今日の東京新聞は、斉藤美奈子氏が、「今年も使い回し」のみだしで、広島市の平和式典での首相の挨拶を批判しています。紹介します。
今年も使い回し
斎藤美奈子
市民の立ち入りを制限し、イスラエルを招いて開催された広島市の平和式典。この式典での首相の挨拶はたびたび物議をかもしてきた。
2014年、当時の安倍晋三首相の挨拶が前年の文面と酷似していたことで「コピペ疑惑」が騒ぎになった。21年には当時の菅義偉首相が原稿を読み飛ばし、後で謝罪する事態に至った。
岸田首相の場合は22年、広島市の平和記念式典と長崎市の平和記念式典での挨拶はほぼ同じだったため、またもコピペかと騒がれた。
そして今年。昨年の挨拶と比較すると、やはりコピペの山だった。「今から79年前の今日、原子爆弾により、十数万ともいわれる貴い命が失われました」という冒頭の部分から「核兵器のない世界と恒久の平和実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げ」うんぬんという結びまでほぼ同じ。違うのは、昨年の文面にはあったG7広島サミットの成果を誇示する一節がなかったくらいだ。
国連で17年に採択された核兵器禁止条約に言及しないのは、もはや安倍首相以来の流儀。湯崎英彦広島知事は戦争当事国を意識したスピーチをし、イスラエルを招待して批判された松井一実広島市長はそれでも核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を求めた。9日の長崎ではどうなるか。使い回しは不真面目な証拠である。
(文芸評論家)