A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記311 「Reflection:The World Through Art」

2009-09-05 23:32:05 | 美術
タイトル:堂島ビエンナーレ2009 ガイドブック
編集:ナンジョウアンドアソシエイツ
作家解説:南条史生、窪田研二、ロジャー・マクドナルド
翻訳:河野尚子、有限会社フォンテーヌ
デザイン:古平正義(フレイム)
印刷:アインズ株式会社
発行:堂島リバーフォーラム
発行日:2009年8月5日
価格:300円
内容:
主催者挨拶
「共生への模索:「リフレクション」展とその背景」南条史生(堂島ビエンナーレ第一回展アーティスティック・ディレクター/シンガポール・ビエンナーレ2006・2008ディレクター/森美術館館長)
作家解説・図版

購入日:2009年8月22日
購入店:堂島リバーフォーラム
購入理由:
大阪の堂島リバーフォーラムにて開催された<堂島リバービエンナーレ2009『リフレクション:アートに見る世界の今』>(2009年8月8日―9月6日)のガイドブック。
 会場はよくある貸し会場なのだが、全館を使って一つ一つの作品を丁寧に見せているのは評価できる。映像やインスタレーション主体だが、内容も悪くはない。だが、「2009」と銘打っておきながら、参加作家26人(組)の内、2009年制作の作品が4点だけとは寂しいかぎりである。つまり、本展はアーティスティック・ディレクターが南条史生氏であることからもわかるように「シンガポール・ビエンナーレ2006、2008」のダイジェスト日本巡回展と解釈した方がいいだろう。もちろんそれが悪いわけではない。だが、近年、「ビエンナーレ」や「トリエンナーレ」という言葉が国際展規模でもないのに安易に使われると、心なしか国際展としての「トリエンナーレ」や「ビエンナーレ」の存在が霞む気がしてしまうのは気のせいか・・。
また、会場には「ビエンナーレ」の展覧会カタログさえなく、300円の本ガイドブックと関連グッズのみが売られていた。この不景気を考えると無理のない話だが、「ビエンナーレ」のカタログが300円のガイドブックだけとは切なくて買ってしまった。ぜひ、第2回には期待したいものである。
そして、内容だがご覧になられた方は非常に政治的、社会的なテーマの作品が多いことに気づくことだろう。これは、シンガポール・ビエンナーレが特殊なのではなく、おそらくほとんどの欧米圏ではこういったモチーフの選択は当たり前のことと思われる。あるいは、メディアに対して自覚的だと言ってもいい。それが特に表れるのが映像作品だが、コンセプトが明快でそれを実現する技術や予算があることが映像を見ていると実によくわかる。日本人作家では、政治性を批評的なパロディへと転換した会田誠の『日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ』(2005)が特に目を引くくらいである。ここには「ビデオレター」というフィックス・ワンショットによる撮影方法が効果を上げている(編集はされているが・・)。
松蔭浩之の『ECHO』(2009)は初日に行われたパフォーマンスを見た人の話では評価が高かったが、展覧会会場において流れるドキュメント映像は、画質が悪く、手持ちカメラによる撮影で時々ぶれてピントが合わないなど、映像作品としての出来がよくない。他の作品が音響までこだわるなどレベルが高いだけに、映像のクオリティは求めたいところだ。
本展会場を回ると、イラク戦争、ボスニア戦争、ベトナム戦争、パレスチナ、人権、出稼ぎ労働者、貧困、死刑制度などの問題を取り上げた現代美術の作品を通して「世界の今」を知ることになるのかもしれない。だが、このような問題は「現代美術」で知らなくともさまざまな映像や新聞、インターネットなどのメディアで取り上げられている(あるいは、取り上げられているべき)問題であろう。わざわざ入場料1000円を払い、世界の惨状を訴えられても、私にはどうする術もないのだが、それは同時に現代美術も同じなのかもしれない。こうして、世界の状況とやらにその都度反応し、それに応じた作品を作るのが「アーティスト」なのだろうか。