《前回までのあらすじ》
2012年のしめくくりとして、「12つながり」で『新世紀エヴァンゲリオン』の「第12使徒」を検証するというシーラカンス感覚を発動させたそうだいだったが、エヴァンゲリオン名物「謎また謎のミルフィーユ」によって、ブログをまるまる1回ぶん使っても第12使徒の登場する第16話にたどり着けないありさまだった!
これはもう……年またいじゃうか!?
う~ん、丸一日のお休みがほしいよね。でも、そんなぜいたくなもの、2012年中はもうないのよねぇ。ま、お仕事をたっくさんいただけるこの状況には本当に感謝しなければなりませんわな! それにしても、去年のクリスマス以降のヒマヒマ感がまことに懐かしい……
さてさて! 今回もどこまでお話が進められるのかはわかりませんけれども、雄雄しく『新世紀エヴァンゲリオン』の世界に突入してゆくことにいたしましょ~。2012年の終わりだけでは物足りない方々は、ぜひともこちらの古臭い2015年のほうへも足をお運びください。ほんとに古臭いから!!
前回は、第11使徒イロウルの「ネルフ本部侵入事件」と次なる第12使徒の出現までにどれほどの時間差があったのかを検証してみるということになったのですが、私としましてはまずそこを「およそ1ヶ月」と推測しておりまして、具体的にその2つのあいだにあった「第14・15話」でどのような時間が経過していたのかを見てみる、という途中で力尽きてしまいました。まず、イロウルの殲滅された第13話といよいよ謎なキーワードがもろもろ飛び出してくることとなった第14話『ゼーレ、魂の座』との間には、「約1週間」の経過があったのではないかとふんだんでしたっけね。
そこからの続きなのですが、その第14話と次の第15話『嘘と沈黙』との間には、さらに「約2週間」のひらきがあったのではなかろうかと、私そうだいは考えております。
やっぱり例によって、その決定的な根拠は劇中ではひとっつも提示されてはいないのですが、私が見逃せないと考えている状況証拠としましては、これはもうやっぱり「ネルフ関係者に蔓延する日常感とスケジュールの余裕」なんじゃないかと思うんだなぁ! これがものすごいんですよ、第15話は。
同じように「新しい使徒とのバトルが展開されないエピソード」ではありながらも、「人類補完委員会の緊急会議」だの「0号機専用パイロットの唐突なモノローグ」だの「0号機の異常暴走」だの「動き出すダミーシステム計画」だのと、これから進んでいく物語にたいする緊張感をあおる出来事が満載だった第14話とは打って変わって、第15話の方は冒頭にちょっとしたスパイサスペンス、そしてとびっきりの重要キーワードを最後に1コだけとっておくという構成になっていながらも、全体的にはかなりの~んびりま~ったりとした人間ドラマに終始しているように見受けられます。それはそれで、レギュラー声優陣の非凡な実力が堪能できる素晴らしいエピソードではあるのですが……私が大好きなのは人類じゃなくて使徒だからなぁ~。
具体的にいきますと、第15話で展開される出来事は「2号機専用パイロットの保護責任者として配属されてきたおじさんが日本政府のスパイであることが明らかになる」、「ネルフの作戦指揮官とエヴァンゲリオン計画開発主任(とスパイのおじさん)が出席する友人の結婚式」、「怪しい総司令とその息子の初号機パイロットがいっしょに墓参り」、「2号機専用パイロットの気のないデート」、そしてオーラスの「ネルフ本部の最深部・ターミナルドグマに隠された白い巨人が初登場」。こういったあたりになりますね。
劇中で最近のネルフ本部がどんな空気感になっているのかを発言しているのは、エヴァンゲリオンに実際に登場しない形でのシンクロテストを終えたあとで2号機パイロットが「あ~あぁ、テストばっかでつまんなぁ~い!」とグチっていたことくらいしかないのですが、だいたいそれだけで充分であるような気もするくらい、全体的に「今週は使徒が来ないからのんびりしよっかぁ。」みたいなのんびり感があるんですよねぇ、この第15話は。
ともかく、ネルフの総司令から専用パイロットにいたるまでがプライベートな行動をとることを許されており、果ては作戦指揮官がハレの席だとは言え、友人の結婚式のために日中から日がかわる深夜過ぎにまで本部をあけている(しかも泥酔状態で帰宅)という事態は、怠慢では決してなく、第11使徒イロウルの脅威が去ってから何もない日々がかなり続いたことからくる、「もうしばらく使徒は来ない。」という確信に基づいた判断なのではないのでしょうか。ともかくことは人類の存亡にかかわるわけなのですから、私はそう信じたいです……
こういった状況から、私は第15話の時間設定を第14話の2週間後、つまり第11使徒の襲来から3週間後のことと推測いたしました。けっこういい感じかとは思うんですが、なにしろ証拠がひとっつもねぇんだからしかたがねぇ!
