《前回までのあらすじ》
浅間山マグマ内に潜伏していた謎の巨大物体は、やっぱり使徒だった!
問題の第8使徒サンダルフォンがまだ覚醒していない「さなぎ」の状態であることを知ったネルフ本部は、耐熱耐圧に特化した「D型装備」をほどこしたエヴァンゲリオン2号機をマグマ内に潜行させてサンダルフォンを生け捕りにするという前代未聞の「A-17作戦」を発動させるのだが……?
とにかく、いつサンダルフォンが孵化するかもわからない状態だったため、今回のネルフはかなり迅速に作戦の準備を整えています。
当日、長野・群馬県境の浅間山火口付近に陣取ったのは、D型装備の2号機とそれを頂上から牽引するぶっといケーブル。2号機を冷やすために循環させる冷却液パイプもしっかりつなげられています。
2号機のサポートにまわっているのは、頂上でもしものために待機している初号機と、さらにもしものために使徒に唯一通用する通常兵器である「N2爆雷」を山積みにして上空を旋回している複数の国連軍爆撃機。
どうやら国連軍は、ネルフのA-17作戦が失敗した時点で、第8使徒をエヴァンゲリオンごと浅間山ごとふっ飛ばす腹づもりでいるようです。物騒ね~!
それはそれで、国連なりの人類の未来を考えた上での判断なのだからいいんですけど、問題なのはそれをなんのオブラートにも包まずにストレートでエヴァンゲリオンのパイロット2人に教えるネルフの技術主任ですよ!
初 「(上空の爆撃機を見て)なんですか? あれ……」
2 「手伝ってくれるの?」
金 「いえ、後始末よ。」
潔 「私たちが失敗した時のね。」
2 「……どういうこと?」
金 「使徒をN2爆雷で熱処理するのよ、私たちごとね。」
「初」と「2」はそれぞれのパイロット、「金」はしじゅう金髪染めにしている問題の技術主任、「潔」は清潔好きでとみに有名な技術主任の部下です。
いや、これからはりきって作戦をおっぱじめようとしてる2人に言ってどうすんのよ……相手は中学生なんだぜ。うち1人は大卒だけど。
もちろん、ウソをついたところでしょうがないというパツキン主任のドライな考え方もわかるんですけど、ここがネルフ作戦本部の重大な欠陥なんじゃないでしょうか。
アツすぎる作戦指揮官とドライすぎる技術主任、あやしすぎる総司令と枯れすぎの副指令……なーんか、みんなへだたりがあるんだよなぁ~。もっとお互いハラをわって地球を防衛しようよ! 週末に「和民」に行ったりしてさぁ。
そんなこんなでいささかのテンション低下をおぼえた2号機のドイツ娘なのですが、私がしっかりしなくちゃ人類の未来もないと、めげずに気を取り直して浅間山のマグマに潜行していきます。作戦開始!
先日に投入された浅間山地震研究所の無人観測機は、深度1000メートルまでの潜行が限界だったのに1300メートルまでムリをして行ってやっとサンダルフォンを発見、自分の身と引きかえに使徒の情報をつかんで散っていきました。えらい!
そして今回のD型2号機は、理論的には1500メートルまでへの潜行が可能になっています。これならサンダルフォンもラクに見つけられるわ。
……と、思われていたのですが。この前にいたはずの深度1300メートル地点に、サンダルフォンがいない!?
動揺する作戦本部。例のパツキン主任は、「マグマ内の対流に流されてもっと深い位置に移動しているのかも知れない。」と語ります。聞いてないよ~。
どうする? 作戦中止? いったん2号機引き上げる? 注目の作戦指揮官の決断は……
「まだ目標に接触していないわ。続けて!」
やっぱり~!! でも、今度は人が乗ってるんだぜ!?
しかし、そこは気丈なドイツ娘。彼女も心得たもので、
「ミサトの言うとおりよ。まだ大丈夫、いけるわ!」
とこたえます。えらいなぁ~!
