A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 499 純未満の関係性について

2017-05-17 21:50:39 | ことば
もうわたしのことなど忘れてしまっているだろうけれど、と、言えばき
っと「そんなことはないよ」と言ってくれるだろう。けれどそう言うま
では忘れられているのと同じなのだから、これは、縁が切れたというこ
となのだ。簡単につなぎなおせるけれど、だれも動こうとしないから、
ぷちぷち切れていく縁というものが死と同じぐらいの頻度で地球上で起
きていて、それは、喧嘩よりもたちが悪い。永遠でないのに、臆病さ
が一瞬を永遠にしてしまっている。

純未満の関係性が今日もどこかで、絆に変わる。愛情のことや友情のこ
とを語りながら、簡単に、わたしたちだけの距離が、規格化される。乱
暴をされる。中途半端に空いていたお互いの距離に、それまでサンドイ
ッチを置いていたね。だれも理解できないことだった。だれもこの味を
知らなかった。わたしがかみさまなら、あなたとのこの関係性にあたら
しく名前を付けて、友でも恋人でもなく、あなたの名前をつけていた。
わたしがかみさまなら、あなたのことを、好きとも嫌いとも大事とも言
わず、ふと出会ったそのときに、いっしょに食事をとっていた。


最果タヒ『死んでしまう系のぼくらに』リトルモア、2014年、18頁。

かみさまだったら、いっしょに食事ができたのに。