ドイツ人にヒトラーとナチスとブロッケンマンについて訊いてみた その2

2014年03月23日 | 若気の至り
 前回(→こちら)の続き。
 
 初めての大学の授業「基礎ドイツ語」で、ボリスカルトッフェルクヌーデル教授と、なごやかに談笑する、我々ドイツ文学科の学生たち。
 
 
 「ドイツで知られている日本人はいますか?」
 
 「好きな日本の食べ物を教えてください」
 
 
 といった、ゆるい質疑応答に、物足りなさを感じていた私は、
 
 

 「ここで一発、カマしたらなアカン!」

 

 
 という、間違った義務感のようなものを抱き、ここに場内騒然必至の質問を、投げかけることにした。
 
 順番が回ってきた私は、すっくと立ち上がると、
 
 

 「ボリス先生は、アドルフヒトラーについてどう思われますか?」

 

 
 その瞬間、カルトッフェルクヌーデル先生から笑顔消えた
 
 お、パンチが入ったんちゃうか。
 
 作戦成功を意識したものであったが、そのうちだんだんと、様子がおかしくなっていることに気づく。
 
 先生は紙みたいに、まっ白な顔色になっている。
 
 目は泳ぎ、ポケットからハンカチを取り出すと、しきりに、ひたいをぬぐう。
 
 明らかに、動揺しているのだ。
 
 なるほど、「血の気が引く」というのは、こう言うときに使うのだなと、はからずも勉強になった。
 
 などと、おさまっている場合ではない。なにか、教室の空気自体が、急激に重苦しくなったのだ。
 
 

 「それは……えー、難しい問題ですね……」

 
 
 ハンカチで、いそがしく冷や汗をぬぐう、カルトッフェルクヌーデル先生。
 
 

 「……難しい、とても難しい問題です……わたしの力では、一言ではとても説明できません」

 

 
 自分に言い聞かせるよう、何度もくり返している。
 
 ここへきて、いかなボンヤリの私でも、気づかされた。
 
 どうも自分は
 
 
 「触れてはいけない何か」
 
 
 を掘り起こしてしまったらしい。
 
 まっ青になり、息も絶え絶えという様子で、「とても難しい……」とくりかえすドイツ人教授。
 
 わけのわからないままにも、状況が異様であることは察知している学生たち。
 
 そして、なごやかな空気クラッシャーとして、A級戦犯となった私。
 
 これはもう
 
 
 「オー、イッツ、アメリカンジョークデース、気に入っていただけましたかAHAHAHA!」
 
 
 みたいな、笑って終わらせられる空気ではない。
 
 半分冗談のつもりだったのに、先生の反応を見ていると、とてもそれで片づけられる質問ではなかったみたいだ。
 
 こうなると、今さら、
 
 
 「待って、今のはノーカンね」
 
 
 というわけにもいかず、最初の授業でなんちゅうことをやらかしたのかと、入学早々、家に帰ってしまいたくなったスカタンな私だ。
 
 
 「そうかー、ドイツ人にとって、『あの時代』というのは、笑って流せる種類の問題ではないのだなあ」
 
 
 というのは、ひしひしと感じさせられた。
 
 だって、カルトッフェルクヌーデル先生は今にも泣き出して、くずれ落ちそうなほどに、打ちひしがれているんだもの。
 
 いやホンマに、半沢直樹さんが出るまでもなく、土下座でもしそうな勢いなんですわ……。
 
 だれや、こんなひどいことを言うたヤツは! ワシや! すまん……。
 
 そんなことを、「一発カマしたれ」なんてノリで聞いてしまって、すいませんでした。
 
 もう、こっちが、100万回でも土下座したい気分でしたよ。
 
 ごめんよ先生、悪気はなかったんだよー(泣)。
 
 黙りこむ先生、身の置きどころのない私、それを
 
 
 「せっかく楽しくやってたのに、なにしてくれてんねん」
 
 
 にらみつけるクラスの皆さん。嗚呼、やってしもうた、ここは地獄や。
 
 せめて、オチでもつけないとと、
 
 

 「また一緒に戦いましょう、今度はイタリア抜きで」

 

 という定番のギャグで話を締めくくったところ、隣の席に座っていたチサコちゃんという子に、
 
 
 「あたしは次の授業は、キミ抜きでやりたいね」
 
 
 バシッとつっこまれて、若気の至った私は、その学生生活の前途多難を予感したのであった。
 
 それくらい、この話題は海の向こうでは、デリケートなものらしい。門外漢の素人は、うかつに手を出さないのが無難です。
 
 チョケていい話じゃない。「冗談ですやん」なんて、とてもじゃないが通じる雰囲気じゃなかった。
 
 カルトッフェルクヌーデル先生の様子を見ても、もうこれは理屈やないと。
 
 ホンマ、今思いだしても冷や汗が出ますわ。
 
 

 ※おまけ ヒトラー総統の楽しい漫談動画は→こちら
 
 
 
 

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2020-03-15 01:00:48
チサコちゃん面白すぎるw
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Unknown (sharon106)
2020-03-15 16:54:01
コメントありがとうございます。

>チサコちゃん面白すぎるw

「マジで、なんやねんコイツ」ってあきれてたそうです(^.^;

このやりとり、実は一部の男子にはめちゃウケたんですが(先生スイマセン)、女子はシーンて静まりかえってましたねえ。

こんなことばっかやってたせいか、学生のとき全然モテなかったなあ。トホホ……。
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