最高裁の判事が、大手法律事務所(弁護士500人以上)を通じて、東京電力や国と繋がったているというのは、知る人ぞ知る話です。それを批判した、東京新聞のコラムです。紹介します。
「最高裁の正義を問う」
鎌田慧
裁判所の象徴は右手に秤、左手に剣を持つギリシャ神話の「正義の女神」テミス像である。秤は公平と正義を表し、剣は正義の実行を示す。裁判官の決意を体現し力強い。それでも時には冤罪を見逃してしまう。
山口県の小村で1951年に起きた「八海事件」が題材の『真昼の暗黒』(監督・今井正)で、高裁死刑判決を受けた冤罪者・阿藤周平をモデルにした主人公が「おっかさん、最高裁があるんだ!」と叫ぶラストシーンに、庶民の最高裁への正義への、悲痛な期待が込められていた。
この頃、正木ひろし弁護士の原作を含めた裁判批判を、田中耕太郎最高裁長官が「雑音」と切り捨てた。が、17年後、高裁と最高裁を3往復した末、最高裁で無罪判決。冤罪事件などの裁判批判は、今は民主主義の基盤となり、公平と正義への期待が強まっている。
8月2日の本紙「最高裁2判事の弾劾訴追請求」は神格化されてきた最高裁判事でも罷免すべきだ、との弁護士や文筆家の運動が始まったという報道だった。
2022年6月、東電福島原発事故の賠償請求裁判で、最高裁第2小法廷が、仙台、東京、高松高裁の国の賠償責任を否定した。2人の判事は大手法律事務所を通じて、東京電力及び国と繋がっていた。憲法76条3項の「独立して職権を行う」に違反する。
(ルポライター)