怠慢主婦 ドイツで同居 

日本食を食べなくなり義両親のしもべと化し、すでに何年になるだろう。遠い目しながら今日も行き抜いてやるぞっ

読み書きそろばんだけでは生き抜くのが難しい昨今かも

2019年09月02日 | 奉仕活動
「Sさんは運転免許試験だめだったのよねぇ。それじゃあ、仕事を見つけるのは難しいね」
80歳のドイツ人女性E子さんが言った。
Sさんは在独10年近くになるアフガニスタン人難民だ。長いこと滞在許可取得に翻弄され、数ヵ月ごとの許可申請で心身をやられていた。
最近、無事にEU国籍女性との間に子供ができ、滞在許可に関しては問題がなくなった。(この二人、それでもまだ結婚しないのよねぇ。もう、婚姻という制度は崩壊してもいいのかもしれない)
一息つけたものの、今度は父親として、もっとまともな仕事に就かなければならないだろう。お相手の女性は在独6,7年だが凄まじい速さでドイツ語をマスターし、幼稚園勤務をしている。前夫との間に娘がいて、その子は赤ちゃんに夢中だ。
幸せいっぱいの四人だ。
ドイツ人E子さんはその様子を真正面から観察して、Sさんの就業を強く望んでいる。

Sさんは運転はできるのだが、筆記試験(タブレットを使った選択式試験らしい)がだめなようだ。話すドイツ語は凄まじく流暢なのだが、読み書きはあまり得意でないらしい。
アフガニスタン人男性は母国で日本の義務教育程度の就学期間があるようなのだが、何しろ40年間戦争をしている国だ。まともに落ち着いて勉強できる環境ではなかったのだろう。

昔「教育は小学校まででいい、読み書きそろばんができればいいんだ」と説いていた人がいた。
その当時、わたしも彼の意見に賛成だったものだ。高等学校の学習内容など、非常に高度で生活に応用できるものなどあまりない。大学進学のための能力振り分け機能学校だとも思っていた。

20歳前後の頃、私は通信制高等学校で学ぶ大人たちの勉強を手伝ったことがある。一ヶ月に一度程度だったか。
高等学校の内容とはいえ、例えば英語などは完璧に中学校レベルだった。数学も中学校程度だったように記憶している。
英語の、ごく簡単な文法など、理解は誰にでもできることを知った。誰にでもわかるのだけれど、では、その知識を応用して問題を解かせると、全くできない、という事態に私は苦労した。その時、私が感じたのは「大人になって勉強するのは無理だ」ということだ。
集まっていた大人たち(私も一応、成人していた大人だったので、年長者たち、とでも表現したらいいか)は、さまざまな事情で高校へ行かなかった人々だった。
若い人の中には(ティーンエイジャー)宗教上の理由や、通っていた全日制学校(お金持ち私学!)の方針に従えなくなって転校してきた、というのがあったなぁ。
ティーンたちは問題なかったが、大人たちの指導は苦労した。プライドを傷つけないよう、年長者ということで持ち上げながら何度も繰り返して説明・・・
結構上手にやっていたと思う、私。

この昔の経験と、今、あまり教育を受けることができなかった難民たちのドイツ語習得事情や運転免許取得状況を観察した結論を最近出した。
小学校に通っただけでは足りない。
ハイティーンの年齢くらいまで、強制的に勉強させる環境は必要なのではないか、と考えるようになったんだ。

全く学校へ行ったことがないアフガニスタン人女子たちのドイツ語レベルは、あまり高くない。母語で読み書きができないのは、外国語習得にも差し障る傾向があるんだ。

Sさんは普通より頭脳の能力が高いと誰しも感じるが「試験」という彼の人生であまり縁のなかったものにはその能力を発揮できなかったのではなかろうか。勉強のコツ、というのだろうか、そうした習慣が身に付くのはかなり長い教育期間が必要なのかもしれない、と思うようになってきたんだ。

小学校卒業程度の学力で上手く人生をやっていける人など大勢いるだろう。
そういう才能に恵まれた人は別だ。ごく、普通の能力の人々はもう少し長く、学校などで机に向かう、何かを計算する、暗記する、という作業の訓練をしなくては、将来何が起こるかわからないこの世の中に不利だとおもう。
私のような計画していなかった国際結婚、日本ではあまりありえないだろうが、国の凋落や戦争による海外移住。(中南米には戦後直後大勢が日本から移住した)夫のように、前職に希望を見出せず、再び試験のために猛勉強しなくてはならない人など大勢いるだろう。

この私も不利な傾向の一人かもしれない。ドイツ語習得、だめね・・・
最近は夫からも「ドイツ語、もっと勉強してくれ」と懇願されるようになってしまった。勉強漬けだった彼の半生からみると、私は何も学んでいないと思われているだろうなぁ

Sさん、もう一度試験、受けてみたら?受けないのかな?運転免許があるのとないのとでは応募できる仕事の幅が違ってくるぞ?


親族の敷地内にある仕事場。

義父の仕事場もそうなのだが、意外と乱雑なんだ。
ドイツ人、もっときれいにしているのかと思った。きれいなのは住まいだけ。工事現場など乱雑の極みだし。