結局、2号機が想定以上の圧力に機体をきしませながらやっとサンダルフォンのさなぎを発見したのは、深度1800メートル地点。
あらかじめ用意していた電磁ケージ(かごみたいなやつ)で、首尾よく巨大なさなぎをとらえて上昇をはじめる2号機。このままうまくいけば作戦成功だ。
だが、しっかし! そうは問屋がおろさなかった。
火口まであと100メートルをきった土壇場で、なんとサンダルフォンがさなぎから孵化してしまった! いやいや、「さなぎ」なんだから「孵化」じゃなくて「羽化」か!? いや、でもどう見ても外見が「羽化」っぽくないよ!
「バブ~!!(間にあった~!!)」
羽化したその姿は、先日に発見されたときの「人間の胎児」のような形態からは想像もつかないものに変貌していました。
体長はだいたい100メートルといったところなんですが……う~ん、魚? でも腕がついてるぞ。
視界がまったくきかないマグマの中、CTモニターを通して2号機が見たサンダルフォンの幼体は、まるで魚のカレイと古代生物アノマロカリスを足して2で割ったような形状。
全体的に茶色く平べったい身体、頭部の向かって右側に2つならんでついている「眼」(のような模様)。長い2本の腕と、マグマの中でも大きく開けることのできる鋭い歯のついた丸い口。あと、頭には最新戦闘機のレーダー受信機のような太く短い触覚(角?)も2本あります。
サンダルフォンはよっぽどマグマの中での活動に特化した体質なのか、羽化した瞬間に電磁ケージを食い破り、スイスイと気持ちよさそうにマグマをかきわけて2号機に攻撃をしかけてきます。
ここでちょびっと脱線させていただきたい!
カレイとは、広い意味では「平べったくて身体の左右どちらかに両眼がよっている魚」全般のこと(カレイ目の魚ぜんぶ)をいうのだが、狭い意味では「身体の右側に両眼がよっているカレイ」のこと(カレイ目カレイ亜目カレイ科)をさすんだって!
ちなみにヒラメとは、「身体の左側に両眼がよっているカレイ」だけのこと(カレイ目カレイ亜目ヒラメ科)をさす! まさに「左ヒラメに右カレイ」。
んで! 言葉で説明するのがムダに難しいのですが、身体の右側に両眼がよっている場合、上から見るとカレイの顔は「向かって右側に両眼、左側に口」がついているんですね。だから、サンダルフォンが似ているのは「カレイ」であって「ヒラメ」じゃないんです! どうでもいいですね~。どうでもいいですよ~。
ついでに世界で最大級のサイズのカレイは「オヒョウ」といいまして、体長2~3メートルにおよぶものもザラ、漁師もケガをするほど凶暴な肉食魚であるため、散弾銃で射殺してから漁船に引き上げることもあるんだそうですよ。ギョギョギョ!
あと、サンダルフォンに似ているもうかたっぽの「アノマロカリス」というのは、紀元前5億2000万~5億年前の「古生代カンブリア紀中期」に、地球の生態系の頂点にいたとされている地球史上初の肉食動物……だそうです。
おそらくは現在のエビの祖先にあたるんじゃないかと言われているこの生物は体長1~2メートル、腕とまではいかないものの、大きな2本の触手を動かして自分の丸い口に食べ物をかっこんでいく生活を送っていたようです。
余談ですが、カンブリア紀の生物はみーんな海の中に棲んでいるものだけで、生き物が陸地にあがってくるのはこのカンブリア紀からさらに1億年ほどたった「デボン紀」のこととなります。
いや~、失礼しました。さっさと本編に戻ることにいたしましょう。
……あ、あれ? なんか、ドイツ娘も作戦指揮官も中学生男子もみんな温泉につかってのんびりしてるよ? どこどこ、嬬恋? 天狗? 小瀬?
え! 終わっちゃったの!? 私が脱線してるあいだに、サンダルフォンやられちゃってた?