我が使徒検証シリーズにかぎっていえば余談なのですが、この第15話は、スパイのおじさん役の山寺宏一さん、作戦指揮官役の三石琴乃さん、開発主任役の山口由里子さん、2号機専用パイロット役の宮村優子さんらの声優としてのポテンシャルがいかんなく発揮された名エピソードとなっています。特に山寺・三石ペアのやりとりが非常に味わい深くてステキなのですが、この出来事が観られるのが TVシリーズの『新世紀エヴァンゲリオン』だけ! というところがいいんだよなぁ~。マンガ版にも『新劇場版シリーズ』にもない、荒削りな TVシリーズならではの視点・楽しみ方の多さを証明する名シーンなのではないのでしょうか。
また、これ以降の物語の中での「2号機パイロットのエース格からの残酷すぎる転落」のはじまりを知る上でも、具体的にはなにも起きてはいないものの、確実に何かが崩壊してきている彼女の「喪失」を非常に鮮明に描写しているこの第15話は、ものすごい重要度を持っていると思います。あのやりとりは、初号機パイロットが悪い。
さらに余談なのですが、この回の中で30手前の友人たちの結婚式ラッシュについて作戦指揮官と開発主任がダベっている、いかにものんきなシーンがあるのですが、このときに主任が話しながらいじっているコンピューターパネルが、な~んかおもしろいです。
なにがおもしろいって、画面上はカメラ位置の関係でパネル自体の構造は見えないのですが、主任がいじるたんびに「ぎーっ、ぎーっ」っていう「ダイヤルが回っているような音」が聞こえてくるんですね。
「しょっちゅうダイヤルをまわす必要のあるコンピューターパネル」……2012年の段階ではかなり絶滅危惧な機材になっていると思うんですが、2015年にはブームが再燃するのでしょうか。このシーンにかぎったことではないのですが、こういうのがあるから1990年代後半につくられた『新世紀エヴァンゲリオン』は、おもしろいんですよねぇ~。今となっては、2号機専用パイロットが使っていた「折りたたまないストレート型の携帯電話」だってクラシックなアイテムになっちゃってるんですからねぇ。風化してゆく小道具を楽しむのも一興というものです。
さてさて、おまんたせいたしました!! そして本題の第16話『死に至る病、そして』であります。
まず最初に、さっきまでと同じように第16話の時間軸を決めておきましょう。
これまた例によってはっきりした確定要因は物語の中にいっさい出てこないのですが、ここもわたくしめの独断で決めるのならば、第15話の1週間後、つまりは第13話の第11使徒イロウルの襲来&殲滅から「1ヵ月後」のことなんじゃないかと推定させていただきます。
その根拠はただひとつ、「作戦指揮官とスパイのおじさんの交際についての周囲の反応の感じ」です。手札がこれしかないっていうのが、にんともかんともキビシ~っ!
