サッカールーの何でもござれ

サッカーとオーストラリアに関するサッカールーのエッセイです

やり残したもの

2011-08-05 19:03:19 | Weblog

松田直樹が34才の若さで逝ってしまった。マリノスを放出されてJFLの松本に加入し、J2昇格を目指すという男気を見せたわけだから、この時期に死んでしまったことは無念であったことだろう。

人間を長くやっていると寿命に関係なくもう十分生きたなと感じることがある。これは人生に疲れたとかそういう大げさな意味ではなく、人間は絶対に死ぬわけだし、もうやり残したことがないのでもういいですよという心境なのだ。

別に自殺したいとは思わないが、さほど長生きしたいとも思わない。それが天命であれば別に今すぐ死んでもかまわない。まあ自分の人生を振り返ればいいことも悪いこともあったし、可もなく不可もなくだった。それでいいんじゃないかな。

松田の場合は34才という若さだからまだまだやり残しはあったはずだ。サッカー選手として現役を続行することにこだわっていたわけだし、家族も残してしまった。だから松田がこれが天命だから、これでいいのかと思ったかどうかは分からない。

2002年WCの初戦のベルギー戦で松田はDFラインから執拗に前線にロングフィードを蹴りこんだ。これがことごとく長すぎてゴールラインを割るか、サイドに出てしまった。サイドバックの上がりに期待してそうしているのかと思ったが、そうでもなかった。一体何のためのロングフィードなのか理解できなかったが、中田ヒデがあれは戦術だったと言っていたので、そんなもんかと思った。今考えても戦術的にも理解できないロングフィードだった。

松田の16年以上の現役生活の中で一番輝いた瞬間はあのロングフィードだったと思う。無意味なロングフィードだけど、ベルギーのサイドバックを上げさせないという意味も多少はあったろうし、ゴールラインまで届いてしまうロングフィードをしつこく続けた松田に、不器用な彼の人生をだぶらせた。

追悼、松田直樹。


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