机に一瞬伏せたのみで締切原稿をあげ、そのまま「座・高円寺」運営評価委員会、続いて再び建築中の劇場を見る。確実に完成に向かっている。午後、区役所で劇場に設けるアーカイブスについて打合せ。夜は早大大隈講堂で劇団創造『人類館』、三十年ぶりの東京公演という。一日のみだが満席の大盛況。ゴップに声を掛けられ驚く。彼女はタイの演劇人で野田秀樹『赤鬼』などにも出ているが、私が十年前ニューヨークにいたとき同じアパートだったのだ。
お茶の水で所用。その後、学生街をぼんやり歩く。新御茶ノ水から千代田線・小田急線で下北沢に行くと、結構大回りである。下北沢を歩いていると必ず誰かに声を掛けられる。夜、岡田利規・竹中直人『三人の女』。荻野目・中嶋の踏ん張りに支えられている。岡田が岩松了ファンであることがよくわかる。その後、打合せ。帰って原稿。朝まで。
盛岡で開幕を見届けてから、帰京。はやて車内で残り候補作を読み終え、紀伊國屋ホールでの公開審査会(http://www.jpwa.jp/main/inform/index.html#happyo-10)へ。今年の候補作にはどの審査員からも「一押し」のものはなかったが、制限時間ぎりぎりまで続いた討論自体は活気があってよかったのではないかと思う。土田くんのトークが確実に笑いをとる。授賞式・協会忘年会もよい雰囲気。マキノ、鴻上、横内に若者たちでバーへ流れる。
96年に開催した「劇作家大会」が懐かしい劇場。次第に慣れてきた仕込み作業を横目に、劇作家協会新人戯曲賞候補作も読み進める。外は雪が降り始める。場当たりをてきぱき進める。「転位・21」時代の友人・横澤君から大量の弁当の差し入れ。外に出ると雪はやんで、クルマのボンネット上くらいしか積もってない。かなり大人数の盛岡の関係者との交流会。今回は「盛岡三大麺」とは縁がなさそうだ。
到着後、午後から盛岡演劇界のフィクサー・坂田裕一さんの取りなしでIBC岩手放送へ。劇作家でもある阿部正樹社長にお世話になる。渡辺美佐子さんと一緒にテレビ・ラジオ収録。社長に豆腐と前沢牛定食をご馳走になる。盛岡市民の豆腐摂取量は日本一だとか。交流会に遅れて参加。……劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作も読み続ける。公開審査は14日6時半から新宿紀伊國屋ホール。ぜひお越しください。
劇場で集合確認後、急遽帰京。仙台昼の部に来て下さった丹野久美子、石川裕人両氏に申し訳ない。三時から助成金の面接。続いて劇作家協会内打合せ。夜、新国立劇場『舞台は夢』。鵜山仁演出は『息子ですこんにちは』以来の喜劇センスで心意気を見せる。氏のヨーロッパ演劇への関心が腑に落ちる部分もあり。終わって打ち合わせ二件。その後文学座の方々と話す。5日間の間に偶然松本祐子に三回も会っている。「噂になるといかんな」と互いに言う。翌朝は盛岡入り。
初めて公演するエル・パーク・ホール。観やすいサイズ。劇場入り後、合間を縫って各種原稿とゲラ校正。午後から場当たりを誤差一分もなくきっちり予定時刻に終了。美佐子さんのご親族から美味しい煮物とお赤飯と漬物をいっぱい差し入れにいただく。畑澤聖悟夫妻が青森からクルマを三時間半飛ばして来てくれる。満席。終演後、交流会に遅れて参加。米澤牛さんも最後に加わる。帰宿後、翌日の行動を左右する課題に取り組む。
締切に、思いがけない連絡も入り、出発遅れる。仕込みはいろいろ難関を突破、ぎりぎり翌日予定時間に場当たりできる状態。優れたスタッフとチーム結束のおかげ。宿近くで明日を気にしつつスタッフと仙台の魚で英気を養う。……19日夜、大隈講堂で沖縄をテーマにした講座に出る。もう一人のパネリストが姜尚中さんから加藤典洋さんに変更との知らせ。
劇団員は仙台へ移動。私は残って所用を消化のはずがなかなか進まない。夜はspace早稲田、流山児★事務所『ドブネズミたちの眠り』。突っ込みどころ満載の「レザボア・ラッツ」。余裕を見せる千葉、塩野谷、怪しさで有利な木野本。いつになく渋いさとうこうじは、わが芳泉高校の後輩である。終わって流山児氏と来年の『ユーリンタウン』について、慌てて決めてしまわない方向の打ち合わせ。しかしなんで我々がブロードウェイミュージカルの話なんかしてるんだ?!