3~4ヶ月前に2号機専用パイロットとともに日本に帰国したおじさんが、大学時代の作戦指揮官の彼氏だったということはすでに明らかとなっていたのですが、そのヨリが戻ったのが第15話の友人の結婚式のあとの深夜のことで、この時点では2号機専用パイロットただひとりがその事実に気づきはするものの、本人たちにそのことを問いただすことさえできないようなショックに襲われるという演出がなされています。
ところが第16話になると、2号機専用パイロットは来日前から好きだったおじさんを奪っていった(と勝手に解釈している)作戦指揮官にたいして敵意をあらわにした発言を堂々と言い放ち、言われた作戦指揮官も「そんなんじゃないわよ~」と軽く受け流すという、おじさんと作戦指揮官との関係がかなりおおっぴらになった空気がただよっているのです。ちなみにこの2人のやりとりは、初号機専用パイロットの中学生男子もいる部屋の中でなされていますが、彼はすでにその情報を把握しているようでなんのショックも受けていないご様子。ともあれ、そんな「柳に風」な作戦指揮官の態度に2号機専用パイロットはさらに激昂し、彼女の不満は同居している作戦指揮官と初号機専用パイロットの生活全体のことにまで拡大していってしまいます。
「最近ミサト(作戦指揮官)、シンジ(初号機専用パイロット)に甘すぎるんじゃない!?」
「加持さん(スパイのおじさん)とヨリが戻ったからって、他人に幸せ押しつけないでよねェ~」
「どうせ私は、フケツな大人の付き合いなんてしたことないわよ!」
「なによ、保護者ぶったりしてさぁ。偽善的! ヘドが出るわ!!」
この2号機専用パイロットの一連の発言は、言葉だけをこうやってながめると、地球人類の存亡にかかわる超重要な役割をになっている特殊防衛チーム内の人間関係としてはかなり最悪な状況におちいっていることを明確にあらわしていますし、「保護者ぶってる」もなにも、本当に14歳のガキンチョ2人の生活を保護している(が、料理はしない)作戦指揮官に対して、これ以上の指図は受けたくないという決定的な絶縁宣言のようにも解釈できてしまう大変な内容になっています。
ところが! そんな思いのたけをぶつけられた当の作戦指揮官と初号機専用パイロットはそうとうに冷めた表情で「あぁ、また始まった……別に家出する気もないくせに。」くらいにしか受け取っていない様子で、言った彼女本人も、どうやらその後はふつうにお風呂に入りに行ったようです。なんか、この辺のどうしようもないとっつきにくさが実に「惣流さん」ですよね……今の「式波さん」はもっと賢くなっちゃったから。
なんでしょうか、この緊張感のなさ!! 4~5ヶ月前に本当に家出をした初号機専用パイロットの事件が懐かしく思えてしまうダラダラっぷりです。うぬら、よもや人類の大敵たる使徒の脅威を忘れたのではあるまいな!?
まぁこんなていたらくで、この、第16話のサブタイトル前にあたる1分20秒ほどのコミカルなシーンは、前週の第15話後半でのシリアスな大人の会話や、ラストの衝撃の白い巨人登場シーンで作り上げられた緊張感を見事にぶち壊す、放送順を間違えたかのようなのんびり感をかもし出しており、その後のネルフ本部内のシーンでも、第15話ではカヤの外だった開発主任がおじさんがらみのネタで作戦指揮官をからかう発言をしています。もちろん、この会話のときにも周囲には聞こえる範囲にネルフ所属の通信オペレーターが2名いました。第9使徒マトリエルが襲来した時にエレベーターの中でからみあっていた(誤解)作戦指揮官とおじさんを見て「フケツ……」とつぶやいていた女性オペレーターが今回の会話に関してまったくノーリアクションであることを考えれば、この交際の事実は第16話の時点でネルフ本部内でかなり浸透していた情報だった、ということになるのではないのでしょうか。なんか……せまさが実に日本的!!
