A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記130 「Tokyo Waltz」

2007-11-14 23:59:46 | 書物
タイトル:αmプロジェクト2007 ON THE TRAIL Vol.3
     Tokyo WALTZ/東京円舞曲 福田尚代×木村幸恵
デザイン:長内研二、河野伊央
発行:武蔵野美術大学
発行日:2007年11月5日
内容:
2007年11月5日-11月17日まで東京銀座の・東京画廊において開催された<αmプロジェクト2007 ON THE TRAIL Vol.3 Tokyo WALTZ/東京円舞曲 福田尚代×木村幸恵>展の展覧会カタログ。

テキスト
「<ゆうれい>と言霊、そしてワルツはつづく」鷹見明彦(美術評論家/αmプロジェクト2007キュレーター)
「榎倉康二先生との思い出」福田尚代
福田尚代 回文8点
図版20点(福田尚代10点、木村幸恵10点)、作家略歴、すべて英訳付収録。

入手日:2007年11月10日
入手場所:東京画廊
武蔵野美術大学芸術文化学科がコーディネイトするαmプロジェクト2007の第3弾。今回の出品作家は言葉をモチーフとしたインスタレーション、回文で知られる福田尚代と映像、パフォーマンスの木村幸恵の2人展。<Tokyo WALTZ>というタイトルは、開催場所が東京画廊であることと、出品作家のひとり福田尚代の東京芸大時代の恩師が東京画廊と縁のある榎倉康二であること、木村幸恵のインスタレーションにワルツをモチーフとした作品があることから、このようなタイトルになったと思われる。
福田尚代氏の作品は2003年以降ほとんどの作品を見ているが、初期から近作までをまとまって見ることができたのは今回が初めてだった。東京藝大の卒業制作作品からその後の回文による作品まで、一貫して言葉をモチーフとした作品を制作している。文庫本を用いた「翼あるもの」(2003)は、一冊の書物の中からある一行だけを取り出す営為であり、その言葉の引用、用い方に鮮烈な印象を憶えた記憶がある。膨大な言葉の集積である書物から、ひとつの言葉を取り出すこと。1冊の文庫本が、形は小さいが中身は大きいことを視覚的に感じさせてくれる。その「大きさ」は、言葉の量であり、ひとつの言葉を取り出すにいたる「時間」だ。
木村幸恵の作品は今回が初見。「コッカ、カイガ」(2004)は岸田劉生の麗子像に扮した木村がどもりながら「コッカ、カイガ(国家、絵画)・・・」と繰り返すパフォーマンスだ。その諧謔味のある内容は、発する言葉の暗く重たい歴史を解き放ち、呪文のように意味を剥奪する。「ダンスレッスン」(2005)では、一転淡い光の中で、木村は透明な素材で作られた浮遊する人体とワルツを踊る。一見すると逆光のため、踊る木村の動きは影絵のように黒く見える。その影となった人物は透明な人体を相手に踊るため、まるでパントマイムのようにひとりでワルツを踊っているように見えるから不思議だ。ここでも踊りの形式は剥奪され、一人遊びのように無意味に身体の動きだけが残される。空回りする言葉、空回りする動き。見る者は2人の作家のひそやかな営為に、寄り添うようにワルツを踊ることになるだろう。

福田尚代 展覧会情報

福田尚代展「無の語の詩」あるいは「雪の中の僧院」
2007年11月23日(金・祝)-12月16日(日)
T&S gallery