ちょっと時間を巻き戻しましょう。
「バブバブ~!!(なんだ、このぬいぐるみみたいなヤツは。俺の誕生祝いに死ね~い!!)」
魚に似た形状ということで、あの第6使徒ガギエルのように高速でマグマを泳ぎまわり、体当たりや噛みつきなどで2号機を終始圧倒したサンダルフォンだったのですが、さすがは大卒。ドイツ娘の機転の効いた奇策によってあえなく敗れてしまいます。
ドイツ娘がうまく利用したのは、D型装備の2号機に循環していた冷却液のパイプ。
マグマの高熱に耐えるために機体を冷やし続けていた冷却液のパイプをみずからプログレッシブナイフで切断した2号機は、冷却液が勢いよく噴き出る切り口をサンダルフォンの口に突っ込みます。
「バッ、バブォバブォバァ~!?(ぬおっ! な、なんだこれは!? ミルクじゃない? さ、さぶっ! 寒すぎる!! か、からだが芯からちぢこまるぅ~……)」
ドイツ娘は、超高温のマグマでの活動に順応しているサンダルフォンの体内に超低温の冷却液を注入することによって、急激な温度変化に耐えきれずにサンダルフォンの身体が崩壊するようにしむけたのです。
なるほど、「熱膨張の逆」をねらったわけですな!
たとえば、アツアツに熱したガラスのコップにキンキンに冷やした水を急にそそぐと、コップはいとも簡単に割れてしまう。危ないしもったいないから、マネしちゃいけないぞ!
これはまさに、かの『帰ってきたウルトラマン』の名エピソード『残酷! 光怪獣プリズ魔』で帰りマンがプリズ魔を倒す時に使った戦法の真逆ですね。さすがは庵野カントク!!
急速に身体が劣化し、ATフィールドもへったくれもなくなるサンダルフォン。2号機はすかさずプログナイフでとどめを刺します。
「ば、ばぶ~……(ちきしょう、短い生涯だったぜ。一度でいいから、おてんと様をあおいでみたかったなぁ……)」
あわれ、マグマの高温の中で微塵に朽ちていくサンダルフォン。あまりに早すぎる死。
せめてD型装備に大きな傷をつけて2号機もマグマの底に道連れにしたかったところなのですが、珍しく男気を発揮した初号機が素っ裸に近いB型装備のままで火口に飛び込み、全身を大やけどさせながらも2号機を救出するのでした。
さてさてこんな感じで、「使徒を生け捕りにする」という最終目的は果たせなかったものの、ネルフはなんとか第8使徒サンダルフォンを殲滅することができました。まぁ、結果オーライですよ。
しかし、サンダルフォンは惜しかったねぇ! なんてったって、羽化したばっかりというかなり不利な条件の中で2号機をあそこまで苦しめたんですからね。
残念ながら、「覚醒も暴走もしていないエヴァンゲリオンたった1機に負けた」という観点からいくと、あの第4使徒シャムシエルとならぶ不名誉な最弱キャラとなってしまうのですが(第6使徒と戦った時の2号機はドイツ娘と中学生男子とのダブルシンクロで覚醒している)、そこはそれ、だって「幼体」だったんですから!
ああ、もうちょっとネルフの作戦指揮官が常識人だったら。その結果A-17作戦が中断されていたり、そもそもサンダルフォンの発見すらされていなかったとしたら!
数日後、充分に成長して浅間山のマグマから出現した「真のサンダルフォン」は、間違いなく歴代最強の使徒になっていたことでしょう。
ただ、人間の胎児から魚に変態したサンダルフォンなんですから、今となっては地上に現れた時の「第3形態」は想像することもできないのですが……
惜しいなぁ~! ほんっとに惜しい!
あまり語られていないことなんですが、サンダルフォンって、明確な「コア」がどこにあるのかはっきりしてない初めての使徒だったんですよ。
使徒共通の弱点であるコアをちゃんと隠しているという点から見ても、サンダルフォンの将来有望のほどは明らかだったでしょう。
「未完の大器」第8使徒サンダルフォンよ、やすらかに眠れ。来世では立派な一人前の使徒になれよ~!!