つまり、第15話と16話のあいだには、この「2人の交際が再開した」という、人類にとっても使徒にとってもファッキンどうでもいい情報が広まるタイムラグが必要だったわけで、おそらくこれはおじさんのほうのチャラチャラした言動が媒介になったのでしょうが、それが誰も驚かない周知の事実となるのに1週間くらいの時間が経過していたのではないか、と私は推測したわけだったのです。
いやぁ、ずいぶん長々と失礼いたしました……ともかく、我が『長岡京エイリアン』の観測といたしましては、今回とりあげる第16使徒の襲来した日は、それぞれの中間エピソードごとに「1+2+1=4週間」ということで、第11使徒イロウルのネルフ本部侵入事件から「およそ1ヶ月後」のことである、と決定させていただくこととします。なにはなくとも、時間経過をはっきり示さない原作サマが悪いんだよ~う! ということでちゃっちゃとお話を前進させていきましょう。ンも~これ、慢☆画太郎先生の『珍遊記』なみに進みが遅いよ!!
とにもかくにも、第16話についてのあれこれを考えていく上でまず念頭においておかなくてはならないのは、ネルフ本部全体、特にエヴァンゲリオンに直接かかわる初号機・2号機専用パイロットと作戦指揮官が対使徒というポイントにおいてそうとう「コンディションを落としていた」という点です。ネルフ本部は前回の使徒襲来から1ヶ月の時がたつうちにかなり緊迫感を失っており、ことエヴァンゲリオンの実戦運用に関しては、前々回の第10使徒サハクィエルの奇跡的殲滅から1ヶ月半のあきがあったということ。ここなんですよね。
さぁそれでは、久しぶりに「人間同士のごたごたもいいけど、たまには使徒もね☆」という気概を持って第3新東京市に出現した待望の第16使徒についてのあれこれは……
また次回のココロだぁ~!! ひえ~。
……結局2013年に持ち越しになっちゃった。『新世紀エヴァンゲリオン』の人間ドラマは奥が深いです、ほんと……
2012年のしめくくりとして、「12つながり」で『新世紀エヴァンゲリオン』の「第12使徒」を検証するというシーラカンス感覚を発動させたそうだいだったが、エヴァンゲリオン名物「謎また謎のミルフィーユ」によって、ブログをまるまる1回ぶん使っても第12使徒の登場する第16話にたどり着けないありさまだった!
これはもう……年またいじゃうか!?
う~ん、丸一日のお休みがほしいよね。でも、そんなぜいたくなもの、2012年中はもうないのよねぇ。ま、お仕事をたっくさんいただけるこの状況には本当に感謝しなければなりませんわな! それにしても、去年のクリスマス以降のヒマヒマ感がまことに懐かしい……
さてさて! 今回もどこまでお話が進められるのかはわかりませんけれども、雄雄しく『新世紀エヴァンゲリオン』の世界に突入してゆくことにいたしましょ~。2012年の終わりだけでは物足りない方々は、ぜひともこちらの古臭い2015年のほうへも足をお運びください。ほんとに古臭いから!!
