三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【ニセコの環境にかける「桟橋」 建築発表会-4】

2017年12月05日 06時21分59秒 | Weblog



いま北海道でもアブラが乗り切った設計者・大杉崇さん。
当社スタッフも設計依頼し、その家を見学したりで身近に感じています。
いちばん特徴的なのは、敷地条件のていねいな読み取り。
当社スタッフの家でも微妙な高低差のある敷地条件に対して
さまざまな生活シーンでの「グラデーション」を仕掛けていた。
「朝起きたときに、水平線から出てくる朝日を切り取って見る窓」
というようなきわめて具体的な役割を開口に与えていた。
設計の基本目線に人間の暮らし、その建て主のくらしようが見える。
そういった暮らしの端部に即して丁寧に応答する家づくりが特徴かと。
そうであるためには、設計者としての主張と言うよりも
むしろよき背景であろうというような建築側としての意志を感じる。
かれは、設備的にはパッシブ換気+暖房システムを採用していますが、
家中の見える場所から「暖房装置」がなくなって、しかも温熱がコントロールされる。
見えないけれど快適であろうとする姿勢がそこに表れている。

今回の発表会での作品も、そうした姿勢が表れた住宅でした。
名前がフランス語で、le pontとしゃれていて、桟橋という意味なんだとか。
なぜ、桟橋なのかと不思議に思って聞いていたら、
プレゼンでは周辺環境の解題にたっぷりと時間を掛けていって、
ニセコの四季変化、とくに冬の大量積雪のような変化を
「潮の満ち引き」というように捉えていた。
そのなかで時間の経過を楽しみながら過ごす家として、
敷地と四季変化の「高低差」に対して素直に、
桟橋のように、自然の中に「配置する」イメージの住宅を建てたということ。
同時に卓越風に対して素直に「受け流す」計画になっている。
平面も左右に長く、敷地に対してちょうど桟橋のように「掛けられて」いる。
こういった設計意図に即して、構造設計には山脇克彦建築構造設計が協力。
1階は2階の主要空間への導入動線確保に徹している。
こういう細長い平面は否応なく自然との対話が意図される。
1日の時間経過の隅々まで、立地環境の「潮の満ち引き」が感受されそう。
建築作品としては、非常に「安定的」な作りようで
主張的な部分は控えめには感じたけれど、
その意図を読み取っていくと、深みと広がりが感じられる住宅だと思いました。
ただ、当然ながら気になったのは2階の床下が中空になっている点。
たぶんUa値とかには反映されにくい部分で、熱的にはマイナスに作用するのではと
もう少しそのあたり聞いてみたいと思っていました。

外観の屋根形状も背景の山並みに傾斜角度的に親和させている。
なので、非常に周辺環境に馴染んでいる。
いまわたし的にテーマになっている「環境建築」という概念には、
こういった「地球に似合う、風景に溶け込んでいく」という視線もあるのではないか、
そんな意味合いも感じていた次第です。
コメント
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