三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

越後妻有・地域とアートのコラボ

2015年08月20日 07時29分51秒 | Weblog
さて、越後妻有トリエンナーレ見学の旅であります。
そのなかには、多くの建築も存在しています。
興味深い建築も数多く存在し、それぞれがまた、地域を形作っている。
地域の環境性と、芸術作品とのコラボレーションが
どんなかたちのイメージを造影するものか、
そんな興味を持って、さまざまな作品世界と触れてきました。

そんななかで一番興味を持てたのが、上の写真。
上の一枚は、「星峠の棚田」であります。
いろいろな「芸術作品」を見る度に、
むしろその背景になっている、地域の風土性と、
その地で長く生きてきた人びとの労働の積層である
「地域景観」とが、強くこころに響いてくるものがあります。
建築もそうだけれど、やはり棚田に代表される農業土木とは
食料生産という明瞭な目的、志向性を純化した人間の営為であり、
その「ものづくり」の姿勢というものが、
最大の「作品」であるということが自ずと知れる。
旅を終えて、いちばん胸に残ったのはその思いであります。
棚田というものの起源というのは、諸説があるそうですが、
Wikipediaでは以下のように記されている。(「」内引用)

「日本の稲作の適地は、安定した水利を得られることに加えて、
流れていく用水の管理が容易にできる土地である。
土地には元々傾斜があるが、傾斜が少な過ぎる土地、
および排水しづらい土地は湿地となるため、
安定した稲作を行うためには、一定の農学・土木技術が
必要であった。また、灌漑をする場合はある程度の傾斜が必要であり、
傾斜があまりにも少ない河川下流域の沖積平野は、
江戸時代以前は稲作をするのに不適当であった。すなわち、
近世以前の稲作適地は、比較的小規模で緩やかな沖積扇状地、
小規模な谷地、あるいは小規模で扱いやすい地形が連続する
隆起準平原上などが主力であり、いずれも河川の中上流域が中心であった。
これらの土地は緩やかな高低差があり、一つ一つの田の間に
明確な高低差が生じて広い意味での棚田を形成することになる。」

というような記載が見られます。
この魚沼産コシヒカリを産む棚田は、こうした合目的性を
叶えている人間による自然改造営為の総合であるワケですね。
そんな風に考えると、このトリエンナーレとは、
こうした営々とした人間営為の素晴らしさを表現するのに、
その機縁として、活かされて存在しているものだと思わされました。
背景としての棚田の圧倒的な量感・質感があってはじめて
アートという世界観もまた、存在し得るのだと思います。



そんなアート作品ですが、
やはり建築に興味を持つものとしては、
この「ポチョムキン」と命名されたフィンランドの建築家作品に惹かれた。
カサブランデ&リンタラ建築事務所のデザイン。
もとは河原に平行した「ゴミ捨て場」だった場所だそうですが、
周辺にはそれこそ見事な水田も開けていて
背景としての見事な色彩と陰影感、季節感を訴求している。
そういうなかに、白い玉砂利を敷き込めた領域を区切り、
寂びた鉄の壁が空間を切り取っている。
その地にずっと自生してきたケヤキの大木群が林立していて、
意志的な生物感を与えている。
この地域では、河川のコントロール(瀬変え)によって
造形され続けた棚田の別名である「瀬変え田」がもっとも
「土木建築的」な環境景観であると読み取り、
そのなかでそっと置かれるアートとしての穏やかさ、
意志的な存在感を感じさせてもらえました。
2003年の作品完成以来、愛され続けて
玉砂利から自生してくる雑草を地域のボランティアのみなさんが
毎日のように取り続けてきているそうです。
この美しさには、こういったひとの意志が感じられ、
今回の作品群のなかでも、深く心に残った次第です。





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