前回は、第11使徒イロウルの「ネルフ本部侵入事件」と次なる第12使徒の出現までにどれほどの時間差があったのかを検証してみるということになったのですが、私としましてはまずそこを「およそ1ヶ月」と推測しておりまして、具体的にその2つのあいだにあった「第14・15話」でどのような時間が経過していたのかを見てみる、という途中で力尽きてしまいました。まず、イロウルの殲滅された第13話といよいよ謎なキーワードがもろもろ飛び出してくることとなった第14話『ゼーレ、魂の座』との間には、「約1週間」の経過があったのではないかとふんだんでしたっけね。
そこからの続きなのですが、その第14話と次の第15話『嘘と沈黙』との間には、さらに「約2週間」のひらきがあったのではなかろうかと、私そうだいは考えております。
やっぱり例によって、その決定的な根拠は劇中ではひとっつも提示されてはいないのですが、私が見逃せないと考えている状況証拠としましては、これはもうやっぱり「ネルフ関係者に蔓延する日常感とスケジュールの余裕」なんじゃないかと思うんだなぁ! これがものすごいんですよ、第15話は。
同じように「新しい使徒とのバトルが展開されないエピソード」ではありながらも、「人類補完委員会の緊急会議」だの「0号機専用パイロットの唐突なモノローグ」だの「0号機の異常暴走」だの「動き出すダミーシステム計画」だのと、これから進んでいく物語にたいする緊張感をあおる出来事が満載だった第14話とは打って変わって、第15話の方は冒頭にちょっとしたスパイサスペンス、そしてとびっきりの重要キーワードを最後に1コだけとっておくという構成になっていながらも、全体的にはかなりの~んびりま~ったりとした人間ドラマに終始しているように見受けられます。それはそれで、レギュラー声優陣の非凡な実力が堪能できる素晴らしいエピソードではあるのですが……私が大好きなのは人類じゃなくて使徒だからなぁ~。
具体的にいきますと、第15話で展開される出来事は「2号機専用パイロットの保護責任者として配属されてきたおじさんが日本政府のスパイであることが明らかになる」、「ネルフの作戦指揮官とエヴァンゲリオン計画開発主任(とスパイのおじさん)が出席する友人の結婚式」、「怪しい総司令とその息子の初号機パイロットがいっしょに墓参り」、「2号機専用パイロットの気のないデート」、そしてオーラスの「ネルフ本部の最深部・ターミナルドグマに隠された白い巨人が初登場」。こういったあたりになりますね。
劇中で最近のネルフ本部がどんな空気感になっているのかを発言しているのは、エヴァンゲリオンに実際に登場しない形でのシンクロテストを終えたあとで2号機パイロットが「あ~あぁ、テストばっかでつまんなぁ~い!」とグチっていたことくらいしかないのですが、だいたいそれだけで充分であるような気もするくらい、全体的に「今週は使徒が来ないからのんびりしよっかぁ。」みたいなのんびり感があるんですよねぇ、この第15話は。
ともかく、ネルフの総司令から専用パイロットにいたるまでがプライベートな行動をとることを許されており、果ては作戦指揮官がハレの席だとは言え、友人の結婚式のために日中から日がかわる深夜過ぎにまで本部をあけている(しかも泥酔状態で帰宅)という事態は、怠慢では決してなく、第11使徒イロウルの脅威が去ってから何もない日々がかなり続いたことからくる、「もうしばらく使徒は来ない。」という確信に基づいた判断なのではないのでしょうか。ともかくことは人類の存亡にかかわるわけなのですから、私はそう信じたいです……
こういった状況から、私は第15話の時間設定を第14話の2週間後、つまり第11使徒の襲来から3週間後のことと推測いたしました。けっこういい感じかとは思うんですが、なにしろ証拠がひとっつもねぇんだからしかたがねぇ!
