A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記624 『肖像写真』

2012-07-10 04:53:47 | 書物
タイトル:肖像写真 : 時代のまなざし
著者:多木浩二
発行:岩波書店(岩波新書, 新赤版 1086)
発行日:2007.7
形態:ix, 190p : 18cm
内容・目次:
肖像写真を撮るまなざしの変遷から歴史が見えてくる。ブルジョワ知識人を撮った19世紀のナダール。さまざまな職業の人間を撮って20世紀の全体像を描こうとしたザンダー。被写体にパフォーマンスさせた現代写真家アヴェドン。彼らの肖像写真からは、記述された歴史ではうかがい知ることがなかった人間の変容が浮かび上がる。

はじめに
第1章 ブルジョワの理想―ナダール
 1 カリカチュリストから写真家へ
 2 写真家としての出発
 3 19世紀パリをつくった人びと
第2章 二十世紀の全体像をめざして―アウグスト・ザンダー
 1 あらゆる階層の人びとを網羅する
 2 分類し、総合する
 3 ザンダーにとっての農民
 4 さまざまな人間たち
第3章 パフォーマンスの真実―リチャード・アヴェドン
 1 「借りた犬」
 2 顔とは何か
 3 アヴェドンの人間喜劇
 4 プライヴェート・パンテオン
終章 肖像写真と歴史
参考文献
あとがき

頂いた日:2012年7月8日
場所:京都市内
 某アートスペースの方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
 以前、肖像写真に類似する家族写真について考えることがあった。その時は、多木浩二氏の論考が大いに参考になったが、本書もその問題点を踏まえて読んでみたい1冊だったので、手に入ってうれしい。

未読日記623 『ニューヨーク』

2012-07-09 05:37:01 | 書物
タイトル:ニューヨーク : 芸術家と共存する街
著者:塩谷陽子
デザイン:日本情報デザインセンター+薬師神親彦
イラストレーション:石山博司
発行:東京 : 丸善(丸善ライブラリー, 277)
発行日:1998.9
形態:viii, 195p : 18cm
内容:
助成金の額でもなく文化施設の数でもない、ニューヨークの芸術援助の底力は、まず「プロの芸術家」の生きる権利を認めたところからはじまった。その社会のコンセンサスが、今の時代を生きる世界中の芸術家たちを引きつけ、彼らはこの街に住みつき、キャリアを積み上げていく。はたして、「プロの芸術家」とは?「芸術家の生きる権利」とは?――日本がまだ気づかない芸術援助のあり方を、芸術家のナマの声を紹介しながら解き明かす。

序章―芸術家として生きる権利
第1章―プロの芸術家
第2章―デモクラシーとプロの芸術家
第3章―芸術家が芸術家を助ける
第4章―キャリア建設
第5章 成功した芸術家たち

頂いた日:2012年7月8日
場所:京都市内
 某ギャラリーのディレクターの方よりオススメ頂いた本の1冊。読んで納得、目から鱗の1冊だった。刊行からだいぶ年月が経過しているが、本質的なことは変わっていない。芸術政策に興味・関心がある人だけでなく、すべての芸術家、芸術関係者に読んでもらいたい1冊だ。

 例えば、ニューヨーク市が規定する芸術家の定義がおもしろい。
芸術家とは、「絵画や彫刻など美術への従事、振付・映像などの制作や上演への従事、音楽の作曲への従事等を、不断に継続し、それを専門の職業(プロフェッショナル)としている個人のことを指し」ている。さらに、「専門の職業(プロフェッショナル)」とは、「その者が生涯その表現形態に従事するという、その専心そのものを意味するのであって、その創造行為や努力が金銭的にどれくらいの報酬をもたらしたかという額高の問題ではない」というのだ。つまり、「専門の職業(プロフェッショナル)」とは、「プロ=稼ぐ」人ではなく、「その専門職に対する傾倒・関わり合いのことのみを意味している」のである。
 なんでも金銭や収入を判断軸にして、プロ/アマチュアを定義してしまう日本と較べると、この職業定義はニューヨークの芸術家に対するレベルの高いデモクラシー文化を示しているといえる。いや、芸術家だけではない。この定義には職業選択に対する人権、敬意や尊重が伺えることからも、文化が根底から違うことに気づかされる。どちらがいい悪いという話ではないが、文化に対する成熟さという点では、まだまだ学ぶべき点がたくさんある。

