 
 このケースの場合、女子生徒は、
 
 
 「本当は自分も逃げたい」
    ↓
 「けど、それができない」  
    ↓
  「だからって、エスケープ組をうらやんだり、ねたんだりするのはカッコ悪いし筋違いだから、ここは《自分の意志で残っている》という体にして、《残らない人をかわいそうと、上から目線であわれむ》」
 
 
 といった流れによって、自らの不満プライドをなぐさめようという心の動きだ。
 
 で、ニシワキ君にとって、この話のなにに耳が痛かったのかと問うならば、彼もまた「マウントを取りに」行ってしまった記憶が喚起されたから。
 
 言葉はちがえど、似たような目的で発せられたワードが、
 
 
 「ゆるす」
 
 
 あー、わかるなあと、思わず声をあげた方は、私やニシワキ君と同じ「器の小さい男」だろう。
 
 まだ学生時代のこと。友は初めて彼女ができたのだが、その子が煙草を吸うのが、たいそうイヤだったそうな。
 
 でも、度胸も根拠もないもんで、
 
 
 「おい、女が煙草とか、やめろよ」
 
 
 とは言えない。けど、素直に受け入れることもできないから(まあ若造だしね)、
 
 
 「いいよ。古いタイプじゃないから、おまえがオレの前で煙草を吸うことをゆるすよ」
 
 
 そう宣言したのだ。
 
 おお! なんという見事なマウンティング。彼はこういう言い方をすることによって、
 
 
 「彼女の喫煙がイヤだと言い出せない、狭量かつ根性のない男」
 
 
 というポジションから、
 
 
 「女だてら喫煙するという蛮行を寛大に許可する、新しい、かつ器のでかい男」
 
 
 への華麗なるクラスチェンジをはかろうとしたわけだ。
 
 なんという詭弁、すばらしき欺瞞
 
 まさに小人物とはこうあるべき、という見本のような存在ではないか。さすがは、わがすばらしき「類友」だ
 
 もちろんのこと、この技は、
 
 
 「はあ? なに偉そうに言ってんの? あたしや女一般がなにしようと、なんであなたに『ゆるして』もらわないといけないわけ? どの立場からの意見?」
 
 
 そう、あまりに正しすぎる反論を受けて、友のなけなしの誇りは、まさに雲散霧消したのであった。
 
 そらそうだ。なにから、ものを言おうとしてるのかと。
 
 てゆうか、女が煙草吸っても全然ええですやん。
 
 そもそも煙草自体に反対っていうならわかるけど、「女が」って限定したら、そらアンタ何様やいう話やで。
 
 そう笑うと、友は
 
 
 「せやねん。それに今考えたら、彼女が喫煙しようがしまいが、どっちでもよかったしなあ」
 
 
 どっちでもええなら、そんなこといわなんだらええのに、
 
 
 「でもなあ。そういうの、言いたなるねん。アホやったから」
 
 
 あるよねえ。
 
 
 「そういうことを、ちゃんと女に言わなければならない義務がある」
 
 
 って思ってる男って、おるよねえ。
 
 かくのごとく、言いたいことが言えないとき、つい使いがちなマウンティング。
 
 たいてい見破られるし、そのときの恥ずかしさったらないので、注意が必要だ。
 
 
 
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