飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」「万里一空」「雲外蒼天」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

一寸法師の秘密 1

2024年09月22日 05時28分24秒 | 社会科
授業の名人と言われる先生がいらしゃる。
その先生の授業を目の当たりにして衝撃を受ける。
授業をつくる教材研究の仕方から、子どもたちの鍛え方、それは自分の想像以上の現実だった。
その一人が有田和正先生だった。
新採の頃、筑波大学附属小学校の研究発表会に参加させていただいた。
事前に有田先生の著書は何冊も読んでいたので、多少の知識やイメージはあったが、実際の授業はどうなのだろうと胸躍る気持ちで茗荷谷に駅におりた。
筑波の研究発表会には全国から先生方が参観に訪れる。
したがって通常の教室では参観者が入りきれない。
その日も、体育館のステージの上に机と椅子を並べて授業を行った。
付属の子たちなのだから当たり前なのかもしれないが、まったく普段と異なる環境においても臆することなく授業に集中する姿はすごいと思った。

そんな有田先生の有名な実践に「一寸法師」の授業がある。
その追試の記録である。

以下、学級通信より。

1学期の社会科は歴史を学習した。
内容は天下統一である。
戦国時代に入るところで「一寸法師」の授業をした。
なで、ここで一寸法師なのか。
象像できるだろうか。
この授業を発端として、追求が始まってほしいと願って行ったものである。

まず始めに、「一寸法師」の歌を聞かせた。
突然、小さな子どもたちが聞くような曲がかかったので子どもたちはびっくりしていた。
曲が終わり、次のように言った。

「今日は、一寸法師の勉強をします。
 あらすじを話しなさい。」

知っている子が半分。
知らないという子もいた。
全員に簡単なストーリーはおさえてほしいので、絵本の読み聞かせをした。

「今の話を大きく分けると4つの場面になります。
 どんな順序に並べたらよいでしょう。」

私が3日がかりで描いたへたな絵4枚を黒板に貼った。
いつも思うのだが、「もうちょっと上手に絵が書けるようになりたい」。
子どもたちの意見を聞きながら、4枚の絵の順序をそろえて並び替えた。

①小さな体
②都へ行く
③鬼退治
④姫をめとる

「一寸というのは約3cmです。
 こんな小さな人間がいるでしょう。
 いませんね。
 すると「小さい」ということは、どんなことを表しているのでしょう。」

ノートに考えを書かせ、発表させた。
私としては、「貧しい」「身分が低い」「力が弱い」というイメージをいだくだろうと予想した。
しかし、子どもたちは、どちらかというと「かわいい」「すばしっこい」といった、人形的、また、小動物的なイメージをもった。
私の質問が悪かった。
もう少し、戦国の世を意識させないと最初のような考えはなかなか出てこない。
修正するとすると、セオリー的には、制限か限定になる。
例えば、次のように問う。

「小さいの対義語は何ですか。」
・大きい
・偉大
・巨大

「小さい⇔大きいのイメージで聞きます。
 力に関して、このイメージだとどうなりますか。」
・力がない⇔力が大きい
・弱虫⇔強い力

「権力に関してはどうですか。」
・権力をもっていない⇔大きな権力をもつ

「身分についてはどうですか。」
・身分が低い⇔身分が高い

「経済的にはどうですか。」
・貧乏⇔お金持ち

こんな風に出てきたかも知れない。

saitani