未読日記622 『西域美術展』

2012-07-08 05:31:06 | 書物
タイトル:西域美術展 : ドイツ・トゥルファン探検隊
タイトル別名:Central Asian art from the Museum of Indian Art, Berlin, SMPK
編集:東京国立博物館京都国立博物館朝日新聞社
発行:[東京] : 朝日新聞社
制作:便利堂
発行日:c1991
形態:226p : 28cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場:1991年4月2日-5月12日:東京国立博物館, 1991年5月25日-7月7日:宮崎県総合博物館, 1991年7月23日-9月8日:京都国立博物館
   主催: 東京国立博物館, ベルリン国立インド美術館, 朝日新聞社 [ほか]
   ドイツ・トゥルファン探検隊行程図: p222-223
   西域(中国新疆)美術に関する主要参考文献: p224-226
   List of exhibits: p217-221
   英文付記
内容・目次:
ごあいさつ
「メッセージ」ヴォルフ=ディーター・ドゥーベ(プロイセン文化財団国立博物館群総館長)
「序論 西域の歴史と美術」マリアンヌ・ヤルディッツ(ベルリン国立インド美術館館長)
「西域の仏教遺跡と彫塑美術」宮治昭(名古屋大学文学部教授)
「西域の絵画―ドイツ・トゥルファン探検隊収集品を中心に―」臺信祐爾(東京国立博物館東洋課インド・南東アジア室研究員)
図版・解説
英文目録
ドイツ・トゥルファン探検隊行程図
西域(中国新疆)美術に関する主要参考文献

購入日:2012年7月8日
購入店:コトバヨネット
購入理由:
 とある必要から西域美術について調べていた。本書は職場で見つけて参考にしていたが、値段も安く手元に置いておきたく購入。今となっては二度と見れないであろう、西域美術の名品が楽しめる。
 


memorandum 084 宇宙

2012-07-07 06:52:55 | ことば
 宇宙全体とわたしのからだとの関係が、盲人の杖とその杖をもつ手との関係と同じようなさまになってほしい。盲人は今やもう、現実にはその手に感覚はなく、杖の先にある。そうなるには、修行が必要だ。
 自分の愛を純粋な種類のものだけに限って行くことと、全宇宙に及ぼして行くこととは、同じことなのだ。
 自分の世界との関係を変えて行くこと。ちょうど、修行によって職人が自分と道具との関係を変えて行くように。怪我をすること、それは、職業がからだにくいこむということなのだ。苦しみのたびごとに、宇宙がからだの中にくいこんでくるように。
 習慣、熟練、意識が今持つからだとちがう対象の中に移って行くこと。
 その対象が、宇宙であるように、季節、太陽、星などであるように。
 からだと道具との関係は、修行しているうちに変わってくる。からだと世界との関係を変えねばならない。
 執着から離れるのではない。執着の中身が変わるのだ。すべてのものに執着すること。
 あらゆる感覚を通じて、宇宙を感じとること。このとき、それが快楽となるか、苦痛となるかはどうでもよい。永い間会わなかった愛する人にめぐりあって手をにぎりあったとき、きつくにぎられて手が痛かったとしても、それがなんだろう。
 苦痛もある段階に達すると、世界がぽろりと落ちてしまう。だが、そのあとでは、安らぎがやってくる。それからまた、激痛がおこるとしても、次にはまた、安らぎがやってくる。もしこのことを知っていれば、この段階がかえって次にくる安らぎへの期待となる。その結果、世界との接触もたち切られずにすむ。

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)』田辺保訳、筑摩書房、1995年、pp.228-229.

世界を、執着を変えたい。

未読日記621 『KATAGAMI Style』

2012-07-06 23:04:09 | 書物
タイトル:Katagami style
監修:馬渕明子、高木陽子、長崎巌、池田祐子
編集:三菱一号館美術館京都国立近代美術館三重県立美術館日本経済新聞社
デザイン・制作:美術出版社デザインセンター、石塚肇、西尾玉緒、川添英昭
発行:[東京] : 日本経済新聞社
発行日:c2012
形態:381p : 26cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場: 2012年4月6日-5月27日:三菱一号館美術館, 2012年7月7日-8月19日:京都国立近代美術館, 2012年8月28日-10月14日:三重県立美術館
   主要参考文献: p[348]-351
   出品リスト: p[352]-365
内容・目次:
主催者あいさつ
展覧会コミッショナーからのメッセージ

[Catalogue]
1章 型紙の世界―日本における型紙の歴史とその展開
2章 型紙とアーツ・アンド・クラフツ―英米圏における型紙受容の諸展開
3章 型紙とアール・ヌーヴォー―仏語圏における型紙受容の諸展開
4章 型紙とユーゲントシュティール―独語圏における型紙受容の諸展開
5章 現代に受け継がれる“KATAGAMI”デザイン

[Essay]
1章
「日本の型染と型紙染の歴史」長崎巌
「型紙は語る 海を越えた型紙をたずねて」生田ゆき
型紙関連用語解説 長崎巌/生田ゆき
2章
「英国におけるジャポニスムと型紙」高木陽子
「アメリカにおけるジャポニスムと型紙」馬渕明子
3章
「フランスの美術工芸における型紙の影響」馬渕明子
「ベルギーにおける型紙とジャポニスム」高木陽子
「パリ装飾美術館の型紙コレクション」シャンタル・ブション
4章
「「型」を求めて――ドイツにおける型紙受容とその背景」池田祐子
「クレフェルトにおける芸術家による絹織物、型紙そしてジャポニスム」クラウディア・デランク
「世紀転換期ウィーンにおける日本の型紙の意味について」ヨハネス・ヴィーニンガー
「型紙とオランダのジャポニスム」マリヤン・グロート
5章
「受け継がれる“KATAGAMI”デザイン――現代の欧米のプロダクトから」阿佐美淑子

