A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記299 「桂文楽 弐」

2009-07-25 23:14:00 | 書物
タイトル:隔週刊CDつきマガジン 落語 昭和の名人 決定版⑬ 八代目桂 文楽 弐
編集人:宮本晃
監修:保田武宏
寄席文字:橘左近
CDリマスタリング:草柳俊一
アート・ディレクション:渡辺行雄
デザイン:片岡良子、姥谷英子
編集:小坂眞吾(小学館)、内田清子
制作企画:速水健司
資材:高橋浩子
制作:田中敏隆、南幸代
宣伝:長谷川一、山田卓司
販売:豊栖雅文、竹中敏雄
広告:林祐一
発行:株式会社小学館
発行日:2009年7月7日
金額:1,190円
内容:
明るく美しい高座
八代目桂 文楽【かつら・ぶんらく】1892~1971

CD(66分)
船徳・・・にわか船頭、危機一髪 初出し音源
鰻の幇間・・・そんな旦那に騙されて 初出し音源
寝床・・・赤い顔して黄な声を出す

○お座敷で洗練された話芸 文楽は永遠のお手本
○CD鑑賞ガイド 明るさから滲む哀しみ
落語をもっと面白くする連載3本立て
田中優子○江戸っ子の信心
五街道雲助○暑さ、寒さを表現する
山本進○「落語研究会」の誕生

購入日:2009年6月29日
購入店:芳林堂書店 祐天寺店
購入理由:
ご存じ桂文楽の第二弾。すばらしいのは確かなのだが、他の落語家の噺を聞いてくると、完成され過ぎていてどこか物足りない、などと書くと何様だと言われるだろうか。ちょっと崩したところがある方がちょうどいいのではないかしらん。あまり完璧でもライブであるだけにビートが伝わってこない気がするのである。
 ちなみに今回の噺でよかったのは「寝床」である。以前聞いたときから好きな噺だったが、十八番であるだけに文句のつけようがない。「寝床」の義太夫好きの大旦那と番頭とのやりとりから笑いへと引き込んでいく。そして、怒った後に機嫌を直すくだりの絶妙な間と声のトーンで感情を表現するあたり、あまりに見事で痺れる。相手方のセリフがなく、1人で話しているのにこの臨場感はなんなのだろうか。
 そして、この「寝床」は意外と遊びがある噺なのである。例えば、番頭が長屋の住人の1人が義太夫を欠席する言い訳としてがんもどきの作り方を説明するのだが、このネタは噺としては本筋ではない。だが、このちょっとした小ネタの積み重ねが大旦那の感情を変えるのである。本筋ではないといえ、なかなかどうして重要な要素なのである。しかし、がんもどきでなくとも、いくらでもエピソードは差し替え可能だろう。その意味で「寝床」は本CD収録の他の2編に較べ、余裕というか遊びがあると思うのである。