絵や彫刻はふつう空間表現と呼び、構図や色や空間を占有するさまなどが問題にされているように思われているが、ここでも力となっているのは時間の方で、絵や彫刻の実物をじかに見ると、それらの制作に没入された時間の厚みがはっきりと痕跡としてあらわれていて、その時間の厚みが―見る者が気がつく気がつかないにかかわらず―見る者の目を惹きつけ、心を動かす。
(保坂和志『小説の誕生』新潮社、2006年、p.397)
もしかすると、私は芸術に時間の厚みを見ているのかもしれない。時間の厚みのない薄っぺらな作品は凡庸だし、いたずらに「痕跡」を残した作品も汚しているとしか思えない。私たちを没入させる芸術とは、そのような作品ではない。
(保坂和志『小説の誕生』新潮社、2006年、p.397)
もしかすると、私は芸術に時間の厚みを見ているのかもしれない。時間の厚みのない薄っぺらな作品は凡庸だし、いたずらに「痕跡」を残した作品も汚しているとしか思えない。私たちを没入させる芸術とは、そのような作品ではない。