三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

コンパクトな建築

2009年03月02日 06時52分00秒 | Weblog



今回発売しているRePlan最新号では、
「コンパクト」という特集をしています。
さまざまな住まいの機能を考えながら、集約的に住まうことの
豊かさについて、考えてみた特集。
おかげさまで、心理的に時代的な雰囲気をとらえている感じで
比較的、好調に販売が推移している実感があります。

写真は、江戸時代の東京での「渡し船」の船頭さんの客待ち小屋。
川崎市と、調布とを結んだ渡し船ということなので、多摩川を往復したのでしょう。
仕事のための小屋がけですが、
大きさは1間四方という1坪空間。出入り口から内部を見下ろしたところです。
狭すぎて、写真に納まりきらない?、のですが、
土間が半分で、自在鉤が降りてきて炉もあるようです。
茶を楽しんだりもしていたのでしょうね。
奥側に畳も敷かれて、その壁には小さな窓も開けられています。
その窓からは対岸側をのぞき込むようになっていて、
渡し船が到着するのを見張り、待っている様子が見て取れます。
場合によっては、客がこの場所で船を待ったりもしていたのでしょう。
昔のバス停とでもいえるのでしょうか。
究極的にコンパクトだけれど、
必要なものは過不足なく装置されているものと見受けられますね。
茶室っていう芸術表現を持っている文化の根幹に
抜けがたく、小ささへの潔い思いが感じられるのですが、
こういう機能を満たした空間って
そういう文化のゆりかごのように思えます。
立って半畳、寝て1畳。
その範囲に過不足なく、必要なものが納められていれば、
空間体験としては、豊かな感覚を味わうことが出来ると思います。
また、こういう狭い空間で人間が出会うと、
自ずから親近感の情が湧いてくるのも事実。
利休さんって、このいうことを茶室という表現に込めたのかも知れないと
思い至らされる次第です。

で、この建物、洪水の時などの時には
小屋ごと、背負って移動させることも出来る構造になっているそうです(!)。
そとに露出した柱に金物が付けられていて
それに棒を渡して背負える構造になっているのだとか。
そのため、土台は井桁状に組まれていて、
玉石状の「基礎」の上に載せられているだけ。
まぁ、究極的な「コンパクト」そのもので、
なんとも楽しくなる仕掛けなのです。
その様子を想像してみると、
なにか、やどかりさんのようで、おかしくユーモラス。



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