三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

蔵の引き戸

2006年07月24日 14時41分39秒 | Weblog
写真は先日の秋田県での取材先でのもの。
建物は日本海を見晴らす高台、という立地を活かした
眺望重視の住宅。設計施工の五蔵舎さんらしい雰囲気のある建物。
で、平屋で、玄関から廊下を通って、正面にこの引き戸があったのです。
寝室の入り口に使われていました。
いや、ずいぶん凝った建具を作ったモノだなぁ、と感心していたら
建て主さんが、「あ、それはですね・・・」と
喜々として説明していただけたんですね。

まぁ、もちろん造作ではなかったんですよ。
だって、すごいんです。重さだって半端じゃなくて
上下でレールを持たせているので、そこそこ不自由なく動くんですが
まさに、どっしりとした重量感。
重さは、100kgくらいはありそうな感じ。
厚さも相当なモノで、10cmほどはありそう。
枠の作りもごっついし、面も、板と言うよりは柱に使うような材料で仕上げられています。
で、聞いてみたら、これ、解体された古民家にあった
蔵の引き戸だったのだそうです。
たしか、本州中部の方から送ってもらったそうですが、
なんと、こういうのがインターネットで流通しているのだそうですね。
知らなかった。
破格値、ってどころじゃなくって、値段はまぁ、どうでもいいや、
という程度の値段。それを宅配便で
「大きさを伝えたら、その計算だけで持ってきてくれた(笑)」
ということで、ほとんどタダみたいな運送費で送ってきたモノだそうです。
はぁ~、上手にインターネットを利用しているものですね。
と、あっけにとられた次第です。

しかしまぁ、この引き戸、建物の中でひときわの存在感。
っていうか、この引き戸に合わせたインテリア空間ですね、完全に。
新築の住宅だけれど、渋くて、趣がたっぷりなわけです。
日本ではまだまだ、ピカピカの工業製品への信仰が強いのですが、
世界中、どこでも「オールドで重厚なもの」への価値観は共通。
探せば、こんなことがまだまだ実現できるでしょうね。
蔵の引き戸、って確かにいい目の付けどころだと思います。
こういうのって、作るのにたぶん相当、大枚なお金も
なにより、人手もかかっているものですから
時間が経ってくると、その価値観が高まってくるものだろうと思います。
間違っても、いまたくさん流通している工場出荷の建具なんか、
何年経っても、値が上がるなんてことはあり得ないはず。

「これは、財産ですね(笑)」
と、ほれぼれと立ち止まってしまった、重々しい引き戸でした。
でもね、宅配便屋のドライバーさん、本当にご苦労さま(笑)。
コメント
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