A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記1291 『クインテット III : 五つ星の作家たち』

2017-03-21 21:32:33 | 書物
タイトル:クインテット III : 五つ星の作家たち
タイトル別名:Quintet III : five-star artists 2017
       Natsumi Kawashiro, Kayoko Kimura, Tomoko Hashimoto, Yukiko Hori, Miyuki Yokomizo
企画・編集:五十嵐卓(東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)
翻訳:Robert S. Reed
表紙デザイン:長瀬里紗(LISTAS)
デザイン・制作:瞬報社写真印刷株式会社 デザイン室
発行:[東京] : 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
発行日:c2017
形態:94p ; 30cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場 : 2017年1月14日-2月19日:東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館
   出品作家: 川城夏未, 木村佳代子, 橋本トモコ, 堀由樹子, 横溝美由紀
   主催: 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館, 朝日新聞社
   出品リスト: p80-81
内容:
ごあいさつ
『クインテットIII』出品作家たちの自然観 五十嵐卓
”いま”を生きる、ありのままの思いを——今日の女性画家が目指す道 藤田一人
『クインテットIII』座談会
【1】川城夏未
【2】木村佳代子
【3】橋本トモコ
【4】堀由樹子
【5】横溝美由紀
出品作品リスト・作家略歴・展覧会歴・主要参考文献
Quinted III : The Exhibiting Artists' Sense of Nature
Abridged Chronology

頂いた日:2017年3月21日
 出品作品の方よりご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
 「クインテット」とは「五重奏」の意。国内外で活躍する中堅作家5人を取り上げた東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館のシリーズ展覧会。過去2回のテーマは「風景」で、今回は「自然」をテーマに開催される。今展出品作家の川城夏未、木村佳代子、橋本トモコ、堀由樹子、横溝美由紀はいづれも実力、魅力ある活動をしている作家たちで、こうしたグループ展で取り上げられるのはすばらしい。ちなみに、私が以前にカロンズネットで橋本トモコ氏について言及したレビューが主要参考文献に含まれていてうれしい。日本の現代美術系の展覧会図録は参考文献を載せないことも多く、掲載されてもウェブに掲載されたテキストは割愛することが多いので大変うれしい。

 残念ながら展覧会を見ることは叶わなかったのだが、図録を通じて久しぶりに見る各作家の作品は、充実した作品ばかりで驚いた。川城夏未、橋本トモコの清澄さと緊張感はすばらしい。これは実見したかった。そして、本当に久しぶりにみた堀由樹子の作品は村上華岳の水墨画を思わせる自然の大気や空気感に満ちていて瞠目した。いま、このように自然を表現し得る作家が日本に何人いるだろうか。
 図録には出品作家による座談会が収録されており、制作の裏側を知ることができておもしろかった。「どんな趣味をもっているのでしょうか」という質問には苦笑したが、一般の美術愛好者にとっては興味を惹かれる事柄なのだろう。その回答を読むと、女性的な趣味が述べられるので、男性作家だと座談会はおもしろくならない気がするのはこちらの偏見か。
 とはいえ、出品作家を「女性」に限定している理由が明記されていない点は不思議だった。藤田一人氏のテキストが「今日の男性画家が目指す道」とはならないだろう。この国はいつになったら「女性画家」ではなく、性別をつけずに「画家」と呼ぶ日が来るのだろうか。