浅間山マグマ内に潜伏していた謎の巨大物体は、やっぱり使徒だった!
問題の第8使徒サンダルフォンがまだ覚醒していない「さなぎ」の状態であることを知ったネルフ本部は、耐熱耐圧に特化した「D型装備」をほどこしたエヴァンゲリオン2号機をマグマ内に潜行させてサンダルフォンを生け捕りにするという前代未聞の「A-17作戦」を発動させるのだが……?
とにかく、いつサンダルフォンが孵化するかもわからない状態だったため、今回のネルフはかなり迅速に作戦の準備を整えています。
当日、長野・群馬県境の浅間山火口付近に陣取ったのは、D型装備の2号機とそれを頂上から牽引するぶっといケーブル。2号機を冷やすために循環させる冷却液パイプもしっかりつなげられています。
2号機のサポートにまわっているのは、頂上でもしものために待機している初号機と、さらにもしものために使徒に唯一通用する通常兵器である「N2爆雷」を山積みにして上空を旋回している複数の国連軍爆撃機。
どうやら国連軍は、ネルフのA-17作戦が失敗した時点で、第8使徒をエヴァンゲリオンごと浅間山ごとふっ飛ばす腹づもりでいるようです。物騒ね~!
それはそれで、国連なりの人類の未来を考えた上での判断なのだからいいんですけど、問題なのはそれをなんのオブラートにも包まずにストレートでエヴァンゲリオンのパイロット2人に教えるネルフの技術主任ですよ!
初 「(上空の爆撃機を見て)なんですか? あれ……」
2 「手伝ってくれるの?」
金 「いえ、後始末よ。」
潔 「私たちが失敗した時のね。」
2 「……どういうこと?」
金 「使徒をN2爆雷で熱処理するのよ、私たちごとね。」
「初」と「2」はそれぞれのパイロット、「金」はしじゅう金髪染めにしている問題の技術主任、「潔」は清潔好きでとみに有名な技術主任の部下です。
いや、これからはりきって作戦をおっぱじめようとしてる2人に言ってどうすんのよ……相手は中学生なんだぜ。うち1人は大卒だけど。
もちろん、ウソをついたところでしょうがないというパツキン主任のドライな考え方もわかるんですけど、ここがネルフ作戦本部の重大な欠陥なんじゃないでしょうか。
アツすぎる作戦指揮官とドライすぎる技術主任、あやしすぎる総司令と枯れすぎの副指令……なーんか、みんなへだたりがあるんだよなぁ~。もっとお互いハラをわって地球を防衛しようよ! 週末に「和民」に行ったりしてさぁ。
そんなこんなでいささかのテンション低下をおぼえた2号機のドイツ娘なのですが、私がしっかりしなくちゃ人類の未来もないと、めげずに気を取り直して浅間山のマグマに潜行していきます。作戦開始!
先日に投入された浅間山地震研究所の無人観測機は、深度1000メートルまでの潜行が限界だったのに1300メートルまでムリをして行ってやっとサンダルフォンを発見、自分の身と引きかえに使徒の情報をつかんで散っていきました。えらい!
そして今回のD型2号機は、理論的には1500メートルまでへの潜行が可能になっています。これならサンダルフォンもラクに見つけられるわ。
……と、思われていたのですが。この前にいたはずの深度1300メートル地点に、サンダルフォンがいない!?
動揺する作戦本部。例のパツキン主任は、「マグマ内の対流に流されてもっと深い位置に移動しているのかも知れない。」と語ります。聞いてないよ~。
どうする? 作戦中止? いったん2号機引き上げる? 注目の作戦指揮官の決断は……
「まだ目標に接触していないわ。続けて!」
やっぱり~!! でも、今度は人が乗ってるんだぜ!?
しかし、そこは気丈なドイツ娘。彼女も心得たもので、
「ミサトの言うとおりよ。まだ大丈夫、いけるわ!」
とこたえます。えらいなぁ~!
