シアタートップスで、劇団アンパサンド 「歩かなくても棒に当たる」を観る。
注目を浴びている団体で、あっという間に完売御礼となったという。
皮肉やディフォルメを効かせながらの「自然体」として始まるが、ホラーかSFみたいになったりもする。ネタバレになるから言わないけど、「あの映画」みたいな。そうした連鎖じたいがコントのようでもあるが、それで90分を走り抜ける。
戯曲の構造は、見事に、能の「複式夢幻能」になっている。
越してきた若い女がワキで、しっかり、ツレ、アイ、もいて、前ジテを出す段階で過去形に遡る一瞬がある。後ジテは、出てきたら、もう、やりたい放題である。他の登場人物たちはしっかりと後ジテに役割をまっとうさせる。
舞台になっている「場所」が磁場として機能していることがまた、「複式夢幻能」の誘引力を高める。
男しか出さない能に対して、登場人物が女性だけというのも、能に対する鏡像になっている。
俳優としても出演している作・演出の安藤奎さんと、ゲスト・山内ケンジさんのアフタートークがまた、愉快な不条理劇のようであった。山内さんは自分の映画にも主演している出演者の鄭亜美さんのことをしれっと「エロかった」と言うのだった。安藤さんは本作を「最初稽古していた台本が、あと数ページで書き終えるというところで迷いが出て、息抜きに書き始めた別戯曲であるこちらをやることに変更したのでチラシに予告しているのとぜんぜん違う内容になり、結果として今までで一番長い作品になった」と言う。どこまで真に受けていいのかわからないようなものだが、まあ、真に受けます。
「世に出てくるときの勢い」というものがあるとしたら、先日のピンク地底人3号も、そうだった。3号は情緒を入れるが、こちらはドライである。その潔さも含めて、アンパサンドは団体としての個性がより明確であるようだ。
なんにしても、そうした「勢い」に触れると、観ている側も元気になる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます