結城市の生んだ詩人・新川和江さんが10日になくなった。キクチも結城市にある鬼怒商業高校に勤務したことがあるので、ブログに書こう思ったが書けなかった。今日の東京新聞では、 「錆びない言葉」題して、文芸評論家の斎藤美奈子
氏が書いている。紹介します。
錆びない言葉
斎藤美奈子
〈私を名付けないで/ 娘という名 妻という名/重々しい母という名でしつらえた座に /坐りきりにさせないでください わたしは風/りんごの木と/泉のありかを知っている風〉
新川和江のよく知られた詩「私を束ねないで」の一節だ。この詩が発表されたのは1966年。彼女は37歳であった。時は高度成長期。女性や妻が母の役割を求める圧力が強かった時代、多くの女性を励ましたはずである。
それから数年後、70年代には日本の第二波フェミニズム、ウーマンリブが産声を上げた。
<こんなことでみんなに喜んでもらえたらーーとお茶汲みを己の分と心得る女たちのその延長線上に「糞国の妻」「靖国の母の亡霊が再び大手を振って蘇る。/女の解放とは殉死を良しとする心の構造からの解放だ>
リブを牽引した田中美津の著書「いのちの女たちへ」(72年)のあとがきの一部である。
当時28歳。「便所からの解放」「わかってもらおうと思うは乞食の心」など、特に刺激的な言葉を伴って放たれたメッセージは鮮烈だった。日本の女性解放運動はここからスタートしたいっても過言ではない。
8月も今週で終わる。7日には田中美津さんが81歳で、10日には新川和江さんが95歳で鬼籍に入られた。今も錆びていない2人の言葉に改めて驚く。
(文芸評論家)