我が使徒検証シリーズにかぎっていえば余談なのですが、この第15話は、スパイのおじさん役の山寺宏一さん、作戦指揮官役の三石琴乃さん、開発主任役の山口由里子さん、2号機専用パイロット役の宮村優子さんらの声優としてのポテンシャルがいかんなく発揮された名エピソードとなっています。特に山寺・三石ペアのやりとりが非常に味わい深くてステキなのですが、この出来事が観られるのが TVシリーズの『新世紀エヴァンゲリオン』だけ! というところがいいんだよなぁ~。マンガ版にも『新劇場版シリーズ』にもない、荒削りな TVシリーズならではの視点・楽しみ方の多さを証明する名シーンなのではないのでしょうか。
また、これ以降の物語の中での「2号機パイロットのエース格からの残酷すぎる転落」のはじまりを知る上でも、具体的にはなにも起きてはいないものの、確実に何かが崩壊してきている彼女の「喪失」を非常に鮮明に描写しているこの第15話は、ものすごい重要度を持っていると思います。あのやりとりは、初号機パイロットが悪い。
さらに余談なのですが、この回の中で30手前の友人たちの結婚式ラッシュについて作戦指揮官と開発主任がダベっている、いかにものんきなシーンがあるのですが、このときに主任が話しながらいじっているコンピューターパネルが、な~んかおもしろいです。
なにがおもしろいって、画面上はカメラ位置の関係でパネル自体の構造は見えないのですが、主任がいじるたんびに「ぎーっ、ぎーっ」っていう「ダイヤルが回っているような音」が聞こえてくるんですね。
「しょっちゅうダイヤルをまわす必要のあるコンピューターパネル」……2012年の段階ではかなり絶滅危惧な機材になっていると思うんですが、2015年にはブームが再燃するのでしょうか。このシーンにかぎったことではないのですが、こういうのがあるから1990年代後半につくられた『新世紀エヴァンゲリオン』は、おもしろいんですよねぇ~。今となっては、2号機専用パイロットが使っていた「折りたたまないストレート型の携帯電話」だってクラシックなアイテムになっちゃってるんですからねぇ。風化してゆく小道具を楽しむのも一興というものです。
さてさて、おまんたせいたしました!! そして本題の第16話『死に至る病、そして』であります。
まず最初に、さっきまでと同じように第16話の時間軸を決めておきましょう。
これまた例によってはっきりした確定要因は物語の中にいっさい出てこないのですが、ここもわたくしめの独断で決めるのならば、第15話の1週間後、つまりは第13話の第11使徒イロウルの襲来&殲滅から「1ヵ月後」のことなんじゃないかと推定させていただきます。
その根拠はただひとつ、「作戦指揮官とスパイのおじさんの交際についての周囲の反応の感じ」です。手札がこれしかないっていうのが、にんともかんともキビシ~っ!
3~4ヶ月前に2号機専用パイロットとともに日本に帰国したおじさんが、大学時代の作戦指揮官の彼氏だったということはすでに明らかとなっていたのですが、そのヨリが戻ったのが第15話の友人の結婚式のあとの深夜のことで、この時点では2号機専用パイロットただひとりがその事実に気づきはするものの、本人たちにそのことを問いただすことさえできないようなショックに襲われるという演出がなされています。
ところが第16話になると、2号機専用パイロットは来日前から好きだったおじさんを奪っていった(と勝手に解釈している)作戦指揮官にたいして敵意をあらわにした発言を堂々と言い放ち、言われた作戦指揮官も「そんなんじゃないわよ~」と軽く受け流すという、おじさんと作戦指揮官との関係がかなりおおっぴらになった空気がただよっているのです。ちなみにこの2人のやりとりは、初号機専用パイロットの中学生男子もいる部屋の中でなされていますが、彼はすでにその情報を把握しているようでなんのショックも受けていないご様子。ともあれ、そんな「柳に風」な作戦指揮官の態度に2号機専用パイロットはさらに激昂し、彼女の不満は同居している作戦指揮官と初号機専用パイロットの生活全体のことにまで拡大していってしまいます。
「最近ミサト(作戦指揮官)、シンジ(初号機専用パイロット)に甘すぎるんじゃない!?」
「加持さん(スパイのおじさん)とヨリが戻ったからって、他人に幸せ押しつけないでよねェ~」
「どうせ私は、フケツな大人の付き合いなんてしたことないわよ!」
「なによ、保護者ぶったりしてさぁ。偽善的! ヘドが出るわ!!」
この2号機専用パイロットの一連の発言は、言葉だけをこうやってながめると、地球人類の存亡にかかわる超重要な役割をになっている特殊防衛チーム内の人間関係としてはかなり最悪な状況におちいっていることを明確にあらわしていますし、「保護者ぶってる」もなにも、本当に14歳のガキンチョ2人の生活を保護している(が、料理はしない)作戦指揮官に対して、これ以上の指図は受けたくないという決定的な絶縁宣言のようにも解釈できてしまう大変な内容になっています。
ところが! そんな思いのたけをぶつけられた当の作戦指揮官と初号機専用パイロットはそうとうに冷めた表情で「あぁ、また始まった……別に家出する気もないくせに。」くらいにしか受け取っていない様子で、言った彼女本人も、どうやらその後はふつうにお風呂に入りに行ったようです。なんか、この辺のどうしようもないとっつきにくさが実に「惣流さん」ですよね……今の「式波さん」はもっと賢くなっちゃったから。
なんでしょうか、この緊張感のなさ!! 4~5ヶ月前に本当に家出をした初号機専用パイロットの事件が懐かしく思えてしまうダラダラっぷりです。うぬら、よもや人類の大敵たる使徒の脅威を忘れたのではあるまいな!?