[Documents]
作者・工房解説
海外における型紙所蔵先一覧
年表:19世紀から21世紀にかけて西洋に見出される日本の「型紙(Katagami)」
 監修:ジュヌヴィエーヴ・ラカンブル
主要参考文献|Bibliography
出品リスト
List of Works

頂いた日:2012年7月6日
職場にて頂いた1冊。
 まだ展示はきちんと見れていないが、ジャポニスム研究に新たな1ページを付け加えた展覧会。大学・研究機関による研究調査が結実した展覧会として近年では充実した成果ではないか。
 とはいえ、内容が難解なわけではない。前評判・期待値がとても高い(特に女性)ことからも、KATAGAMIが鑑賞者に訴える要素が多いことがわかる。

memorandum 083 知性

2012-07-04 06:33:30 | ことば
 わたしたちは、知性でとらえられないものの方が、知性でとらえられるものよりもずっと実在的であることを、知性のおかげで知っている。
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)』田辺保訳、筑摩書房、1995年、p.210.


知性でとらえることと、知性を使うことは別のようだ。

Collection 08 くろねこがピョンと飛び出すワッペンピンバッチ

2012-07-03 06:15:57 | 美術
購入日:2012年7月1日
作品名:くろねこがピョンと飛び出すワッペンピンバッチ
サイズ:縦4cm x 横6.8cm
素材:刺繍、金属ピン
アーティスト:とんぼせんせい
場所:新風館「TOKYU HANDS TRUCK MARKET」gallery
 新風館2F南側のスペースにて開催されている[TRUCK MARKET gallery]@新風館で購入。かわいらしくてつい衝動買い。制作しているのが、「とんぼせんせい」と聞いて、余計におかしさが増す。とんぼせんせいとんぼせんせいとんぼせんせい・・
 とんぼせんせいは、以前はアーティストとして活動していた鈴木宏樹氏が展開するイラスト・小物制作時に用いるアーティスト名のよう。現在は、美術活動から転向してイラスト、小物制作を中心に活動しているようだ。今後も楽しみにしたい。

未読日記620 『ザ・タワー』

2012-07-02 05:40:57 | 書物
タイトル:ザ・タワー : 都市と塔のものがたり
編集:東京都江戸東京博物館
   読売新聞社
   NHK
   NHKプロモーション
編集協力:中央公論新社、シーオーツー、大阪歴史博物館
デザイン:podo
印刷:大日本印刷
発行:東京都江戸東京博物館
   読売新聞社
   NHKプロモーション
発行日:2012.2
形態 : 207p : 挿図 ; 30cm
注記 : 展覧会カタログ
    会期・会場: 2012年2月21日-5月6日:東京都江戸東京博物館, 2012年5月23日-7月16日:大阪歴史博物館
    出品作家: Athanasius Kircher, ヤン・ライケン, John Martin [ほか]
    主催: 東京都江戸東京博物館, 読売新聞社, NHK [ほか]
    作品リスト: p198-205
    主な参考文献: p206
[内容・目次]
ごあいさつ
プロローグ 二つの塔 バベルと仏塔
1章 都市の塔の誕生前史 昇る塔のない都市・江戸
2章 近代都市の塔と万博
3章 新しい時代の塔
エピローグ 塔が生まれるとき 東京スカイツリー 

「塔にまつわるもろもろの雑感 そしてわずかばかりの、試論」岩城紀子
「大阪における明治20年代の展望所を持つ施設について」船越幹央

エッセイ
「エッフェル塔の転身:1900年万国博覧会のコンペティション」カロリーヌ・マチュー
「大樹の出現を待望する」松浦寿輝
「浅草十二階」細馬宏通
「私と通天閣」橋爪紳也
「東京タワーの思い出 展望台で食べたヤキソバの味」泉麻人
「タワーになる気持ち」ニシハラ☆ノリオ
「伝統と技術が結集した「希望の巨木」――。東京スカイツリーが語りかけること」小坂剛
「九段の坂上から、ツリーをみる」幅允孝
開催要項
作品リスト
参考文献リスト

購入日:2012年7月1日
購入店:大阪歴史博物館
購入理由:
 今年上半期、最も見たかった展覧会のひとつ。バベルの塔から東京スカイツリーまで、都市の塔についての表象を扱った展覧会が本展である。私の研究領域である鳥瞰図とも共通する点もあって楽しみにしていた。
 展示数としては、やや物足りない点もあるが、概ね楽しめた。なかでも東京タワー、通天閣のグッズやエピソードはおもしろい。通天閣の研究は近年盛んなようなだが、東京タワーの研究はあるのかしらん。やってみたい。
 ところで、本展の図録執筆者は近年稀に見る豪華さである。タワー論者をここまで集めた編集っぷりがうれしい。