結局、2号機が想定以上の圧力に機体をきしませながらやっとサンダルフォンのさなぎを発見したのは、深度1800メートル地点。
あらかじめ用意していた電磁ケージ(かごみたいなやつ)で、首尾よく巨大なさなぎをとらえて上昇をはじめる2号機。このままうまくいけば作戦成功だ。
だが、しっかし! そうは問屋がおろさなかった。
火口まであと100メートルをきった土壇場で、なんとサンダルフォンがさなぎから孵化してしまった! いやいや、「さなぎ」なんだから「孵化」じゃなくて「羽化」か!? いや、でもどう見ても外見が「羽化」っぽくないよ!
「バブ~!!(間にあった~!!)」
羽化したその姿は、先日に発見されたときの「人間の胎児」のような形態からは想像もつかないものに変貌していました。
体長はだいたい100メートルといったところなんですが……う~ん、魚? でも腕がついてるぞ。
視界がまったくきかないマグマの中、CTモニターを通して2号機が見たサンダルフォンの幼体は、まるで魚のカレイと古代生物アノマロカリスを足して2で割ったような形状。
全体的に茶色く平べったい身体、頭部の向かって右側に2つならんでついている「眼」(のような模様)。長い2本の腕と、マグマの中でも大きく開けることのできる鋭い歯のついた丸い口。あと、頭には最新戦闘機のレーダー受信機のような太く短い触覚(角?)も2本あります。
サンダルフォンはよっぽどマグマの中での活動に特化した体質なのか、羽化した瞬間に電磁ケージを食い破り、スイスイと気持ちよさそうにマグマをかきわけて2号機に攻撃をしかけてきます。
ここでちょびっと脱線させていただきたい!
カレイとは、広い意味では「平べったくて身体の左右どちらかに両眼がよっている魚」全般のこと(カレイ目の魚ぜんぶ)をいうのだが、狭い意味では「身体の右側に両眼がよっているカレイ」のこと(カレイ目カレイ亜目カレイ科)をさすんだって!
ちなみにヒラメとは、「身体の左側に両眼がよっているカレイ」だけのこと(カレイ目カレイ亜目ヒラメ科)をさす! まさに「左ヒラメに右カレイ」。
んで! 言葉で説明するのがムダに難しいのですが、身体の右側に両眼がよっている場合、上から見るとカレイの顔は「向かって右側に両眼、左側に口」がついているんですね。だから、サンダルフォンが似ているのは「カレイ」であって「ヒラメ」じゃないんです! どうでもいいですね~。どうでもいいですよ~。
ついでに世界で最大級のサイズのカレイは「オヒョウ」といいまして、体長2~3メートルにおよぶものもザラ、漁師もケガをするほど凶暴な肉食魚であるため、散弾銃で射殺してから漁船に引き上げることもあるんだそうですよ。ギョギョギョ!
あと、サンダルフォンに似ているもうかたっぽの「アノマロカリス」というのは、紀元前5億2000万~5億年前の「古生代カンブリア紀中期」に、地球の生態系の頂点にいたとされている地球史上初の肉食動物……だそうです。
おそらくは現在のエビの祖先にあたるんじゃないかと言われているこの生物は体長1~2メートル、腕とまではいかないものの、大きな2本の触手を動かして自分の丸い口に食べ物をかっこんでいく生活を送っていたようです。
余談ですが、カンブリア紀の生物はみーんな海の中に棲んでいるものだけで、生き物が陸地にあがってくるのはこのカンブリア紀からさらに1億年ほどたった「デボン紀」のこととなります。
いや~、失礼しました。さっさと本編に戻ることにいたしましょう。
……あ、あれ? なんか、ドイツ娘も作戦指揮官も中学生男子もみんな温泉につかってのんびりしてるよ? どこどこ、嬬恋? 天狗? 小瀬?
え! 終わっちゃったの!? 私が脱線してるあいだに、サンダルフォンやられちゃってた?
