A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記294 「雪」

2009-07-13 23:07:51 | 書物
タイトル:雪
著者:中谷宇吉郎
発行:岩波文庫/岩波文庫 緑124-2
発行日:2005年4月25日第9刷(1994年10月17日初版)
内容:
天然雪の研究から出発し、やがて世界に先駆けて人工雪の実験に成功して雪の結晶の生成条件を明らかにするまでを懇切に語る。その語り口には、科学の研究とはどんなものかを知って欲しいという「雪博士」中谷(1900-62)の熱い想いがみなぎっている。岩波新書創刊いらいのロングセラーを岩波文庫の1冊としておとどけする。(解説=樋口敬二)
(本書表紙解説より)

購入日:2009年6月20日
購入店:古本遊戯 流浪堂
購入理由:
真夏に雪の本とは不思議かもしれないがそれには理由がある。先日、とある媒体に<鈴木理策「WHITE」>展のレヴューを書かせて頂いたが、その際に執筆の参考として購入したのである。にわか勉強をしようとしているのがわかってしまうが、しないよりはいい。しかし、いい作品であったのに自分で書いたレヴューテキストは低レベルで自己嫌悪に陥るばかりであった。なにより作品に申し訳ないと反省している。とくにテキスト最初に本書の引用をしながら、まったく効果的な引用として活きてこないのは私が本書を「未読」であることにつきる。言葉を変えれば「未熟」であるということだ。そう、膨大な未読の集積とは本を読んでいないということだ。それは「未熟日記」の謂いに他ならない。とはいえ、私のことなのでいつまでたっても未熟のままではあるだろうが。

 都会育ちの私にとって、雪を見るのは楽しみである。雪国の人々からしたら不謹慎極まりない発言だろうが、都会に降る雪は破壊的刹那的で子どもの頃から好きだった。雪が降って降って降り積もり、すべてが白くなってしまえばいいと願った。嫌いな学校もいじめ続けられた毎日もみんな飲み込んでしまえばいいと思った。そう願いながら雪道を歩いていた。その時わたしは道で1本のライターを拾ったのだ。かじかんだ手で拾い上げ、ライターをつけてみる。しんしんと降る雪の中、物音しない世界の中で、火だけが暖かった。まるで自分みたいだった。つけもすぐ消えてしまう火のような存在。この程度の存在だったかと思った。
私は火をつけたライターを目におしつけた。


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