前から「いい家出来たんで、ぜひ来てください」と誘われていたSさん家。
断熱気密といった性能面の勉強に一生懸命取り組んで、
第3種換気採用の条件で、しかも北側面に主要な窓を開けているという悪条件ながら、
熱損失係数が1.3といういい結果が実現しています。
本誌リプランを「穴の空くほど見て、家づくりに生かしました(笑)」
といううれしいお言葉。
そんな言葉通り、素材の質感を重視したシンプルな空間を楽しんでいます。
室内はすべて塗り壁と木質の素地表しが基本。
そんななかに、眺望を重視して北上川方向に開けられた木製窓。
まさにピクチャーウィンドらしく、木製の額縁に
切り取られた冬の景観が、美しく2階居間一杯に広がっています。
展勝地を見晴らす高台に位置していますが、ごらんのように
周辺には豊かな自然景観が残されているので、
シンプルにこの景観を最大のごちそうにして、暮らされている家。
友人知人が足繁く訪ねてくれるようになったそうで、
そういう意味では、やはりいい家って、そのものズバリ、
「人生を豊かにしてくれる」、大きな投資であるのかも知れませんね。
ただ、単に、寝て起きて、育てて、という機能性だけでは
本当の住まいの価値というのはわからないのだと思います。
オール電化だけれど、あえて温水循環型のパネルヒーターを採用。
深夜電力だけの給湯で、暖房をまかなっています。
低温輻射なので、暖かさの質感、空気感もたいへんまろやか。
北国住宅としては、まずこういう空気感の良さが基本だと思いますね。
その上に立って、それと調和するように、
そこで暮らすことの満足感を十分に味わえる家、それが理想でしょうね。
考えてみれば、冬の暮らしを存分に楽しんでいる家、
そういうコンセプトが明確な家って、そう多くは取材できていない気がします。
やはりそういう意味では、北海道での家づくりの方が、
こういう部分では、ハッキリと明確に志向性が表れている気もします。
その土地の自然や、景観の良さを積極的に楽しむ、
暮らしに取り入れるという考えの家づくりに
もっと、たくさん巡りあいたいものだと思います。
北上の冬の美しさを、いっぱいに楽しめたお宅でした。