ちょっと時間を巻き戻しましょう。
「バブバブ~!!(なんだ、このぬいぐるみみたいなヤツは。俺の誕生祝いに死ね~い!!)」
魚に似た形状ということで、あの第6使徒ガギエルのように高速でマグマを泳ぎまわり、体当たりや噛みつきなどで2号機を終始圧倒したサンダルフォンだったのですが、さすがは大卒。ドイツ娘の機転の効いた奇策によってあえなく敗れてしまいます。
ドイツ娘がうまく利用したのは、D型装備の2号機に循環していた冷却液のパイプ。
マグマの高熱に耐えるために機体を冷やし続けていた冷却液のパイプをみずからプログレッシブナイフで切断した2号機は、冷却液が勢いよく噴き出る切り口をサンダルフォンの口に突っ込みます。
「バッ、バブォバブォバァ~!?(ぬおっ! な、なんだこれは!? ミルクじゃない? さ、さぶっ! 寒すぎる!! か、からだが芯からちぢこまるぅ~……)」
ドイツ娘は、超高温のマグマでの活動に順応しているサンダルフォンの体内に超低温の冷却液を注入することによって、急激な温度変化に耐えきれずにサンダルフォンの身体が崩壊するようにしむけたのです。
なるほど、「熱膨張の逆」をねらったわけですな!
たとえば、アツアツに熱したガラスのコップにキンキンに冷やした水を急にそそぐと、コップはいとも簡単に割れてしまう。危ないしもったいないから、マネしちゃいけないぞ!
これはまさに、かの『帰ってきたウルトラマン』の名エピソード『残酷! 光怪獣プリズ魔』で帰りマンがプリズ魔を倒す時に使った戦法の真逆ですね。さすがは庵野カントク!!
急速に身体が劣化し、ATフィールドもへったくれもなくなるサンダルフォン。2号機はすかさずプログナイフでとどめを刺します。
「ば、ばぶ~……(ちきしょう、短い生涯だったぜ。一度でいいから、おてんと様をあおいでみたかったなぁ……)」
あわれ、マグマの高温の中で微塵に朽ちていくサンダルフォン。あまりに早すぎる死。
せめてD型装備に大きな傷をつけて2号機もマグマの底に道連れにしたかったところなのですが、珍しく男気を発揮した初号機が素っ裸に近いB型装備のままで火口に飛び込み、全身を大やけどさせながらも2号機を救出するのでした。
さてさてこんな感じで、「使徒を生け捕りにする」という最終目的は果たせなかったものの、ネルフはなんとか第8使徒サンダルフォンを殲滅することができました。まぁ、結果オーライですよ。
しかし、サンダルフォンは惜しかったねぇ! なんてったって、羽化したばっかりというかなり不利な条件の中で2号機をあそこまで苦しめたんですからね。
残念ながら、「覚醒も暴走もしていないエヴァンゲリオンたった1機に負けた」という観点からいくと、あの第4使徒シャムシエルとならぶ不名誉な最弱キャラとなってしまうのですが(第6使徒と戦った時の2号機はドイツ娘と中学生男子とのダブルシンクロで覚醒している)、そこはそれ、だって「幼体」だったんですから!
ああ、もうちょっとネルフの作戦指揮官が常識人だったら。その結果A-17作戦が中断されていたり、そもそもサンダルフォンの発見すらされていなかったとしたら!
数日後、充分に成長して浅間山のマグマから出現した「真のサンダルフォン」は、間違いなく歴代最強の使徒になっていたことでしょう。
ただ、人間の胎児から魚に変態したサンダルフォンなんですから、今となっては地上に現れた時の「第3形態」は想像することもできないのですが……
惜しいなぁ~! ほんっとに惜しい!
あまり語られていないことなんですが、サンダルフォンって、明確な「コア」がどこにあるのかはっきりしてない初めての使徒だったんですよ。
使徒共通の弱点であるコアをちゃんと隠しているという点から見ても、サンダルフォンの将来有望のほどは明らかだったでしょう。
「未完の大器」第8使徒サンダルフォンよ、やすらかに眠れ。来世では立派な一人前の使徒になれよ~!!
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