まぁこんなていたらくで、この、第16話のサブタイトル前にあたる1分20秒ほどのコミカルなシーンは、前週の第15話後半でのシリアスな大人の会話や、ラストの衝撃の白い巨人登場シーンで作り上げられた緊張感を見事にぶち壊す、放送順を間違えたかのようなのんびり感をかもし出しており、その後のネルフ本部内のシーンでも、第15話ではカヤの外だった開発主任がおじさんがらみのネタで作戦指揮官をからかう発言をしています。もちろん、この会話のときにも周囲には聞こえる範囲にネルフ所属の通信オペレーターが2名いました。第9使徒マトリエルが襲来した時にエレベーターの中でからみあっていた(誤解)作戦指揮官とおじさんを見て「フケツ……」とつぶやいていた女性オペレーターが今回の会話に関してまったくノーリアクションであることを考えれば、この交際の事実は第16話の時点でネルフ本部内でかなり浸透していた情報だった、ということになるのではないのでしょうか。なんか……せまさが実に日本的!!
つまり、第15話と16話のあいだには、この「2人の交際が再開した」という、人類にとっても使徒にとってもファッキンどうでもいい情報が広まるタイムラグが必要だったわけで、おそらくこれはおじさんのほうのチャラチャラした言動が媒介になったのでしょうが、それが誰も驚かない周知の事実となるのに1週間くらいの時間が経過していたのではないか、と私は推測したわけだったのです。
いやぁ、ずいぶん長々と失礼いたしました……ともかく、我が『長岡京エイリアン』の観測といたしましては、今回とりあげる第16使徒の襲来した日は、それぞれの中間エピソードごとに「1+2+1=4週間」ということで、第11使徒イロウルのネルフ本部侵入事件から「およそ1ヶ月後」のことである、と決定させていただくこととします。なにはなくとも、時間経過をはっきり示さない原作サマが悪いんだよ~う! ということでちゃっちゃとお話を前進させていきましょう。ンも~これ、慢☆画太郎先生の『珍遊記』なみに進みが遅いよ!!
とにもかくにも、第16話についてのあれこれを考えていく上でまず念頭においておかなくてはならないのは、ネルフ本部全体、特にエヴァンゲリオンに直接かかわる初号機・2号機専用パイロットと作戦指揮官が対使徒というポイントにおいてそうとう「コンディションを落としていた」という点です。ネルフ本部は前回の使徒襲来から1ヶ月の時がたつうちにかなり緊迫感を失っており、ことエヴァンゲリオンの実戦運用に関しては、前々回の第10使徒サハクィエルの奇跡的殲滅から1ヶ月半のあきがあったということ。ここなんですよね。
さぁそれでは、久しぶりに「人間同士のごたごたもいいけど、たまには使徒もね☆」という気概を持って第3新東京市に出現した待望の第16使徒についてのあれこれは……
また次回のココロだぁ~!! ひえ~。
……結局2013年に持ち越しになっちゃった。『新世紀エヴァンゲリオン』の人間ドラマは奥が深いです、ほんと……
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