雑務に追われつつ全体集合十二時に滑り込む。あれこれ締切もある。スズナリさんにご理解頂いて旅公演用の作業もさせていただきバラシ搬出が終わったのは十時を過ぎていた。皆さまおつかれさまでした。旅には行かない文芸演出部清水弥生と話。厳しいけれど楽しくもある未来に向けた話。どうかしているかもしれないが、リュックは重いのに、気持ちのクールダウンを兼ねて家まで歩いて帰る。
午前中、歯医者など。いったん帰宅し駆け足で「座・高円寺」建設現場へ。佐藤信芸術監督、渡辺えり・マキノノゾミ両プログラム委員らと見学。新国立劇場も世田パブも建築現場を見せてもらった。今回は最もコンパクトだが、図面を覚えているので「ついにこうなったか」という感慨もある。そのまま午後八時半まで会議。私は大半「聞き役」だったが、さすがにぐったり。スズナリへ行くと旗揚げメンバーの美香が来ている。
連絡ばかりしているうちに夕方。自分の本番を観ずに鄭義信作・演出、小宮孝泰さんの一人芝居『線路は続くよどこまでも』へ。小宮さんには昨年の今頃『ワールド・トレード・センター』に出て頂いていたが、「俺は悪い奴を演じたいんだよ」とご本人が幾ら言っても隠せないお人柄。誰かも言ってたが一人芝居というより「一人で『芝居』をやっている」というべき熱演。どこにも寄らず帰宅。あまたある宿題に取り組む。
午前中から連絡など忙殺。午後、NHK「週刊ブックレビュー」収録。あごひげは剃った。【Book Japan 2008年の100冊】推薦と同様、『ハシムラ東郷』をメインに『東北を歩く』『ザ・ロード』を推す。控室に案内され座って目の前を見ると、後半に出演の川上弘美さん。スズナリ終演後、西山水木さんらと。別な劇場で終演後の小宮孝泰、鄭義信さんらと混ざる。春風亭昇太さん合流。やはり下北沢は日本のイーストヴィレッジだ。
午前中からノートをメモで。昼の回を観てまたノート、今度は口頭で。旅公演に向けて打ち合わせなければならないことも多いが、現場は幸せな、いい雰囲気。この仕事をしていてよかったと思う。夜は俳優座でレーネ作・演出『9人の女』(朋友公演)。レーネ夫妻、翻訳の小牧さんらと一軒行って、初日を祝う。私の感想は来年1月発売の小学館「せりふの時代」に載せる予定。そして三鷹で貴重な話を聞く機会があり、帰路。でも、まだまだやることは多く眠れない。
朝、歯医者。思いのほか時間が掛かる。午後から梅ヶ丘BOX。あれこれ。占部房子に「梅ヶ丘の老舗喫茶店」の所在を問われ教える。劇場でノート(ダメ出し)。新聞取材。終演後、永井愛さんらと話す。最寄り駅からの帰り道で連絡を受け、相談の長電話。帰宅すると息子が自分の時計の目覚まし音が非力だというので貸す。私は目覚ましなしで起きられると思われているらしい。それにしても本を読む作業が進まない。